金融アナリスト川上敦氏の世界経済動向セミナー#2 横ばい、資源も為替も動き乏しい
金融アナリストの川上敦氏が定期的に開催しているセミナー「Chuck Kawakamiの金融経済Now」の最新オンラインライブが2月6日に行われた。いつもの通り各種データを駆使したセミナーで川上氏は、「コモディティ価格や為替なども横ばいで、動きが乏しい」と指摘。各地域の状況にも大きな変化は起きていないと話した。
■投資家は「安心しきっている」
CRB指数の推移
川上氏は2022-2023年に世界を襲ったインフレについて、「完全に鎮静化した」と指摘。コモディティ指数(CRB指数)は2021年初めにピークを付けてから下落し横ばいとなっており、天然資源株価格や船賃も落ち着いていると話した。食糧価格については「特に大豆やトウモロコシは中国需要の鈍化で供給過剰気味。原油は米国の生産が増加し、中東の減産を相殺している」(川上氏)という。
川上氏は銅価格については「実需は鈍いが、中国需要への期待が下値を支えている」とも述べた。
気になる円相場も動きは乏しい。川上氏は「二国間のお金の行き来を表す日米マネタリーベースが2023年3月くらいから横ばい。米国に向かうお金、日本に来るお金の双方が同僚程度ということになる」として、為替水準が動きにくくなっているとの見方を示した。
VIX指数の推移
リスク要因も乏しい。米株相場の値動きの荒さから産出するVIX指数(恐怖指数)は低水準にあり、川上氏は「世界の投資家は安心しきっている」とも指摘した。
ただ、金相場や決済通貨に関しては緩慢ではあるが気になる動きもある。まず、金に関しては中国やロシアが少しずつだが保有量を増やしている。中国は外貨準備高が世界でも圧倒的に多い国だが、川上氏は「その内訳を金保有に替えている」と指摘、「何らかの戦略の可能性もある」と話した。
また、決済通貨は「その他の通貨」が少しずつだがシェアを広げており、「二国間取引で自国感通貨を使う動きなどが広がって、ドル決済一辺倒からの変化の兆しが感じられる」(川上氏)という。
■中国マネーの日本流入に危機感
小売売上高の推移
一方、日本の状況には「1月に能登半島大震災や日本航空機の事故があったにも関わらず小売売上高などは堅調で驚いた」と驚きを露わ。「コロナ禍からのリベンジ消費気分が残っているのかもしれない」とし、「消費心理は堅調だ」と話した。
しかし、実態はそれほど良くはない。川上氏は「2月6日発表の最新データでは賃金上昇率は物価上昇率を下回り、2年連続の実質減給となった」と指摘。「株で儲けるか不動産で儲けるかしかない状況だ」と話した。ただ、足元の輸出が改善していることなどを背景に「今年は企業の余裕ができて賃金が上昇する年になるかもしれない」と、今後に期待した。
一方で、川上氏は「日本には海外からのお金も入ってきている」とも話した。特に中国マネーの流入について「香港やシンガポールを経由した資金や華僑ビジネスなどで資金が流入し、日本の株や土地を買っている」とし、「政治面、経済面で征服されることもあり得る」と危機感を示した。
■米国は「高め」欧中は「低め」で安定
米失業率の推移
世界の国々の状況も動きは少ない。まず米国は「高め安定」。貿易も堅調、不動産価格が上がって失業率も低め、最低賃金法を背景に資産格差も縮まっている。このため消費意欲も旺盛で「理想的な状態」(川上氏)だ。
対して「低め安定」なのが中国とユーロ圏だ。
中国の消費者物価指数の推移
まず、中国に関しては「完全なデフレですね」と川上氏。消費者物価指数がマイナスになった上に、発電量も横ばいでかなりのデフレ。「しかも消費者信頼感指数は発表をやめてしまった。笑い話だ」と、発表よりも悪い状態になっている可能性があると指摘した。
また、中国については、川上氏は「3年以内に償還期限を迎える企業の事業債が多い」と改めて指摘。「今後、どんどん厳しくなる」と予測した。
ユーロ圏も「小幅な動きはあるが、小さすぎて見えにくい」(川上氏)状況。「景況感や失業率はやや改善し、物価も下がっているが、製造業の景況感はやはりさえない」と話した。
(IR Universe Kure)
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