株式会社PFU(社長執行役員:平原 英治氏)は、8月25日~28日の日程で、リチウムイオン電池検知システム(LiB検知システム)の実用化に向けた、搬入不適ごみ検出に関する実証実験を、町田市バイオエネルギーセンター(東京都町田市下小山田町)にて実施した。同社が町田市と連携して同機の実証実験を行うのは、2024年9月に続き2回目。さらに検出の精度を高めた試作機での実証実験になる。今回、主にLiB検知システムの案内をして頂いたのは、PFU 事業開発本部 北村純子氏(写真左)になる。
不燃ごみ中から選別しきれないLiB
周知の通り、主にLiBを発火原因とする家庭ごみ収集や処理施設での火災事故が近年頻発している。この最大の原因は、排出時にきちんと分別が行われていないことだが、どの製品をどの分類で排出すればいいかが不明な場合も多々ある。そのために、発火性製品が混入してしまう、ということも否めない。
発火する比率が最も高いのは「不燃物」の回収および処理のシーンで、ここには例えばフライパンなどの金属製品とともに小型家電も含まれてくる。多くの場合、小型家電で使われる乾電池などは抜き取って「有害ごみ」として排出するケースが多いが、このとり忘れ、さらにリチウムイオン電池など二次電池が製品に組み込まれた(ビュルドイン型)のものもあり、これが主な発火原因になっている。
通常、こうした製品は、収集時または処理施設で破砕機にかける前に、作業員が袋から出してより分ける作業(手選別)が行われているが、どうしても取りきれず、その先の工程に入ってしまうことがある。これが衝撃や破砕によって発火するのだ。
画像解析技術を新装して、2回目の検証
町田市では小型家電中でも電気シェーバーなど一部製品(二次電池使用)を有害ごみとして排出するよう定めているが、どうしても不燃ごみ中に混入してきてしまう(同市では「燃やせないごみ」と分類して排出、また拠点回収も行う)。同市でも、過去に清掃工業での火災を数回経験しているといい、LiBの混入には、他自治体と同様、神経をとがらせているのだ。
同市では、不燃ごみは緑色の指定袋に入れて排出することになっているが、バイオエネルギーセンターに搬入された後には、前記の通りまず破袋して混入されている有害ごみを手選別する。その後、通常は破砕などの処理設備に移されるが、今回は手選別後のごみをPFUのLiB検知システムに通し、LiBや乾電池などの有害物を検出する。実証実験が行われた。
試験期間は8月25日~28日の4日間で、各日でパッカー車一台が収集してきた不燃ごみをサンプルとして実証した(約750kg)。選別された様子が、写真左が手選別でよけられたもの、写真右がLiB検知システムを通過させたことで排除された有害ごみになる。
LiB検知システムの検出の仕組みは、X線画像と画像処理技術の組み合わせによる。これにより、LiBなど有害物の「外形」を認識し、それが検出された際にはプロジェクタと警報音で作業員に伝える仕組みになっている(写真右)。
LiBは小型家電に内蔵されたものであっても、バッテリー形状をパウチ型、円筒型といった「外形」で認識することができる。この外形データは随時AIにフィードバックされ、データベース化されるため、精度は一層上がっていく。将来的には刃物などの危険物(有害物)も検知できるようにしていくという。
前回の実証実験では、認識率は91.8%であったが、その際には垂直方向からのX線照射飲みであった。しかし今回は水平方向からの照射も加えており、より一層の認識率の高さが期待できそうだ。
先日ニュースで見たある自治体でのごみ処理施設では、発火による火災で不燃ごみ処理が不能になり、現在その処理は近隣の施設に頼る形になっているという。復旧には40億円近い費用が必要になり、また2〜3年の期間を要するという。
分別の徹底がまず第一の入口なのであるが、この大量消費社会=大量ごみ社会では、使用済み品の混合は避けられまい。かなり技術の力に、これからも頼らざるはおれないだろう。PFUの同システム始め、より良いサーキュラーエコノミー社会を実現させる多彩な技術、装置の開発に期待したい。
(IR universe kaneshige)