再生材ビジネスコンサルタントとして活躍する西田氏(左)と原田氏
再生材ビジネスコンサルタントとして活躍する西田純氏は8日、都内で「循環経済と脱炭素をおカネに変えて儲ける方法 5大戦略セミナー」を開催した。冒頭にサステナビリティ技術設計機構の原田幸明代表理事が国内のサーキュラーエコノミーの現状やビジネスチャンスについて説明した後、西田氏が事業として利益を生み出すための具体的な手法を紹介した。
原田氏は冒頭、「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律」や「資源循環の促進のための再資源化事業等の高度化に関する法律」などを含めた法規制のほか、循環経済に関する政府や企業の動向を紹介。同分野におけるビジネスチャンスが大きく広がっていることを強調した。実際、国内においては、再エネ設備を導入した中小企業が2015~20年にかけて増加傾向にあるという。また、環境関連投資に対する関心が着実に高まってきており、18~21年の間で、同投資額が2倍以上に増えているとも報告した。

さらに、原田氏は具体的なビジネスモデルについても言及。ビル改修や移転で不要になる内装材や部品をオンラインマーケットで一覧化し、プラットフォーム使用料とトランザクションフィーで収益を得るマッチングサービスなどにふれた。
SCATでCO2排出量や環境貢献を可視化
続いて登壇した西田氏はビジネスチャンスを確実に掴み、企業の利益へ変換する方法を、①脱炭素の可視化②事業の追い風となる法律③脱炭素~循環経済をカネに変える方法④具体的な成功への道――の4項目に分けて説明した。ビジネスモデル構築の基礎となるCO2排出量や環境貢献の可視化については原田氏が開発した計算ツール「SCAT(simple CO2 account tool)」を推奨した。
SCATシリーズは、企業の事業所や企業全体を対象にしてCO2の排出の現状を計算し、見える化するエクセル版計算ツールである。CO2発生原単位のような専門知識や、関連する上流、下流プロセスの情報知識は不要で、対象となる事業所や会社での物流の管理情報があれば計算できるように設計されている。国の統計情報に基づく算定方法を採用しており、信頼性も高い。
同ツールはscope1+scope2を対象とした「SCAT12」やscope3対応も網羅した「SCAT123」など、利用者の目的や用途に合わせたバージョンを揃えることも特徴の一つ。最も汎用性の高い「SCAT123plus」では、リサイクルによるCO2削減貢献が計算できるだけでなく、カーボンクレジット認証機関への提出時に活用できるチェックシートも搭載されている。
CO2排出量の可視化を行った後のステップについて西田氏は、インパクトマーケティングの必要性を説いた。「より安い、より良い、より便利の3要素に加え、『社会的インパクト』を商品やサービスの強みとし、勝算を挙げていく必要がある」と呼びかけた。加えて、「PR情報は顧客に“届くように”発信しなければいけない」とし、プロモーション戦略におけるセミナー開催の重要性も強調した。
講演後は、2026年度から日本国内で本格導入される予定の排出量取引制度などについて質問が挙がった。同制度について原田氏は、2033年度を目途に有償オークションの導入も検討されているが、それまでの間で、一定の利益を確保するためには「相対取引で、高く買ってくれる売り手を見つけることが必要」と見解を述べた。
同セミナーを主催した西田氏は脱炭素で儲ける方法論の第一人者。産学連携による技術開発で連続して特許出願を果たしており、主に戦略コンサルタントとして活動している。加えて、サーキュラーエコノミー・広域マルチバリュー循環研究会幹事、循環経済協会会員、武蔵野大学環境大学院非常勤講師、富山高専シニアフォローとしても活躍するほか、MIRUでも毎週、脱炭素に関するコラム記事を執筆している。
(IRuniverse K.Kuribara)