JFEスチール、CO2削減に貢献する新素材コンクリート製品の試験製造に成功
~アルカリ活性材料を用いた意匠性を有する低炭素型プレキャストコンクリート製品~
JFEスチールは国立大学法人東北大学(所在地:宮城県仙台市、総長:大野英男)、学校法人日本大学(所在地:東京都千代田区、学長:酒井健夫)、西松建設株式会社(本社:東京都港区、社長:髙瀨伸利)、共和コンクリート工業株式会社(本社:北海道札幌市、社長:本間丈士)と共同で、通常のコンクリートと比べて製造時のCO2排出量を約75%削減可能なアルカリ活性材料コンクリート(※1)を素材とした、意匠性を有する複雑な形状のプレキャストコンクリート製品(※2)の試験製造に成功した。
アルカリ活性材料コンクリートは、製造過程で相当量のCO2が発生する一般的なセメント(ポルトランドセメント(※3))を使用しない低炭素型コンクリートであり(図1)、通常のコンクリートに比べて、製造時に排出するCO2を大幅に削減できるが、混合時の粘性が高く固まりやすいなど、施工時の流動性を確保することが難しいため、意匠性に優れた複雑な形状のプレキャストコンクリート製品への展開が課題だった。
同社を中心とする研究チームは、高炉スラグ微粉末(※4)や高炉スラグ細骨材(※5)の活用、および特殊な混和剤の適用などによって、流動性を安定的に確保しつつ、耐凍害性を大幅に向上させた独自のアルカリ活性材料コンクリートを開発し、実用化に向けた研究を進めてきた。
今回の試験製造では、開発したアルカリ活性材料コンクリートを一般的な意匠性を有する型枠に流し込み、実際の工程製造と同様の蒸気養生を施した。完成したプレキャストコンクリート製品(図3)は、細部まで十分に充填されており、ひび割れや欠損は確認されず、短時間で脱型できることを確認した。なお、開発したアルカリ活性材料コンクリート製品の風合いは通常のコンクリート製品と大きく変わらない (図4)。
同試験製造の成功により、さまざまな形状のプレキャストコンクリート製品への展開が進むことで、コンクリート分野でのCO2排出量を大幅に削減することが可能となる。試作したプレキャストコンクリート製品は、今後、比較的過酷な寒冷環境において試験し、実用化に向け、耐久性の検証を進めていく。
(※1) アルカリ活性材料コンクリート(AAMコンクリート)
高炉スラグ微粉末やフライアッシュなどの粉体、水酸化ナトリウム(NaOH)などのアルカリ溶液、細骨材および粗骨材を用いて固化させるコンクリートの総称。アルカリ活性材料は英語でAlkali Activated Materialであり、AAMと略される。アルカリ活性材料コンクリートとして、現在主に研究されているのはジオポリマーコンクリートであり、メタカオリンやシリカなどの粉体と水ガラスを用いて固化させるもの。
(※2)プレキャストコンクリート製品
現場で組み立てを行うために、工場であらかじめ製造したコンクリート製品。
(※3)ポルトランドセメント
石灰石や珪石などの原料を粉砕・焼成して製造されるコンクリートの原料。
(※4)高炉スラグ微粉末
高炉から生成する溶融スラグ(製鉄時に発生する副産物)に、高圧水を噴射して急冷することで得られる砂状のスラグを粉砕したもの。高炉セメントの原料。
(※5)高炉スラグ細骨材
高炉から生成する溶融スラグ(製鉄時に発生する副産物)に、高圧水を噴射して急冷することで得られる砂状のスラグの粒度を調整したもの。
(IRuniverse.jp)
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