東京製鐵は16日、2025年7月契約の鋼材販売価格について、2カ月連続で全品種据え置くと発表した。アメリカの関税政策を受けた国際マーケットの萎縮などが判断材料となったとみられる。
生産予定については6月全体で25万トン(前月予定比から5000トン増)、H形鋼が8万トン(5000トン増)、ホットコイルは12万トン(横ばい)[内、輸出は1万トン(2万トン減)]、厚板4万トン(横ばい)。
物件価格や在庫販売価格については前月から変更なし。H形鋼が11万7000円、異形棒鋼が8万7000円、厚板が10万円(建値と同額)。6月16(月)午後より販売開始した。
なお、夏季定修期間(製鋼基準の圧延ならい)は次の通り。
田原工場 7/28~8/7
岡山工場 8/18~8/22
九州工場 7/28~8/8
宇都宮工場 8/25~9/4
東京製鐵の基調コメントの概要は以下の通り。
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海外マーケットは、底堅い経済成長を維持している地域はあるものの、総じてアメリカの関税政策により景気の下押し懸念が日増しに強まっている。特に、対米輸出における鉄鋼への大幅な関税率の拡大は、直接または間接にかかわらず、各国の鉄鋼需給へも大きな懸念材料となっている。加えて、コロナ禍に進行したサプライチェーンの変革も新たな見直しを迫られ、当面の間、国際的な鉄鋼製品の需要は、供給過剰感が解消されがたい状況が続くと予想される。安価な製品の取引価格が鉄鋼メーカーの収益を圧迫しており、さらなる下げ余地は残されていないと思われるが、引き続き、世界経済や米中の貿易動向と今後の鉄鋼需給の変化について慎重に注視していく。
国内マーケットにおける建材品種では、国際経済と鉄鋼関連市場の急激な変化を受け、一部の製造業による大型投資計画の中止や延期の動きにより、鋼材市況は弱気ムードが漂っている。他方で、施工会社を探している案件は非常に多くあり、省人化を目的とした物流施設や製造拠点に加え、DX化拡大に伴うデータセンターやその関連工事は底固く遂行している。止まっていた鋼材手配も動きが出始めており、今後も需給バランスは保たれると予想されることから、鋼材市況の早期底打ちに向けた市場の動きに期待したい。
鋼板品種は、アメリカの関税負荷を受け国際マーケットが萎縮したため、一部産業においてはマイナス面が大きく、先行きの国内鉄鋼使用の需要減速が懸念される状況にあるが、設備関連機器を中心とした産業では、受注残を多く抱え、加えて新規投資計画も増加傾向にあることから、安定した需要が予想される。これまで通り、鉄鋼メーカーは供給抑制姿勢を維持しており、これに夏季減産が加わるため、流通各社の慎重な購入姿勢とあいまって、需給バランスの改善と市況の持ち直しが待ち望まれる状況にある。
以上のような状況のもと、各種鋼材を取り巻く環境を鑑み、今月も早急な市況底入れを図るべく全品種据え置きとする。引き続き需要に見合った生産を継続し、需給の調整に努める。
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また、小松﨑裕司取締役常務執行役員営業本部長は基調コメントに補足する形で以下のように見解を示した
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アメリカで鉄鋼やアルミニウムの輸入関税を従来の25%から50%に倍増する大統領令が署名されたことなどが懸念材料となり、先行きの不透明感を強めている。海外マーケット全体でみても、アメリカの関税政策の行方を見定める傾向が強く、引き合いは低調状態にある。アメリカ国内の相場は軟調傾向にあるが、底入れ上昇の可能性も高まっていると考えている。
そんな中で中国は依然として輸出高位の状態にあり、需要が盛り上がらないアジア各国にとってのさらなる足かせとなっている。したがって、アジアにおいては、じり安基調の相場展開となっている。日本においても6月は国内需要が減退する時期であることから、6~7月の中国の輸出量の変化を引き続き注視していきたい。日本が原油を依存している中東情勢からも目が離せない。
国内市場は、海外経済情勢の変化や国内製造業の輸出動向の不透明感を受け、市況と荷動きはともに軟調傾向にある。流通各社で慎重な購入姿勢が続いていることもあり、今後も需給バランスに大きな崩れはないと想定している。
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2025年7月契約の品種別販売価格(O/T NET ベース価格、トン当たり円)は以下の通り。
H形鋼及び形鋼:2023年4月契約において3,000円の値上げ後、1年5か月連続で、価格据置としたが、2024年10月契約にて1万2,000円値下げ。今回の2025年5月契約で7カ月ぶりに3000円値下げ。
H形鋼=11万2,000円(2024年10月契約にて1万2,000円値下げし、2025年5月契約で7カ月ぶりに3000円値下げ。)
縞H形鋼=12万2,000円(2024年10月契約にて1万2,000円値下げし、2025年5月契約で7カ月ぶりに3000円値下げ。)
I形鋼=11万3,000円(2024年10月契約にて1万2,000円値下げし、2025年5月契約で7カ月ぶりに3000円値下げ。)
溝形鋼=10万8,000円(2024年10月契約にて1万2,000円値下げし、2025年5月契約で7カ月ぶりに3000円値下げ。)
角形鋼管(コラム):2022年9月契約において5,000円値下げ後、2年連続で、価格据置としたが、2024年10月契約において、更に1万円の値下げ。
角形鋼管=11万8,000円(2024年10月契約にて1万円値下げ。)
U形鋼矢板:2023年4月契約にて3,000値上げ後、1年と5カ月連続で、価格据置としたが、2024年10月契約において、1万2,000円値下げ。今回の2025年5月契約で7カ月ぶりに3000円値下げ。
U形鋼矢板=12万4,000円(2025年5月契約にて3000円値下げ。)
異形棒鋼:2024年10月契約において、1万円の値下げ。以降は5カ月連続で横ばいとなり、2025年4月契約は3000円の値下げ。
異形棒鋼=8万5000円(2025年4月契約にて3000円値下げ。)
厚板:2023年7月契約にて1万円下げ後、1年と2か月連続で価格据置としたが、2024年10月契約において、更に1万5,000円の値下げ。今回の2025年5月契約で7カ月ぶりに3000円値下げ。
厚板=10万円(2025年5月契約にて3000円値下げ。)
コイル類4品種:2024年10月契約で1万5,000円の値下げ。以降は5カ月連続で横ばいとなり、2025年4月契約で酸洗コイル5000円、他は3000円の値下げ。
ホットコイル=8万9000円(2024年10月契約で1万5,000円の値下げし、2025年4月契約にて3000円値下げ。)
縞コイル=9万2000円(2024年10月契約で1万5,000円の値下げし、2025年4月契約にて3000円値下げ。)
酸洗コイル=9万5,000円(2024年10月契約で1万5,000円の値下げし、2025年4月契約にて5000円値下げ。)
溶融亜鉛めっきコイル=12万1,000円(2024年10月契約で1万5,000円値下げし、2025年4月契約にて3000円値下げ。)
以下カットシート類(2024年10月契約で1万5,000円の値下げ。以降は5カ月連続で横ばいとなり、2025年4月契約で3000円の値下げ)
熱延鋼板=9万4,000円(2024年10月契約で1万5,000円の値下げし、2025年4月契約にて3000円値下げ。)
縞鋼板=9万7,000円(2024年10月契約で1万5,000円の値下げし、2025年4月契約にて3000円値下げ。)
酸洗鋼板=10万4,000円(2024年10月契約で1万5,000円の値下げし、2025年4月契約にて3000円値下げ。)
[申込締切日:2025年6月18日(水)12時まで]
(IRuniverse K.Kuribara)