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「カーボンニュートラルと資源循環の両立の重要性と難しさ」―日本学術会議 公開シンポジウム②

2022.12.06 12:26 FREE

「なぜSDGs? ~資源・材料循環におけるSDGsとカーボンニュートラル~」と題した、日本学術会議と東京大学生産技術研究所の共催による公開シンポジウムの講演の様子をシリーズで掲載している。第2回は森口祐一・国立環境研究所理事による「カーボンニュートラルと資源循環の両立の重要性と難しさ」である。

 

講演の主な内容は次の通り。

 

テーマ:「カーボンニュートラルと資源循環の両立の重要性と難しさ」

登壇者:森口 祐一氏 日本学術会議 第三部連携会員 国立環境研究所 理事

 

 

冒頭、 SDGsにも触れながら、多くのゴールを達成しなければならないという話をし、2番目に温室効果ガス、私自身はこういった分野の定量的なアカウンティングに関わってきましたので、それに触れながら蓄電池の話題に入っていきます。3番目に、ちょうどIPCCの気候変動に関する政府間パネルの第6次評価報告書が今年出ましたので、そこの中で EV、電気自動車 、蓄電池などがどう扱われているのか、少しこの機会に紹介をしたいと思います。

さて「多次元のゴールの同時達成の必要性」があるSDGsからです。ひとつひとつのゴールはもちろんですが、大事なことはたくさんのゴールを同時に達成しなければならないということです。

 

(「カーボンニュートラルと資源循環の 両立の重要性と難しさ」より)

 

今日の話は主にプロダクションに関わってくるかと思いますが、環境経済学者のジェフリーサックス氏のグループの論文の中で、SDGsを求めていくということは人間のウェルビーイングに合致しているのだろうかという分析があり、その中で12番の消費・生産と13番の気候変動について、豊かになろうとするとそれはトレードオフ関係になりがちであるということが書かれています。そういう意味では、今日のテーマであるカーボンニュートラル、それから資源循環をSDGsの文脈の中で追求していくことは一番の難題ということも言えるかと思います。

 

(「カーボンニュートラルと資源循環の 両立の重要性と難しさ」より)

 

ゴール12の中には多くのターゲットが書かれています。物質のフロー、経済社会で使うモノの量そのものをどうやって減らしていくのかという認識の中でターゲットとして書かれています。自然資源をサステナブルな形で管理し、そして効率的に利用していく。このターゲットに対するインディケーター、指標もあります。日本の場合には、国内で直接消費している資源というのは十数億トンですが、その背後には隠れたフローと言いますか、鉱物の採掘時点で出てくる廃棄物など、副産物的なものを含めると、大量になります。そういったことも含めたフットプリントとして測る指標が挙げられているわけです。

 

GDPを向上させていくと、それによって人間の幸福度は増すことが期待されるわけですが、一方でともすれば資源の消費量も比例的に増えてしまう。そこを如何にデカップルするか、効率的な利用によって経済成長なり人の幸福度は高めながら、いかにその資源の消費量を下げていくか、あるいは量を使ったとしても環境への影響をいかに少なくしていくか。量的に下げてくことも大事ですが、このインパクトのデカップリングということも必要です。

 

(「カーボンニュートラルと資源循環の 両立の重要性と難しさ」より)

 

インパクトのデカップリングを進める上で、鉱物資源の採掘時の環境負荷が大きいようなものについては、リサイクルが特に有効なわけで、日本でいうと大量生産、大量消費、大量廃棄あるいは使い捨て型の経済から循環経済に移行していく、完全なクローズドループというのは概念的にしか書けなくて、できる限りリサイクルを増やしていって自然からの原材料調達を減らしていく、廃棄物を減らしていく。上流下流両面での関係の負担を下げていこうということですが、リサイクルが特に有効なのはこの一次資源の採掘時点での環境負荷が大きい場合、あるいは一次資源の希少性が高い場合に、リサイクルはより効果的であると考えています。

 

(「カーボンニュートラルと資源循環の 両立の重要性と難しさ」より)

 

資源の問題の難しさは条約がないことです。気候変動には気候変動枠組み条約というのがありますし、生物多様性は生物多様性条約、これはいずも92年の地球サミットで採択をされています。

 

資源循環には気候変動の1.5度目標に相当するような目標がありません。だから、どこまでやればよいのかということになるわけです、当然なるべく資源消費を効率的に減らさなければ、リサイクルをしていかなければということですが、目標が必ずしも明確でないということが、どこまで取り組みをすれば良いのかわかりにくいということの背後にあるかなと思います。

 

気候変動、資源管理、生物多様性、それに加えて特に、化学物質管理といった4分野については様々な検討があり、資源管理に関しても、おそらくガイドライン的なものは今後出てくると思いますが、まだまだ明確になっていないというところもあるかと思います。

 

(「カーボンニュートラルと資源循環の 両立の重要性と難しさ」より)

 

一方で国際科学パネルがそれぞれに設けられていて、後で触れるIPCCですとか、資源分野では国際資源パネル(IRP)が立ち上がっています。

 

日本では循環型社会という言葉が使われてきました。10年前の 第4次環境基本計画で、循環型社会、低炭素社会それから自然共生型社会、その基盤としての安全確保社会という、4社会の像が示されています。SDGSが2015年に全世界的に広まり、その後策定された第5次環境基本計画では、環境の中での社会というのではなく、経済社会と統合してさらにその持続可能な社会というものにしていく必要があると、より広い捉え方になってきたのが昨今の動きです。

 

少し時代を戻りますが、この社会像、2007年頃に21世紀環境立国戦略というのがあって、その中で低炭素、循環型、自然共生という3社会が掲げられていました。SDGsのように環境問題以外を包含する形にはなっていなかったかもしれませんが、環境問題の中でのいくつかのゴールというのは、すでにこの時から示されていたわけで、特に低炭素社会と循環型社会はエネルギー資源の効率的利用という共通事項を持つというのが当時からの私の認識であります。

 

(「カーボンニュートラルと資源循環の 両立の重要性と難しさ」より)

 

この2007年の環境立立国戦略とほぼ同時期にできたのがこの国際資源パネル、IRPです。IPCCと比べるとはるかに小規模なものですが、世界の科学者を集めて資源利用に伴う環境影響に関する科学的なアセスメントを実施するということで、EU(欧州連合)が熱心でした。私は設立当初から9年間メンバーを務めました。

 

(「カーボンニュートラルと資源循環の 両立の重要性と難しさ」より)

 

次に2番目の「温室効果ガス排出、物質フローの推移」に入りたいと思います。 そのIRPは2016年に報告書「世界の物質フローと資源生産性」を出しています。日本が 前回G7議長国だった際に、富山県で環境大臣会合が開かれ、そこでIRPが報告したレポートになります。(グラフは)4 つのカテゴリー、バイオマス、化石燃料、金属鉱石、非金属鉱物の採掘量を表しています。金属鉱物が他よりものすごく大きいわけではありませんが、4 カテゴリーの中では、そこそこの大きなシェアを示しています。

 

(「カーボンニュートラルと資源循環の 両立の重要性と難しさ」より)

 

その金属鉱物の中で何が大きいのか。(内訳を見たのが次のグラフで、)金属量ベースではなく、鉱石ベースです。鉄、銅、3番目が貴金属ということです。銅は金属量に対して鉱物量がかなり多いので、銅と鉄では金属量としての需要は2桁近く違うかと思いますが、採掘量だとこんな数字になってくるということです。自然関係への影響という意味では銅や、貴金属、これも脱炭素技術に非常に重要な元素だと思いますが、そういったところにも注意が必要であるということです。これは、デカップしていなくて、そこそこの量で増えてきています。

 

(「カーボンニュートラルと資源循環の 両立の重要性と難しさ」より)

 

 

バイオマスと含めたトータルの量で、GDPとこの消費量の関係を見ると、1980年代から2000年頃にかけての一時期、GDPの伸びの方がトータルのその物質採掘量を上回っていたが、この頃(2000年代後半)から逆にGDPの伸びを物質消費量が上回っていて、デカップルどころか逆方向にあります。これは言うまでもなく発展途上国、アジア、特に中国の経済成長によるところが大きく、化石燃料の消費量であるとか、建設用鉱物、これ当然その経済発展の段階でインフラ整備が必要で、それが落ち着くまではこういうことが起きてしまうということです。

 

(「カーボンニュートラルと資源循環の 両立の重要性と難しさ」より)

 

ただ、これはあくまでその物質量ベースであり、資源の希少性とか 、環境影響で重みづけをしたものではないので、 解釈が難しいところですが、いずれにしても、データをしっかり取っていく必要があるだろうということです。これについては、1990年代から私自身も参加した日米欧の共同研究を通じて、OECDでガイドライン的なものができて、その後(欧州の統計情報を統括する)ユーロスタットで公式統計化されていて、欧州各国は物質フロー量を統計として取っています。

 

次のグラフ、これはユーロスタットのホームページに出ていますが、こういった物質フローの図(次左図)が毎年更新されています。環境白書にある日本の状況を2000年と2019年の比較で見てみると、埋め立て処分の制約もあったので、その処分量はかなり減っています。

リサイクルはどちらかというと埋立処分量を減らすという、その下流側の問題に対応するために進んできたというのがその歴史であり、最近になってより上流側資源の価値という点でのリサイクルにより注目が向いている。ですから日本でのリサイクルというのはかなりの部分、下流側の問題軽減というところからスタートした、この歴史は忘れてはいけないかなと思います。埋立処分量は産業廃棄物、一般廃棄物含め、1990年には1億トン超えていたものが 現在では1300万トンぐらいまで減っているということです。

 

(「カーボンニュートラルと資源循環の 両立の重要性と難しさ」より)

 

「エネルギー消費及び工業プロセス排出」(同じ上右図)がありますが、これは CO2のうちの炭素分と化石燃料に含まれる水素が燃焼によって水蒸気として出た分と見てもらえば良いのですが、2000年に比べ最近若干減っているものの、1990年レベルとそれほど変わっていません。廃棄物の埋立処分量がこれだけ減っている一方で、温暖化問題、気候変動問題と1990年当時から言われてきた割には、 この30年何をしていたのだろうかと言いたくなるような数字であったといえます。

 

ただ、この物質フローの方もあまり褒められたものではありません。トータルとして物質フローの量は減っていますが、先程中国の話をしたように、日本ではもうインフラ整備が落ち着いてきて新しい建設活動は低下してきているので、建設用鉱物資源の消費量は減っているのですが、輸入資源の量はあまり減っていない。7億トン前後でずっと横ばいです。この図はあくまで直接の物質フロー量ですので、その背後にある輸入品由来のマテリアルフットプリントあるいはカーボンフットプリント、 こういったものが輸入大国日本にとっては非常に重要であるということです。

 

ロシア・ウクライナ問題で輸入依存のリスクに別の形でいま我々は直面していますが、それは日本にとって、ある種のアキレス腱であるということは考えなければいけない。一次金属資源の調達においても同じような問題があり、その面でもリサイクルの重要性というのは当然出てくるわけです。

 

カーボンフロー、これはIPCCによる一つ前の第5次評価報告書にある図ですが、 昔から石油が何年でなくなるとか、石炭はもっと持つとか、天然ガスは何年持つという類の話が出ますが、CCSとかを使わずに経済的に採掘可能な化石資源を全部掘ってCO2として大気中に出てしまうと、気候変動の方が大変なことになります。従って、 CCSを行わない限りは、化石燃料を枯渇するまでは掘らないということになる。金属資源の方はおそらく品位の問題などもあると思いますが、その供給制約という話がいろいろ出てくるのかなと。気候変動の問題というのは、こういう資源の埋蔵量あるいは採掘年数といったことにも、また新しい局面をもたらしているといえるかなと考えます。

 

(「カーボンニュートラルと資源循環の 両立の重要性と難しさ」より)

 

世界の温室効果ガス排出量の推移については、IPCCの第6次報告書に出ています。 CO2のこの下のブルーの部分が化石燃料それから工業プロセス起源のCO2で、それ以外に土地利用変化等に伴うCO2排出、それからメタン、亜酸化窒素等とあります。世界的に見ればエネルギー工業プロセス起源の CO2というのは3分の2弱ですが、日本は圧倒的にこの部分が大きい。従ってエネルギー消費の効率を上げていくとことが非常に重要になってきます。

 

(「カーボンニュートラルと資源循環の 両立の重要性と難しさ」より)

 

日本の近年の温室効果ガス排出量の推移を見ると、それなりに下がってきていますが、全体の9割方はCO2です。電力の消費量を各消費セクターに振り分けたのが左グラフで、その配分前が右グラフです。熱電配分前の直接排出別で見ますと、オレンジの部分、エネルギー転換部門、ここには発電部を含めますので、これが非常に大きい。とくに、東日本大震災後、原子力発電所がほとんど止まったので、1回増えてようやくそれがいま少し下がりつつあるということです。

 

(「カーボンニュートラルと資源循環の 両立の重要性と難しさ」より)


3番目の「 国際機関、国際科学パネルの報告」に移ります。

 

まずIRPの報告書です。先程も触れましたが 2016年の環境大臣会合で報告をしたわけですが、この時に、資源のリサイクルも含め資源の効率的利用が気候変動対策という観点でも重要ですよということを言っておりまして、政治リーダーを含め、世界の関心が気候変動に向いているので、気候変動に貢献するのだというメッセージの強さが必要であろうということで、書かれていました。

 

(「カーボンニュートラルと資源循環の 両立の重要性と難しさ」より)

 

今回のテーマに触れているところがあるので、少し紹介しておきたいと思います。リサイクリング・オブ・スペシャリティ・メタルズ、特定の用途に使われるベースメタル以外のものが重要になってきている。低炭素技術のために重要であるということで太陽電池であるとか、風力、そしてバッテリーと、ここでバッテリーにも触れております。

 

(「カーボンニュートラルと資源循環の 両立の重要性と難しさ」より)

 

 リマニュファクチャリングといった言葉もありますし、中古品あるいは再使用品に対しての消費者認知といったことにも触れています。この辺りはヨーロッパ型のサーキュラーエコノミーの真髄のところでありまして、モノをどうするかというより、ビジネスのスタイルをモノを売るスタイルからサービス を売るスタイルにしていきましょうといったことが、すでにここにも書かれていました。

 

(「カーボンニュートラルと資源循環の 両立の重要性と難しさ」より)

 

IEA 国際エネルギー機関、これはOECDのエネルギーの部門になりますが、ここが出している「The Role of Critical Minerals in Clean Energy Transitions」、クリーンなエネルギーへの転換に当たってのキーとなるクリティカルな鉱物というレポートの1節に「Electric Vehicles and battery storage」が出てきます。

 

EVに必要な非鉄金属などの材料が従来型の車に比べてどのぐらい増えるか分析しています。動力源など除いた車体本体部分(グライダー)の重さに応じて、モーターとかジェネレーターも必要になるのですが、それ以上に必要になるのはバッテリー関係。何キロのバッテリーを積むか、構造はどうするかといった問題にもよるとは思いますが、そうしたことで数倍規模にはなってくるということが書かれているわけであります。

 

(「カーボンニュートラルと資源循環の 両立の重要性と難しさ」より)

 

IRPもローカーボンテクノロジーに関するアセスメントの報告書を出しています。発電側技術の評価と需要側技術の評価です。「発電技術の評価」でコンセプトだけ概括しておきます。

 

(「カーボンニュートラルと資源循環の 両立の重要性と難しさ」より)

 

これはどういう比較をしていたかというと太陽光発電(Photovoltaic power)、集光型太陽熱発電(Concentrating solar power)、 風力(Wind power)など、こういう再生可能エネルギー技術というのは、 CO2排出削減、気候変動対策の観点では非常に良いが、エコシステムへの影響とか、マテリアル、物的資源という点では決して問題がないわけではない。そういうことが下のレーダーチャートとか、インフォグラフィックから見て取れます。

 

(「カーボンニュートラルと資源循環の 両立の重要性と難しさ」より)

 

いかにこういう技術の特質を専門家でない人にもわかりやすく伝えるかというのも重要なテーマです。それぞれの技術が、GHG排出とか諸々の問題に対して、どういう影響があるのかを示すことです。インフォグラフィックの一番下のところが鉱物資源の消費量と再生可能エネルギーの関係を見たものです。グリーンな再エネ技術というのは、鉱物資源の消費と軒並みトレードオフの関係になっています。

 

  IEAが国際エネルギー機関に対して、IRENA、国際再生可能エネルギー機関もできています。

 

次にIPCCです。3つの作業部会があって、実際に気温上昇が起きているのか科学的に突き詰めていく第1作業部会、気候変動が起きるとどんな影響があり、それにどう適応するのか、それを検討する第2作業部会。そして主に緩和策をどうしていくのか検討する第3作業部会です。第5次と最新の第6次での章立てが変わった部分もありますが、自動車にかかわる部分などは一貫したものになっています。

その評価報告書、膨大な量でとても簡単には読みこなせませんが、政策決定者向けのサマリーとしてSPMというのがあり、興味深いグラフが載っているので、それを紹介します。どんな技術がどのぐらいの削減ポテンシャルがあるかということです。

 

日本の年間総排出量はいま1Gt-CO2をちょっと超えているくらい、11億トン台まで下がっています。日本全体のCO2というのはこのぐらいのオーダーですが、全世界で年間どのぐらいの削減ポテンシャルがあるかということで、風力とか太陽光などについて書かれています。

 

まず、電力部門ですが、色分けはいまどのぐらいの値段がするのかを表していて、ブルーはデフォルト的なものより安い、今よりむしろ安く電力供給ができるポテンシャルを示しています。これをざっと見ると4Gt~5Gtぐらいあるので、日本の排出量の5倍ほどは、まだ全世界で削減ポテンシャルがあるということを定量的に示してくれているわけです。これが エネルギー供給部門です。AFOLU(農業その他土地利用の管理)に関わるところはポテンシャルは結構ありますが、 そこそこ資金がかかるということです。

 

Buildings(建築分野)は、需要側の対策でどれだけ下げられるかということで、 LEDなどの 照明でもそこそこ下げられるということです。さて電気自動車ですが、決して小さくはない、 電気軽車自動車、電機大型自動車両方合わせると、そこそこの ポテンシャルであります。ただ、不確実性が高いので、コストは示していません。この辺りもそれぞれの技術の相対的な相場観を見てもらうのには非常に面白いグラフではないかなと思います。

 

(「カーボンニュートラルと資源循環の 両立の重要性と難しさ」より)

 

さて最新の第6次評価報告書(AR6)の第3作業部会のSPMで、電池について何が書いてあるかということです 。

 

リチウムイオンバッテリーのコストは、ものすごく下がったと記されています。他の太陽光も、風力も下がったが、バッテリーは非常にコストが下がり、大量普及したとも。太陽光発電で10倍以上、電気自動車では 100倍以上に増えたなどと書かれています。

 

(「カーボンニュートラルと資源循環の 両立の重要性と難しさ」より)

 

もう少し 掘り下げてみると、大事な次のくだりが目に入ってきます。排出係数の低い電気で走らさないことには電気自動車はその効果が薄れる。当然のことですが、ライフサイクルベースで見てもそれは同じであると書かれています。また、アドバンシズ・バッテリー・テクノロジーというのが、非常に重要であるということもここには書かれています。さらに貨物輸送であるとか、鉄道などについても、ポテンシャルがあると触れています。

一方でバッテリーに必要なクリティカルミネラルについての関心も高まっているとの言及もあります。供給源が特定の国に偏っているという問題があり、いかに供給源を多様化していくか、そして資源効率の向上も必要であるとし、サーキュラー マテリアルフローも重要としています。一次資源供給の社会的リスク、環境リスクを下げていくために、そうしたアプローチが必要であるとSPMにあります。

 

技術的に踏み込んだテクニカルサマリーというのもあります。その中には電気自動車だけでなく、船舶・航空用の先進的バイオ燃料と水素ベース燃料といったことも出てきています。これは飛行機とか船とかどうするのだという話で、サーキュラーエコノミーというのは結局、物的なモノ、そのもののサーキュレーションというより、サービスエコノミーにしようということです。それによって、そもそもトランスポテーションの需要が減るということもあるだろうということです。ですから気候変動に対応したエネルギー消費対策には 影響しますので、シェアード エコノミーとか、デジタリゼーションといった記述もあります。社会の変革を広く捉えているというのが、EU型のサーキュラーエコノミーの特徴であると思います。それに対して日本はやや特定の技術でどうしていくのかという色合いが強いという感じもしています。

 

もう少し、運輸関連の記述を見ておきましょう。運輸部門の脱炭素化には電力供給面のインフラの拡充が欠かせないわけで、その点への言及もあります。また、輸入資源大国の日本にとっては非常に重要な点かと思いますが、労働者の権利、気候変動以外の環境への影響、クリティカルミネラルのコストの問題なども関心事項として書かれています。技術あるいは狭い意味での環境問題だけではなく、SDGsで取り上げられている問題にも触れています。

 

(「カーボンニュートラルと資源循環の 両立の重要性と難しさ」より)

 

リチウムイオン電池についても若干具体的に書かれています。商業利用可能性ということが、エレクトロモビリティの成長にとっても非常に重要な要素であると。 一方でバッテリー生産段階でのGHGフットプリントを下げる努力も非常に大事であり、そうしないと電気自動車の本当の意味での低炭素機能が発揮できない。バッテリー生産段階でのstandardization(標準化)のことが書かれています。

 

(「カーボンニュートラルと資源循環の 両立の重要性と難しさ」より)

 

バッテリーモジュールの標準化、リサイクルアビリティのためのデザインなどについても明確に書かれています。

 

リスクという視点での記述もあります。蓄電池のための鉱物資源 への関心というくだりで、調達先の多様化、効率向上、資源の循環利用による環境フットプリントと調査リスクの低減がリスクの1つとして 明示されています。

 

(「カーボンニュートラルと資源循環の 両立の重要性と難しさ」より)

 

 国内政策の動向については簡単に触れておきます。グリーン成長戦略で、重要分野として自動車・蓄電池産業が取り上げられ、成長に向けた工程表なども報告されています。

 

(「カーボンニュートラルと資源循環の 両立の重要性と難しさ」より)

 

重要分野それぞれで投資や研究開発がいま行われているところですが、推進会議に参加する中で、私が感じておりましたのはカーボンニュートラルに向けた技術の大量普及において、需給調整の仕組み、それはそれぞれのところにはあるが、サプライ側とそれからディマンド側に関して、あるいは上流側の産業と下流側の産業などとの間のシステムが不十分なところがあるのではないかなということで、経済・社会のシステム全体の設計が不可欠ではないかという気がしました。

 

また、 専門家でないひとには馴染みのないカーボンニュートラル技術、CCSを導入する際の事例などがその典型になるかと思いますが、急速かつ大量に普及させる上では、いわゆるELSI(Ethical, Legal and Social Issues:倫理的・法的・社会的課題)とされる部分、こういったところにも留意していくべきで、それが日本の弱点にならないようにしなければならないと感じています。

 

(「カーボンニュートラルと資源循環の 両立の重要性と難しさ」より)

 

蓄電池も含めた産業間の関係性を示した図ができていますが、網羅的に書かれていて具体的にどの技術がどこで関わってくるかというのが見えにくいという面があります。バッテリーに関しては、どこの段階でどの産業が関わってくるのか、バッテリーだけではなく電気自動車の大量普及を考えた場合に何が問題になってくるのかという視点でみる必要があるかなという気がしています。

 

(「カーボンニュートラルと資源循環の 両立の重要性と難しさ」より)

 

電気自動車用リチウムイオン電池のLCA(ライフ-サイクル-アセスメント)についても触れておきます。論文の数も、電気自動車の普及で先行する欧州、中国などが圧倒しており、日本は限定的です。

 

LC-CO2排出量(ライフサイクルCO2排出量)の論文もそれなりにありますが、結構ばらつきがあります。だいたい1kW時 当たりのCO2排出量は100kgです。

 

(「カーボンニュートラルと資源循環の 両立の重要性と難しさ」より)

 

これは生産段階でのバッテリー生産プロセスでの電力消費などによるものだと思います。それを考えると、必ずしもCO2排出削減量で電気自動車の効率が良いともいえないとの指摘もあります。この辺りしっかりと、定量的な説明などをしなければいけないのではないかと思います。

 

最後に温室効果ガスの削減目標について触れておきたいと思います。原発の稼働が止まって火力が最大となった2013年がピークだったわけですが、2030年46%減という目標は最近の年率3%減が続けば比較的近いところを通れますが、年率3%で下げていっても2050年までのカーボンニュートラル目標には絶対届きませんので、どうやって加速していくか。 インフラ整備は非常に時間がかかりますので 相当加速しないといけないのですが、なかなかエンジンがかかっていないかなという感じはします。気候変動枠組み条約はすでに30年経っていますが、ここから2050年まで我々には30年も残されていません。時間軸を考えながら、カーボンニュートラルを達成するための様々なリスクと向き合っていかなければいけない。再度強調しておきますが大きな輸入依存度というのが国際的なリスクであるということ、そして年間に必要な金属資源、これは非常にクリティカルであるということです。

 

(「カーボンニュートラルと資源循環の 両立の重要性と難しさ」より)

 

関連記事:「法政策からみたサーキュラーエコノミー」――日本学術会議 公開シンポジウム①

 

<IRuniverse G・Mochizuki>

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