貴金属PGM市場は8月下旬ジャクソンホールでのパウエル議長の発言により、利下げ観測が拡大。金・イリジウム・ルテニウムがだいぶ上昇傾向となっており、銀はゆるやかに上昇気味だがプラチナは落ち着いている状況だ。
金(GOLD)堅調推移継続
8月下旬に開催された米ジャクソンホール会合でのパウエルFRB議長の発言が市場では「利下げへの転換」と受け止められ、9月の利下げ観測が広がったこへのとで3,400ドル台を回復。トランプ米大統領によるFRB理事解任騒動に伴い、FRBの独立性に対する懸念からリスク回避の買いが入ったことも相場を押し上げた。
足元では一段高となり、スポット価格は一時3,560ドル近辺まで上昇し過去最高値を更新。
米利下げ期待、FRBの独立性懸念、米関税政策の不透明感、中央銀行による金購入、地政学リスク等を背景に引き続き堅調な推移が見込まれる。
NY金($/toz)と国内金建値(\/g)の推移 3か月


銀(SILVER)金相場追随も買い入り懸念か
7月末の急落から値を戻し、8月末には39ドル近辺まで上昇。9月初旬には金相場の上昇に追随する形で40ドルの節目を突破し、14年ぶりの高値水準となる41ドル台まで上げ幅を拡大した。
短期的には利益確定の売りが出ることも予想されるが、米利下げ期待を背景としたドル安や金相場の上昇を受けて、金融・通貨的側面では引き続き買いが入りやすい状況にある。
しかし、景気の先行き不透明感が強まる場合には産業用メタルとしての側面が意識され、上値を抑えられる展開となろう。
NY銀相場($/toz)と国内銀建値(\/kg)の推移 3か月


プラチナ(Platinum)下値余地は限定的
7月下旬に1,300ドルを割り込む場面も見られたが、売り一巡後は切り返し、8月は1,300ドル台を維持。
米利下げ観測に伴うドル安や現物の逼迫感から下値は堅く、9月初旬には金・銀相場と同様に一段高となり、1,420ドル近辺まで上昇した。
リースレートは依然高止まりが続いており、「借りるより買う」という動きを促すことで現物の逼迫感が一層強まることも意識されるため、下値余地は限定的となろう。
6月以降、度々1,400ドル台に乗せているものの短期間で押し戻されており、この節目を明確に上抜けると、900~1,000ドルのレンジを脱した際に見られたような買いが買いを呼ぶ展開も予想される。
NYプラチナ相場($/toz)と国内プラチナ価格(\/g)の推移 3か月


パラジウム(Palladium)やや重石気味
7月半ばに付けた1,300ドルの高値から反落し、以降は下落基調が継続。8月末にかけて1,100ドルの節目を割り込んだ。
9月上旬には他の貴金属相場の上昇を眺めて1,140ドル台に値を戻したが、プラチナとは対照的に需要の弱含みが意識される中で積極的な買いには至らず、上値追いには慎重である模様。
また、相場反発時にはリサイクルからの売りが活発化する傾向が見られるため、こうした要因も相場の重石となるだろう。
NYパラジウム相場($/toz)と国内パラジウム価格(\/g)の推移 3か月


ロジウム(Rhodium)7300ドル台で落ち着き
8月初旬に7,000ドルを割り込んだことで押し目買いが入り、7,575ドル近辺まで上昇するも、その後は手持ち筋の売りが優勢となり軟調に推移。ただ、7,000ドルの節目が近付くと再び買いが散見され、足元では7,300ドル近辺に値を戻している。
反発局面では引き続き手持ち筋の売りが警戒されるため、上値は限定的となろう。
JMロジウム価格($/toz)と国内ロジウム価格(\/g)の推移 3か月


イリジウム(Iridium)売り買いは拮抗継続となる可能性
8月中旬にかけて4,700ドルまで上昇したものの、その後は様子見姿勢が広がったことで上値が重くなり、足元では4,650ドル近辺で推移。
売買は拮抗している状態にあると思われるため、大きく値を崩す展開は想定しづらく、堅調な地合いは維持される見通し。
JMイリジウム価格($/toz)と国内イリジウム価格(\/g)の推移 3か月


ルテニウム(Ruthenium)上昇維持も急騰警戒
6月以降、目立った調整局面もなく上昇基調を維持。HDD分野を中心とする堅調な需要が相場の下支えとなり、8月後半には900ドルを突破。
流動性が低いため、騰勢が強まると売り渋りも強まり、需給逼迫感からさらなる急騰につながるとの思惑が投機筋の買いを促す可能性にも留意しておきたい。
JMルテニウム価格($/toz)と国内ルテニウム価格(\/g)の推移 3か月

(IRUNIVERSE/MIRUcom)