国内ステンレススクラップ市場は先安含み。依然として発生、実需ともに低迷で市場は「冬」のままであるが今後は為替の円高移行が相場の下げ圧力になる可能性がある。
現在の304系スクラップの市中実勢はキロ当たり165~170円、400系では60~65円。316系で290~300円で推移している。
ステンレススクラップ専業ディーラーは
「(人間の健康状態でいうと)SUSのマーケットはちょっと病人。循環器系の病気にかかっているようで、流れが悪い。
発生も悪ければ、実需(メーカーの買い)も弱い」(中部地区)
「相場は、やはり為替がどう動くかですね。円高が進む可能性が高いなかでは先安。うちでも170円は高い。165円以下で買いたいのが正直なところ。316系はもう300円が限度ですね」(千葉県のディーラー)
ということで為替の動きを気にされている。
(最近6か月の為替円ドルTTS相場の推移)
そこで為替にも詳しいチーフエコノミストに今後の為替の動きを聞いてみると
「基本的に円高に向かう可能性が高く、130円まで進むのにはそう時間がかからないとみている。今後のアメリカ経済を俯瞰すると、間違いなく弱くなる。ある程度ドル安(円高)は進む」とのこと。為替の130円は2023年の2月頃までさかのぼることになる。
そして一方、ニッケル相場はどうかというと、実需は伸び悩み、LMEニッケル在庫も20万トン近くあるため、現在のトン当たり15,000ドルよりも下のレベルまで下がっても不思議ではないのだが、意図的にかどうか定かではないが、まだ15,000ドル台をキープしている。
(最近3か月のLMEニッケル相場と304系スクラップ相場の推移)
短期的にはやはり為替の動向がポイントになろう。
輸出向けでは、韓国POSCO社が6月は炉修に入るため、原料スクラップ需要は強くない。
インド、台湾向けもそう強くはない状況。対して、国内では最大手輸出シッパーの親和スチール社は大阪、川崎ともに在庫潤沢。下落市況での駆け込み出荷をうまくキャッチした格好。ここでさらに値下げしてもおかしくはないのだが、おそらくはあえて横ばいを通すのではないかと思われる。POSCOの現在の(5月の)直納価格からすると、日本国内との値差は若干開いている(POSCO価格のほうが高め)。
また、スクラップディーラーのほうも、ここまで下がってくると、次の「上げ」待ちで出荷を急がない。金属スクラップ全体的に流通量が少ないなかで、虎の子の在庫を慎重に運用する向きは次のステージまで待つ。
国内はステンレス、特殊鋼メーカーともに減産基調が続いている。急いで原料を手当する必要はない。からなのか、5月12日に千葉県袖ケ浦でOPENしたJSPの新ヤードは華々しいご祝儀価格などは出さず、粛々と静かに営業を開始している。
冒頭述べたように、ステンレス市場は製品からスクラップ流通まで循環不全に陥っているようだ。
(IRUNIVERSE YT)