国内ステンレススクラップ市況は7月に入りじり高。先月からその兆候はPOSCO向けのSPOT買いなどでみられていたが、さらにその傾向が強まっている情勢。
304系スクラップの市中実勢はキロ当たり165円→170円→175円、と上昇。
ステンレスメーカー、特殊鋼メーカーも表立っては値上げを行っていないが、いわゆる個別対応(裏値ともいう)で少ないスクラップの集荷に努めている状況。
関東地区では日鉄系のJSPが一部180円まで出している、とも聞く。
このSPOT対応についてA氏は
「いや、上がったのではなくて、ようやくまともな値段に戻ってきただけですよ。日本のメーカーが求める品質まで仕上げるならば180円が妥当な価格」と。
また別のB氏は
「POSCO価格が上がった先月時点で合わせてあげておけば、今のような裏値対応が広がることはなかった。上げのタイミングを見誤りましたな」と冷静に分析する。
JSPのNEWヤードである袖ケ浦では現在、304系メインで集めているが、光向け、よりも旧日新製鋼の周南向け。
316や特金関係は小山での集荷。
316系はキロ当たり320~330円が関東地区。西日本のほうが高めで350~360円。光向け。
日本冶金は静観の構えだが、輸出の親和スチールが動けば対応する方向。ステンレスの生産は依然として2万トン前後が通常。7-8月は15,000~16,000トンまで落ちる見通し。
輸出サイドでは、最大手の親和スチールは170~175円が中心だが、上げ含み。
中国向けでは中国国内の304系の新断がトン当たり9400元(日本円でキロ当たり190~192円 為替144円換算で)。中国着で190円という価格はあるのか?と中国系の業者に聞くと
「中国の港、例えば寧波に着いてから通関コストが400~500元かかる。中国のステンレスメーカー着値で190円はあるかわからないが、日本での買値は170円が限界でしょう。そもそも、中国はそれほど日本のステンレススクラップは欲しがっていない。利益も出ないので私が知っているだけでも中国系の業者でステンレスの買いから撤退したところは4~5社ある。中国に、冷たい水に魚は住まない、ということわざがあるが、儲けのないところには中華系は来ない。私もちょっと潮時かな、と考えている・・・」
と神妙な表情で語るT氏。
特殊鋼メーカーでは珍しく?大同特殊鋼は静観だが、愛知製鋼、山陽特殊、関西製鉄和歌山地区(旧住金和歌山)はスクラップ供給不足から5円の値上げ。とりわけ和歌山は買い気強く。304スクラップの持ち込みがあれば、クロム系スクラップに5円乗せる、という異色のキャンペーンを展開中。和歌山はクロム系スクラップを欲しているようだ。
そこまで需要が強くない(ステンレスメーカーの生産が強くない)が、そこそこにスクラップ相場が安定している背景には、従前からの発生不足もあるが、ニッケル相場、為替相場の安定がある。
LMEニッケル相場はトン当たり15,000ドル前後で推移、為替は足元145~147円と変わらずの円安水準だ。アジアのSABOT相場はトン当たり1230~1250ドル。
(最近3か月のLMEニッケル相場と為替円ドル相場の推移)
(最近3か月のLMEニッケル相場と304系スクラップ相場の推移)
(IRUNIVERSE YT)