Loading...

日本アビオニクス(6946)25/3期説明会メモ ややネガティブ→ニュートラル

2025/07/14 13:00
文字サイズ

25/3期防衛関連増で11.4%増収28.4%営利増と最高益、26/3期も連続最高益更新予想

株価(7/11)3770円  時価総額632億円   発行済株16765千株

PER(26/3DO予24.2X)PBR(4.16X) 配当(26/3DO予)11円  配当利回り:0.3%

 

要約

・25/3期防衛関連増で11.4%増収28.4%営利増と営利最高益、経常利益は3期連続最高益

・26/3期11.8%増収14.4%営利増と防衛関連続伸、接合機器も回復し連続最高収益更新予想

・中計予想27/3期に売上高300億円、営利40億円目標は防衛費増額受け超過達成期待

 

5/3期防衛関連増で11.4%増収28.4%営利増と営利最高益、経常利益は3期連続最高益

 防衛用表示機器などの情報関連システムと赤外線サーモモジュールや精密接合機器の電子機器を2本柱に事業展開。5/13に決算開示も、説明会は株主総会後の7/8にようやく実施された。25/3期は売上高201.22億円(計画比比18.78億円未達、11.4%増)も、営利27.96億円(同1.96億円増額、28.4%増)、経常利益27.11億円(同1.61億円増額、26.0%増)、税引利益19.64億円(同0.64円増額、8.6%減)となった。経常利益は3期連続最高額を更新、営業利益も最高益更新、6期連続営利増となった。受注も274.4億円(25.3%増)、受注残217.52億円(50.7%増)に膨れ上がった。

 


 セグメント別では情報システムが売上高160.31億円(同14.69億円未達、9.3%増)、受注230.33億円(26.7%増)、営利30.46億円(15.4%増)。同社は防衛庁向けの各種装備品を供給しており、防衛予算の伸びと積極的な提案活動が寄与、大幅な受注増額で着地した。なお売上高未達の要因は当期中に完了せず次期に売上計上される請負工事の工程進行度の影響が大きいと見られる。防衛関連事業においては防衛省が最終的な発注者であるものの、実際のシステム全体の統合や納入を行うのはNECや富士通などの電機メーカーや重工メーカーであり、同社は直接防衛庁向けに納入する金額は少ない。このため同社25/3期仕向け先売上では、従来の親会社であるNEC向けは自動警戒管制システム(JADGE)の構成品である表示操作卓などを収めているが、売上高66.87億円(57.4%増)と伸長した。一方、富士通向けは34.55億円(33.8%減)、住商エアロシステム向け33.82億円(28.6%増)となっている。25/3期についてNEC向けが多く、富士通向けは同社が開発した陸自向け対空戦闘指揮統制システムを車載シェルター搭載装置や信号処理システムを提供するなどしているが、23/3期177.54億円からの反動減が続いている模様。住商エアロシステム向けは艦艇搭載情報表示装置や通信制御装置、宇宙分野でJAXA向け製品なども売上計上している模様。利益は人員再配置、QDC改善などプロセス改善の成果が大きく現れ、営業利益率が1.0ポイント向上し19.0%と過去最高の営業利益率となっている。

 電子機器は売上高40.91億円(期初計画比4.09億円未達、20.7%増)、営業損失2.50億円(同期比2.11億円赤字縮小し、赤字半減)、受注44.05億円(18.6%増)、受注残15.12億円(26.2%増)となった。中心となる接合機器は売上高30.56億円(32.5%増)と輸出(電子機器輸出のかなりの比率を占める)が19.05億円(42.7%増)とボトムから回復。特にアシア向けについて16.70億円(417.0%増)となっており、中国(台湾企業の中国現地工場向け)向けなどで伸びたとみられる。国内中心の赤外線センサを中心とするセンシング部門は売上高10.34億円(4.4%減)とコロナ関連の停滞継続も工業用などの需要増でカバーしたと見られる。利益面では増収効果も22/3期の売上高80.12億円に対し51%水準と、まだ稼働率が上がっておらず赤字縮小に止まっている。受注は設備需要の持ち直しやターゲットとする市場への拡販で回復をみせた。

 全体として期初想定に対し、防衛関連は売上計上される請負工事の工程進行度の影響が大きく売上未達も収益性が向上、受注は防衛費増が本格寄与、収益上伸が継続した。一方で電子機器事業はスマホ、EVの伸び悩みなどで受注回復が遅れ、受注回復ながら回復テンポが緩やかで赤字縮小にとどまったが、情報システムの寄与度が増し、営利、経常最高益更新に。なお税引利益は法人税等調整額で前期の変動増で減益に。

 

 

26/3期11.8%増収14.4%営利増と防衛関連続伸、接合機器も回復し連続最高収益更新予想

 26/3期会社予想は売上高225億円(11.8%増)、営利32億円(14.4%増)、経常利益31億円(14.3%増)、税引利益22億円(12.0%増)予想とした。部門別予想の開示はないが、会社側では防衛予算の25年度歳出額が順調に伸びる見通しを立てており、2ケタ増継続を見込んでいる。実際歳出予算は8兆5389億円(10.5%)、この中で物件費が6兆2661億円(14.0%増)となっており、同社の伸びも同程度が期待される。利益面でも増産効果から研究開発費増を埋めて営利率確保が見込まれる。電子機器も前期受注が44.05億円(18.6%増)あり、水晶振動子などの生産が同月比プラスに転じ、半導体生産も拡大テンポが見えており、10%程度の伸びが見込める。利益面でも設備稼働率が改善し、黒字転換しよう。
全体として会社計画を若干上回る売上が期待され、2期連続営利最高益更新が見込める。

 

 

中計予想27/3期に売上高300億円、営利40億円目標は防衛費増額受け超過達成期待


 同社は新中期経営目標として27/3期に売上高300億円、営利40億円を掲げた。売上の中身は開示していないが、基盤事業の情報システムが防衛整備計画の拡大を背景に順調な拡大が見込める。防衛予算の中では、スタンド・オフ防衛・統合防空ミサイル防衛・無人アセット防衛など、将来の防衛装備品の開発・装備化に重点配分されており、研究開発予算も急増している。このような状況を踏まえ、同社は防衛庁が掲げる防衛力強化に従い、主要7事業についてターゲットを設け、受注獲得に注力する。電子機器は25年度について契約ベースでは減少するものの、26以降は米国の要求の高まりもあり、2023年度~2027度の防衛力整備計画に対し増額されると見られ、再度受注拡大とともに歳出ベースで伸び率が計画比でもアップしよう。

 

 

 

 

 

 

 電子機器部門では、接合機器がAIスマートフォン、AI搭載PCなどが相次いで投入され、受注が上向いている。生産が上向きつつある。同社は接合装置で4つの接合機を持つ、世界でも類を見ない接合機メーカーという強味がある。高シェアのシーム溶接機の他では、EV向けのバッテリー向け合金タブ溶接、モーター用コイル線接合(フュージング)、EVハーネス向け銅・アルミ溶接などでは精密抵抗溶接機の需要増加が見込まれる。また次世代パワー半導体向けでははんだ付け行程でボイド発生を防ぐフラックスレス(はんだの流動性を高めるために一時的に利用される材料を使わない)装置も開発、半導体後工程での需要拡大の可能性もある。

 

 

 

 サーモグラフィについては非発熱向けで、防災やセキュリティ強化に貢献する監視ソリューション、赤外線技術応用では電子部品の欠陥検査、医用では国内唯一の医用サーモグラフィなどの拡大を目指す。

 

 

 

 

 全体として情報システム、電子機器事業のそれぞれで新規分野の拡大が期待され、新中期経営計画について利益面では十分達成する可能性がある。なお300億円達成のためにM&Aも視野に入れているが、M&Aがあれば更に上振れも期待される。


 株価は防衛関連予算の大幅増を受け一貫して上昇を続けたあと、昨年10/1に1:5分割を行ったあとは材料出尽くし感もあり狭いレンジで推移していた。しかしウクライナ問題に加え、ガザ地区問題、更には米中摩擦激化などの中でトランプ政権の主要友好国に対する防衛費大幅増額要求などもあり全体相場に逆行して株価が再度上昇、6/23には4790円の高値をつけ、その後多少下落した状況にある。現在26/3期会社予想EPS142.94円に対しPER26.4倍は東証スタンダード電機平均PER12.9倍に対し割高となっている。しかし防衛関連の三菱重工の41.1倍に対して割安、一方、川崎重工20.2倍、IHI18.3倍に対し割高となっている。前回の投資判断は大きく誤った形となったが、今後、トランプ政権の防衛費の対GDP対予算上乗せの可能性があること、中計でM&Aを想定しており、今後具体化する可能性もあるため、割高感はあるものの、ややネガティブからニュートラルに評価を改めたい。(図表はアビオニクス決算会資料、防衛整備計画、防衛予算資料から添付)

 

 

 

*三菱重工(7011)、川崎重工業(7012)、IHI(7013)との比較

 

 

(H.Mirai)

 

 

関連記事

新着記事

ランキング