イランとイスラエルの戦争は米の攻撃も加わり6月25日に一応の停戦、となった。しかしまだ予断を許さない状況にあるなかで、イランの鉛鉱石供給について述べたい。イランの鉛亜鉛鉱山は主にAngouran鉱山とMehdiabad鉛亜鉛鉱山である。その中で、Angouran鉛亜鉛精鉱の設計生産能力は鉛純分で12万トン/年ではあるが、現在資源は枯渇寸前で、わずかな産出しかない。Mehdiabad鉱山の鉛亜鉛精鉱の設計生産能力は年間50万トンで、当初は2025年から生産能力の放出が加速する予定だった。
供給側から見ると、2024年、イランから中国に輸入された鉛精鉱は1.1万トンで、全体の0.9%を占めた。亜鉛精鉱は8.0万トンで、全体の2.0%を占めた。2025年1~4月、イラン産鉛精鉱の輸入量は約2.0万トンで、輸入量全体の4.5%を占めている。
イランの鉛精鉱は2024年10月から中国に輸入され始めたばかりで、これまで輸入されていない。イラン発の亜鉛精鉱輸入は約2.9万トンで、総輸入量の1.7%を占め、前年同期比21.7%減少した。
イランとイスラエルの衝突のエスカレートによる世界の鉛精鉱サプライチェーンの混乱はすでに確定しており、イランの鉛精鉱最大の輸入国である中国が真っ先にその影響を受ける。
一、危機の核心:イランの鉛精鉱供給は三重チェーン切断のリスクに直面
1、海運通路が妨げられる
ホルムズ海峡通行リスク:イランの鉛精鉱の40%はホルムズ海峡に隣接するアッパス港を経由して輸出されている(世界の海運石油の33%は必ず通過しなければならない)。衝突がエスカレートして海峡封鎖につながれば、イランからの鉛鉱輸送サイクルは25日から60日以上(好望角を迂回する)に延長される。
2、イラン国内生産停滞
エネルギー施設攻撃:イスラエルは4月14日、イランの鉛亜鉛鉱山の60%(Mehdiabadなどの超大型鉱山)が集中しているイスファハン州を空爆した。
電力供給の停止:鉱山が依存していたZarand発電所がミサイルによって破壊され、1日あたり1,200トンの鉛精鉱生產(イラクの1日平均生產の30%)に影響を与えた。
3、国際制裁が圧力を強める
米議会はすでに『イラン金属輸出封鎖法案』を推進しており、鉛精鉱の買い手に二次制裁を科す予定だ。中国製錬所はドル決済凍結リスクにさらされている。
二、中国企業の緊急方案と代替経路
1、短期的な救済(1~3ヶ月)
方向性備蓄放出:国貯蔵局が5万トンの鉛インゴット(月間消費量の10%)を投入することを調整して価格を抑制する。
中継貿易ルート:オマーンのスハル港を経由してイランの鉛鉱を中継する(関税コスト+7%、しかし制裁を回避する)。
2、中長期的な代替案

(再生鉛には廃蓄電池回収網拡充が必要(中国の現行回収率は僅か30%)
三、世界鉛亜鉛サプライチェーン再編動向
1、資源大手の戦略転換
グレンコアがイラン亜鉛鉱山(鉛鉱共生)開発を凍結→カザフスタン・アクトガイ鉱山に投資転換
トラフィグラがブロックチェーン鉱石追跡システム導入、イラン産分離で制裁リスク回避
2、中国製錬能力の地域シフト
新疆・アラシャンコウ口岸に中亜鉱石活用の鉛製錬クラスター急拡大:
コスト優位性:華南沿岸比150ドル/トン低(関税・海運費削減)
生産計画:2025年までに精鉛年産50万トン体制構築
(趙 嘉瑋)