原油といえばドル建て決済だが、その常識に風穴が空く兆候が出てきた。ロイター通信をはじめとする外電は7月4日、「インド国営石油会社のインディアン・オイルが2023年6月、ロシア産原油の購入代金の一部を人民元で支払った」との関係者の話を伝えた。人民元によるロシア産原油代金の決済は同国の国営石油会社として初めてという。
報道によると、インドの民間製油業者3社のうち少なくとも2社も一部を人民元で支払った。ロシアはウクライナ侵攻に伴う西側諸国からの制裁で決済手段を凍結され、ドルやユーロ建ての決済ができない。一方でインドはウクライナ侵攻後、ロシア産原油の輸入を増やしてきた。ロシアとの取引通貨を探した挙句、人民元を採用することにしたとみられる。中国はインドと並びロシア産原油の大口輸入国だが、こちらはもちろん人民元で決済している。
人民元は国際決済市場での地位向上を目指している。新華社通信が国際銀行間通信協会(SWIFT) のデータとして6月末に伝えたところによると、2023年5月の国際決済に占める人民元のシェアは2.5%で世界5位だった。ドルの42.6%には遠く及ばないものの、円(3.1%)とは数年間にわたり4位を争っている。もしも原油やその他のロシア産商品の取引で人民元決済が浸透すれば、通貨の常識にも影響が出る可能性がある。
(IR Universe Kure)