高性能な製品アプローチと労働力確保の課題解決へ―TECHNO-FRONTIER 2024①
「TECHNO-FRONTIER 2024」「持続可能なプラントEXPO 2024」を含む日本能率協会主催の複合展示会が24~26日に東京都江東区の展示場である東京ビッグサイトで開催された。本記事では出展企業を幾つかまとめていくと共に、イベント全体の動向についても注目していく。
高機能さを武器に戦うモータ市場
株式会社Piezo Sonicは小型の超音波モータ(ピエゾソニックモータ)を主力商品としている企業である。そんな同社はコンサルティング事業の一環として、高い走破性を持つAGVも併せて開発を行っている。その能力は折り紙付きで、耐荷重30kgながら15cmの段差をものともせずに走ることができる。またモータに関しては防水モータであるため、例えば災害などで発生する浸水といった状況に関してもタイヤ部分の高さまでなら高い耐水性を持つ。
悪路や悪環境であってもパワフルに走行できる性能を持つ同社のモータは注文も多く、カスタマイズの方向性として耐荷重を増やして走破性を落とした新型モデルの導入も検討する企業が増えているという。AGV(自動走行車)を投入しようとすると、まず施設内の養生や段差の補修をしっかりとする事が前提条件となる事が多い中で、同社の製品の投入のしやすさには高い評価がくだされているとは担当者の弁である。
株式会社ダイイチコンポーネンツの取り扱う製品は耐圧防爆ACサーボモータである。その名の通り高い圧力や爆発にも耐えられるだけの頑健な性能を持っており、そういった危険が予見される場所の機械に対して使用される事が多い。
もちろんその性能に恥じないだけの値段と重量が発生する為、産業用のロボットアームや運搬用の大型AGVなどに搭載されるとはいえ市場はかなり狭いとの事である。現在は電池生産設備にも投入が進んでおり、製造時の発火・爆発といった災害から機器の機能不全を防ぐためにその頑健さが買われている。今後電池のリサイクルを進めるにあたり、増加するリチウムイオン電池の処理に頭を悩める自治体やリサイクル事業者にとってはこういった製品を機器メーカーと共に頼ってみるのも一つの方策と言えるだろう。
住友電気工業株式会社はまた違うアプローチでモータの技術向上に一役買っている。同社はモータの直接的な製品化こそしていないが、一般的なラジアルタイプのモータと違うアキシャルモータという物の部品開発に携わっている。通常電磁鋼板を用いて作られるモータは磁極が円筒状になっており、回転子もそうだが固定子も大型化する事が避けられない構造である。そこで同社は圧縮磁心という材料を開発し、磁極を円盤状に薄くする事に成功した。モータの大型化を避けたい製品に対してアピールを行えるだけの技術力を示しているのだ。
とはいえ一定のアスペクト比(モータ厚/外径)を超えると、ラジアルモータのトルクがアキシャルモータを上回る特性があるため、最適な用途となるように製品を選ぶのが得策だろう。また隠れた利点として、この製品は鉄粉からできている為リサイクルが非常に容易で消磁の作業が必要ないというメリットを持つ。今後モータのさらなる普及が進めば、リサイクルの容易なこの製品を用いる企業も増えてくるのかもしれない。
工場の清浄化と進むトレンドへの警鐘
一方プラント全体で見て興味深い展示を行っていたのは、最近CMでおなじみになりつつあるアマノ株式会社である。同社は駐車場の精算機やタイムカードや勤怠管理システム、あるいは無人清掃用ロボットの開発等を行うエンジニアリング企業として有名である。そんな同社のもう一つの大きな顔は、粉塵除去に始まる施設内の環境事業を一手に引き受けるという要素である。
実際に集塵機メーカーとして工場やプラント等では名が売れており、CMを出すまでもなく「あのアマノ」と言われる事も多いそうである。実際硬派な企業ではあるものの、イメージアップ戦略としてCMを打つことで次の世代を取り込んでいきたいという積極性も見せている。今回の展示会では切削工具から発生する霧を除去するミストコレクターや、粉粒体を2点間において空気輸送を自動で行えるシステムを紹介した。特に粉粒体の輸送実績は多岐に渡り、硫安から各種微粉末、果てはお米などのラインに利用されているというのだから驚きである。
さて以上四社を今回挙げてきたが、製品の機能向上や生産設備の最適化、管理のスマート化を図る先の目的として「省人化」を挙げている。働き手が年々減少し、様々な作業に割いてきた人員の余裕がなくなりつつある状況で、いかに事業を存続させていくかという事を各社必死で探している状況である。
そのためのAGVの様な無人搬送車両の投入であったり、あるいはDX化やオートメーション化による作業環境の改善と管理の容易化であったり、作業員に危険が及ばない様な頑健な機材の投入であったりする。
今後も事業を継続していく為には、作業員の安全性や快適さを担保した上で業務を行わなければならないという状況に、製造業界全体が直面していると言っても過言ではない。いかに今後の労働力を確保し続ける事が出来るかという点において、機械化やDX化といった方針を友好な手段として現場に沿った形で投入していけるのか。日の丸を支える製造業は、次の世代に向けての転換点を迎えているのかもしれない。
(IRuniverse Ryuji Ichimura)
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