【年末企画・コバルト】泣き面に蜂で低空飛行、LGは1年半で半額に、LMEも急落
コバルト市況にとって、2023年は低空飛行にあえいだ年だった。電気自動車(EV)向け車載電池の材料として2022年に積極投資をしたものの、コバルトフリー電池などの登場で思惑外れ。一方で、供給は中国企業が大型鉱山の操業を再開させるなどしたため増加し、関係者らは下値を探る動きに追われた。
■需要は期待はずれ、供給はなお増加
過去1年間のLGコバルト価格の推移(Co99.3%)($/LB)
12月下旬時点のLGコバルト価格は仲値$13/LB台後半。年初($19.35)からの下落率は29%で、月平均価格は$30程度だった2022年夏からほぼ半値になった。$40近かった同年春の水準の3分の1程度に落ち込んでいる。
EV需要を当て込んだコバルト需要期待にとって、コバルトを使わないリン酸鉄リチウム(LFP)電池の急速な普及は脅威だった。高価なコバルトを材料から外すことによって生産コストを低価格に抑えられ、採掘環境などにも優しいとして特に中国を中心に人気化した。LFP自体は従来から開発されており、技術の向上により普及した面はある。それでも関係者からは「勢いがすごい」(中堅商社幹部)とのため息が漏れた。
需要で当てが外れたにもかかわらず、供給は増えた。中国金属採掘大手の洛陽モリブデン業(チャイナ・モリブデン、CMOC)は2023年、コンゴ民主主義共和国(DRコンゴ)で、ロイヤルティ問題で停止していたテンケ・フングルーメ鉱山(TFM)とキサンフー鉱山(KFM)の操業をそれぞれ再開した。同社は両鉱山のコバルト生産量を4万5000-5万4000トン程度としている。2022年のコバルト生産量がおよそ20万トンだったことを考えると、その規模の大きさが分かる。加えて、インドネシア産ニッケル・コバルト混合水酸化物(MHP)も生産が増えている。
悪材料が重なったため、2023年の関係者の間では下値を探る動きが主だった。ある外資系商社の関係者は「$12程度を下回ったら取引を考える」と話した。生産コストとの兼ね合いを考え、12-13ドル程度を下値とみる向きが多かった。夏に一時、仲値$17台に回復する場面でも及び腰の関係者が多く、「$18がせいぜい」(外資系商社関係者)との悲観的な声が多かった。
■25年に向けて落ち着くも「$20はとても無理」か
慎重論は2024年も続きそうだ。需給バランスが整ってくるのは2025年~2026年というのが関係者間のコンセンサスになっている。このため、2024年は後半に向けて少しずつ市況が落ち着くとの見方が多い。
外資系商社の関係者は「2022年に見通しも決めずに作りすぎた揺り戻しが出ているだけで、平常に戻ってきている」と冷静な見方を示す。日系大手商社の担当者は「LFP普及も一巡してきており、コバルト使用電池やほかの超硬向けなどの需要が回復すれば徐々に価格も戻りそう」と話した。それでも「$20はとても無理」(中堅商社幹部)との声はやはり多い。
過去1年間のLMEコバルト価格の推移($/ton)
国際価格であるLMEコバルトも傷は深かった。12月下旬時点の価格は$28.665/ton。約1年間でおよそ44%下落と急落した。
(IR universe Kure)
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