紙・古紙市場近況 6月:市況下落と中国大手製紙メーカーの破綻
6月の紙、板紙需給、および古紙市場の動向を、国内における需要と海外事情の両面から見ていく事にする。中国では晨鳴紙業(チェンミン)が倒産の危機を迎える一方で、玖龍紙業(ナインドラゴン)は安定した状況だ。とはいえ中国全体の経済の減速傾向は拭えず、予断を許さないといっていい。
「紙・板紙需給」6月
紙・板紙の国内出荷は前年同月比5.1%減、8ヶ月連続のマイナス。グラフィック用紙は10.4%減、19ヶ月連続のマイナス。パッケージング用紙は3.3%減、3ヶ月ぶりのマイナス。主要品種は、新聞用紙、印刷・情報用紙、段ボール原紙、白板紙はマイナス、包装用紙、衛生用紙はプラス。
紙・板紙の輸出は前年同月比1.4%増、3ヶ月連続のプラス。グラフィック用紙は12.8%減、3ヶ月ぶりのマイナス。パッケージング用紙は8.9%増、4ヶ月連続のプラス。グラフィック用紙では、塗工紙を中心に東アジア、東南アジア向けが減少。パッケージング用紙では、段ボール原紙が東南アジア向けで増加。

(紙板紙需給統計)
https://www.jpa.gr.jp/file/summary/1782095052_2026%E5%B9%B45%E6%9C%88%E7%B5%B1%E8%A8%88.pdf
「古紙需給」
古紙の需給状況について、公益財団法人古紙再生促進センターの資料によれば2025年1月から2026年4月までの古紙回収量は古紙4,596,712tとなり前年同期比で4.2%減少。消費は4,615,630tで前年同期比3.8%減少。輸出量は2026年1月から2026年4月時点で702,472tと27%増加。
古紙の回収と消費については前月よりも1%ずつ同期比で減少しており、いまだ底打ちとはいかない状態だ。
(古紙需給)

(古紙輸出量)
古紙の需給は、入荷は1,248千トンで前年比2.1%減、4ヶ月連続の減少。うち新聞古紙は135千トンで前年比6.5%減、9ヶ月連続の減少。段ボール古紙は794千トンで前年比0.9%増、4ヶ月ぶりの増加となった。消費は1,219千トンで前年比0.7%減、18ヶ月連続の減少となった。在庫は601千トン、前月比では5.0%増、前年比では2.1%減となった。輸出は182千トンで前年比26.2%増、9ヶ月連続の増加となった。シェア1位のベトナム向けが12ヶ月ぶりにマイナスとなったものの、2位の台湾、3位のマレーシア向けが大幅増となった事が影響した。

【市場動向】
新聞中心に下落基調が鮮明に
政令指定都市5市における直近の行政回収の入札結果が判明した。単価の表記は消費税抜きで、いずれもキロあたり。
大阪市は新聞が下落し、他市でも同様の傾向がみられる。海外市況の下落や国内での荷余り感も影響している。また、段ボールと雑誌は前年同期よりも高いものの、前年下期よりもやや下落。その他の紙は上昇傾向にある。紙パックも前年度上期より下落も、持ち直しつつある状況だ。
相模原市の入札価格は、5市の中で最高値でも下落傾向が顕著。入札条件はベール品で四半期毎。新聞は30.6円で、前年度第3四半期のピークより7.8円下落。段ボールは20.5円で、前年度第4四半期のピークより4.6円下落。雑誌は前年度第2四半期から5.2円安の20円となった。紙パックは29.5円と唯一、高止まりしている。
新潟市も四半期毎で、バラでの引渡しの条件。他品種に比べて新聞が群を抜くが、その分下落幅も大きい。今年度第1四半期は25.8円と前年第2四半期のピークより6.8円下落。段ボールと雑誌・雑がみも下落し、それぞれ17.3円と15.7円と前年同期より1.6~2円下落している。紙パックは18円で横ばいだ。
仙台市は大阪と同じく半年毎の入札で、バラ持込みの条件だ。新聞は14.4円で前年同期より0.5円高、下期比では2.3円安い。雑誌・雑がみは10.1円で前年上期比0.4円安。段ボールは10.1円で同比1.7円上昇。
札幌市は、雑がみは25年4月以降、軟化傾向で20円台を割り、今年4月は15.7円。5月は15.3円だった。主要古紙は6.6円で横ばいが続く。
国内古紙価格
国内の古紙価格については、段ボール古紙が18円、新聞紙古紙が17円、雑誌古紙が15円程となっている。新聞紙古紙については輸出価格が25円程で継続しており、現状この価格が底打ちとなりそうだ。

[2025年の中国の製紙・古紙需給]
2025年の中国の紙・板紙生産量は1億4135万トンで、対前年比3.7%増となった。これで7年連続の増加となる。また紙・板紙消費量は1億3879万トンで、こちらは対前年比1.8%増。近年は消費量が伸びてはいるが、伸び率は鈍化している。
また紙・板紙の輸出入では、3年ぶりに輸出量が輸入量を上回った。輸出量は1186万トンで対前年比10%増、輸入量は930万トンで対前年比14%減となっている。輸出では生活用紙(家庭紙)が25%増、特殊紙が14%増。輸入では主要品種の段原紙が17%減となり、輸出入量が逆転している。
中国は2018年からMIX古紙の禁輸、2021年から全ての古紙の禁輸措置を行った。これによって原料改革が起き、木材パルプの生産量が大幅増加。25年の国内木材パルプ消費量は2702万トンで、これは18年比で136%増。また古紙輸入が出来なくなったので、製品(段原紙)と半製品(古紙パルプ)の輸入が増加した。25年の段原紙輸入量は685万トンで、18年比では115%増。また25年の古紙パルプ輸入量は350万トンで、こちらは1067%増。
しかし中国経済の停滞はクローズアップされており、紙・板紙消費量の伸び率の鈍化はその表れと見て良い。また段原紙の輸入量が対前年比17%減、古紙パルプが同14%減。今後、中国経済が更に停滞すれば需要は減少するので、中国の段原紙需要は徐々に自国生産で賄うようになり、そうなると段原紙の輸入は限りなくゼロに近づいていく。
中国の紙・板紙需給
2025年の中国の紙・板紙生産量は1億4135万トンで、対前年比3.7%増。これは7年連続の増加となっている。品種の中では新聞用紙のみがこれまで8年連続で減少しているが、それ以外の品種は全て増加している。全生産の46%を占める段原紙の生産量は6470万トンで、対前年比4.7%増。うち中芯原紙が3255万トンで3.5%増、外装ライナーが3215万トンで5.9%増。25年の段原紙生産量が6470万トン、段原紙消費量が7235万トンなので、段原紙の国内自給率は現在は89%となっている。
印刷・情報用紙の生産量は2595万トンで、対前年比1.8%増。こちらも伸び率としては、近年は鈍化している。印刷・情報用紙のうち非塗工紙の割合が71%、塗工紙が29%となる。
白板紙の生産量は1760万トンで対前年比2.6%増。また生活用紙の生産量は1315万トンで対前年比4.4%増。中国では基本的に、印刷・情報用紙、白板紙、生活用紙、特殊紙の生産が消費を上回っており、この4品種は輸出の主力商品となっている。25年の輸出量では、印刷・情報用紙=343万トン、白板紙=292万トン、特殊紙=255万トン、生活用紙=170万トン。特に特殊紙に関しては、生産量が510万トンで輸出量が256万トンなので、生産量の半分が輸出に回っている。
25年の中国の紙・板紙輸入量は930万トンで対前年比14%減。紙・板紙輸入量のうち段原紙が74%を占めており、その段原紙の輸入量が減少傾向にある。段原紙輸入のうち外装ライナーが457万トン、中芯原紙が228万トン。国別ではマレーシアが127万トン、ロシア104万トン、ラオス99万トン、台湾78万トンと続く。
中国の古紙需給
2025年の中国の古紙回収量は7195万トンで、対前年比3.2%増となった。これは7年連続の回収増となる。また古紙回収率は51.8%となり、24年の51.1%から0.7ポイント上昇している。古紙回収率の推移では、22年に53.1%に上昇したが、23年からはまた51%台に落ち着いている。22年に回収率が急上昇したのは、20年と21年に紙・板紙輸入量が大きく増加して入超になった(20年、21年ともに500万トンの入超)ことによる。しかし25年は輸出の方が輸入を250万トンほど上回ったので、26年の回収率はやや下がると予想される。
ちなみに中国は輸出大国であり、現在でも世界の工場としての地位を確立している。そのため輸出品を梱包するパッケージの出超量(輸入より輸出が上回る)が圧倒的に大きく、試算では年2000万~3000万トンと言われている。仮に2000万トンとすると、回収量=7195万トン、国内消費量=1億1879万トンなので古紙回収率は60.6%、3000万トンだと同様に回収率は66.1%となる。
中国の古紙利用率は低下
日本では近年の古紙利用率は上昇傾向にある。これは、古紙の利用が相対的に少ない紙の生産量が減少し、古紙利用が多い板紙の生産量が堅調なので、古紙利用率が必然的に上昇した。しかし中国では逆である。18年の古紙利用率は63.9%だったが、19年からは50%台に低下。これまで8年連続で古紙利用率が低下しており、25年は51.3%で対前年比では0.3ポイントの下落。中国の古紙利用率が低下しているのは、単純に古紙禁輸による古紙不足が原因で、近年は木材パルプの消費量が増加している。
また古紙の歩留まりでは、18年は81.7%だったが、21年には93%まで上昇。24~25年は共に91.4%となり、以前に比べるとかなり品質が向上していると言える。品質が低い輸入古紙(特に欧州品と米国MIXなど)が規制されたことに加えて、中国国内の古紙についても、大手メーカーを中心に納入基準が厳格化されたことで、歩留まりは90%以上に上昇した。
晨鳴紙業(チェンミン)が倒産危機に
2003年~08年には中国で生産量が第2位だったチェンミンは、主に木材パルプを原料として洋紙を生産。元々は中国の国営企業で、1958年に設立した山東省の寿光県製紙総合工場が前身。96年にチェンミンに社名変更し、97年に深圳証券取引所、08年には香港証券取引所に上場した。13年から広西省の食品包装用紙の大規模プロジェクトの建設を開始し、128億元を投資した。21年に起工式が行われて生産を開始したものの、24年には延滞債務と銀行口座の凍結が発表された。需要減や構造的変化、そして大幅な過剰投資の直後に製品価格が急落したことで採算が悪化した。利息を含めた延滞金は18億元となっており、生産能力の70%が停止と伝えられた。
2025年の製紙メーカー別の紙・板紙生産量では、これらの報道を裏付けた形となった。チェンミンの24年の生産量は427万トンで第6位だったが、25年の生産量は109万で第28位まで後退している。対前年比では74.5%減となった。同社の24年の売上高は227億元で74億元の赤字、25年の売上高は62億元で83億元の赤字となっている。売上高よりも赤字額の方が大きく、いつ倒産してもおかしくない状況である。
玖龍紙業(ナインドラゴン)の躍進が続く
25年のナインドラゴンの紙・板紙生産量は2266万トンとなり、対前年比9.3%増となった。24年に中国の製紙メーカーとして初めて生産量が2000万トンを超えた。
近年は木材パルプ生産設備、段ボール原紙から箱までの一貫生産、広西自治区の大型工場の開設を進めてきた。広西・北海工場では、計325万トンの紙・板紙生産設備と170万トンの木材パルプ生産ラインを持つ。また段原紙以外への投資も積極的で、高級白板紙や印刷・情報用紙、食品用包装紙の生産設備を増設した。これらはチェンミンの得意分野だったが、ナインドラゴンがこの分野でもシェアを拡大させている。