夏の電極座談会を経て、晩秋から冬へと移る11月下旬の某日、東京都内にておもむろに不定期の電極扱い関係者による覆面座談会が行われた。今年を振り返りつつ来年、そして再来年を占う、という趣旨のもとに議論は広がっていった。
→(関連記事)電極覆面座談会#2018夏の陣 電極価格の高騰いつまで?
A:さてさて、久々に集まっていただきまして、電極覆面座談会を行いたいと思いますが、まずは電極を使っている側から、Bさん、今年を振り返ってみてどうですか?
B:うん、この1年というよりも電極はこの2年で劇的に変化しましたよね。うちはLF用の16インチの電極を使っているけども、2017年の3月に駆け込みで買ったのがキロ210円だったんですね。中国品でした。当時でもかなり安い品物だったと思います。そのころでも250円とかの値段がざらにありましたから。うちの場合、特別にあるルートから中国品を買うことができたのがラッキーだった。
また2017年3月以降、電極の輸入で3.3%の特恵関税が無くなることも聞いていたので、その210円の電極を3か月分、なかば独断で決めたんだけれども、結果的にはその判断は間違ってなかった。6月まで必要量はあった。
そうこうするうちに17年の5月から、電極がとんでもないことになっている、ということを聞いて、自分のなかでは17年5月がターニングポイントだったのかな、と。
それで5月に16インチの電極をキロ300円のオファーですぐに決めた。
さらに9月にはキロ1500円まで中国品は上がった。手がつけられない高騰ぶりだった。
しかし17年の11月下旬にロシアから中国への天然ガスの供給が落ちたことで電極価格は一旦下落で1,100円に落ちた。
と考えると、17年11月にGTIが打ち出した5年契約は画期的だったと思う。最初は9,850ドル/トンだった。5年で10%上がっていく仕組みなんだけれども今の電極ひっ迫状況をみると5年契約はユーザーにとっても良い契約だったと思う。
買う側からすると電極でもなんでも価格が乱高下するものは買いづらい。使いづらいとなる。
国内電極メーカーでもうちと付き合いが長いところはそれなりに安く提供してくれたけども18年10-12月はキロ当たり1300円。SPOTではこれより安価なものも出ていたようだけど、さて19年1-3月がどうなるか?
電極の見積もりを各社に依頼しているがなかなか出てこない。ある国内電極メーカーからは、1300円ならば出せるという。中国製のLF用で。UHPは1430円とかかな。
自分的には今の電極は1年前(2017年)ほどのひっ迫感はない、と感じているが・・。
UHPの価格が上がっていくのは半ば仕方ないと思う。
というのは、中国で誘導炉の廃止となり、電気炉90基を作ることになり、ここに電極はUHPを使う。だからUHP価格が上がるのはそうだな、と理解できるけれどもLF、HPは関係ないから相場が上がっていくのはわからない。
中国は環境問題で焼成炉を止めていく。とするならば焼成炉に使うHPの電極価格は下がるはず。
A:というBさんの長い(笑)ご意見、ご感想でしたが皆さんはどういう見解ですか?
C:しかしHP価格はまた上がってるんですよね。中国の思惑で。電極メーカーは価格を上げたがっている。
D:中国は高炉にLFがついてる。高炉生産は増えているのでLFの需要は伸びているんです。それと、中国では普通~太物のUHP品は、細物以上に大幅に価格が上がっています。日本では中国からの輸入電極の大半が細物なので「細物HPと普通~太物UHPの逆転現象」という意見がありますが、それは違います。
C:ちなみに、昭和電工が16インチの価格を下げられない理由は何でしょうか?
D:供給の問題では?昭電四川も16インチ以下の細物でなく本当はUHPの通常サイズをやりたいはず。昭電や東海の日本の電極工場は殆ど細物は製造しておらず、細物は中国に頼るざるを得ないです。(*これは前回の電極トーク夏の陣でも話題になった →(関連記事)電極覆面座談会#2018夏の陣 電極価格の高騰いつまで?)
B:電極は去年があまりにも上がりすぎたので今は落ち着いているように見えるのだけれども。HP、LFが上がりすぎた。しかしまだ上がっていくのか?
C:価格形成の構図が変わってきていることは事実。
D:さすがに中国品の去年の異常高騰は収まっています。去年は欧州のステンレスメーカーは方大から38,000ドルで買ってます。14インチは今10,000ドルを切っています。がここへきてまた上がりだし、28インチUHPは20,000ドルを超えてきました。
B:ふむ~。電極メーカーさんもどこまで儲かったら気が済むの?という気がするね。そう考えると、GTIの価格は結果的に紳士的かつ合理的な価格になっている。
C:逆に、日本の電極メーカーはどんどん価格を上げてきてますよね。
B:株主のことしか考えない、という最近の大企業の風潮は電極メーカーにも及んできていると思う。自分ところだけが儲かれば良い、というような。例えばなんだけど、電極価格が上がりすぎて、ステンレス、特殊鋼の製品価格が上がれば、結果的には社会資本コストが上がることにもつながる。それで社会貢献できるんだろうか?電極メーカーは。
D:それでも世界中の電極ユーザーが電極を求めているのが今。
B:だから、そこを電極メーカーがあおったんですよね。1年で16インチの電極が7倍、8倍に上がる価格形成というのがマトモなんだろうかとおれは思うね。ちょっと異常な相場でしょう。もしかしたら電気代よりも電極代のほうが高くなるかもしれない。電極がキロ1500円とかになると相当厳しいですよね、使う側からすれば。
C:ま、しかし電極メーカーは半ば開き直ってる感じしますね。上がったものはしょうがない・・・というような。昭和電工の利益の半分は電極ですから。
B:しかしこれは必ずしっぺ返しきますよ。中国は儲かる市場には必ず出てくる。そこで圧倒的なシェアをもてば次は上げてくるかもしれないけども、中国での電極増産によって必ず電極は値下げに導かれるはず。
A:その点、どうみますか?Cさんの見方は?
C:段階的な値上げは続くと思います。GTIの5年契約がベースにあるのである時期までは値上げは避けられないかと。国際価格化している電極市場です。欧州ではすでにGTIの5年契約がベンチマークになっています。
B:そういえば韓国はどうしてるんだろう?
C:昭和電工は韓国向けでキロ1500円(トン150万円)で決めましたね。東海も今年から販価はドルベースになっている。
D:東海は19年1-6月から新価格を打ち出します。昭電は19年1-3月まで価格が決まっていますが、19年4月以降は欧米市況見合いでまた上がるのでは?
C:海外はGTIの5年契約がベースになっており、ここに日本勢が乗ってきている。UHPはなかなか下がりづらい理由としては、GTIが35,000トンの増産をしたけれども、ボトルネックはニードルコークス(NC)。コノコもGTIもNCを買えていない。
*NCには石油系と石炭系とに分けられるが、欧米はすべて石油系。グローバルトップはフィリップ66(コノコ)、第2位がシードリフト(GTI)、第3位に日本のJX。石炭系NCは三菱化学、シーケムなど。
NCはLIB(リチウムイオンバッテリー)の負極材にも使われる。電極に使うNCのほうがクオリティが高く、LIB用はさほどクオリティが高くなくとも良い。LIB用にNCが引っ張られていることでNCのひっ迫が続いている。コノコはLIB向けのNC供給を増やしたがっているという。一般的に、石炭系のNCは壊れやすい、といわれている。
ちなみに中国でもNCを作っており、中国石油系のNC価格は現在トン5,000ドル弱。石炭系はトン4,000ドル弱。中国のNC価格は昨年夏の高騰し、史上最高値をつけた。今は昨年の高値からは落ち着いてきている。
品質的には欧米や日本のNCとは比較すべくない別物。 欧米、日本の電極メーカーは中国製ニードルは使用していない。
A:東鉄は電極はこれ以上(キロ1500円以上は)上がらない、と言ってますよね。
C:おそらくなんですが、皆さん、これ以上電極価格は上がってもらいたくない、という希望的観測が多分に含まれていると思います。しかし現実的には上がり続けています。その証拠に、すでにGTIの価格を他メーカーの価格は超えてますからね。
A:しかしこうまで副資材が上がっていれば、電炉メーカーは収益を圧迫されて大変なのではないでしょうか?
C:原料のスクラップ価格が下がっているから大丈夫でしょう。
B:ただ、高炉メーカーが環境問題に配慮して、というか安くなったスクラップを使うとなればまたスクラップ価格は上昇し、電炉はきつくなるかもですね。
D:とはいえ、高炉も多くの電炉を傘下にもっているので、電炉メーカーの収益がきつくなるようなことはしないと思います。
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ということで電極覆面座談会2018#冬の陣はまだまだオフレコトークが続いて話は終わりそうになかったが、これはまた別途の編集版でお伝えしたいと思う。いずれにしても2017年から始まった電極価格上昇は基本的には5年後の2022年までは続く、ということになるのだろうか、それとも中国供給の増加で下落していくのか。その点はまた年明けの新春座談会に場を移したいと思う。
(IRUNIVERSE JP)