![BATTERY JAPAN:第19回[国際]二次電池展にみる蓄電池システム需要の急拡大 日本企業は世界市場で存在感を示せるか](https://object-storage.tyo1.conoha.io/v1/nc_43cea02301d24aa597687f11968981de/public/175448-1758499570.jpg)
2025年9月17~19日、幕張メッセにて第24回SMART ENERGY WEEKが開催され、「BATTERY JAPAN:第19回[国際]二次電池展」や「FUSION POWER WORLD:核融合発電ワールド」など多彩な展示が行われた。本稿では国内外の電池メーカーや自動車・研究機関が集結した「BATTERY JAPAN」に焦点を当て、国内企業の蓄電池システムに関する最新の取り組みを紹介する。
中国発WeLion電池、gf.Zが日本市場で本格展開

中国・北京に本社を置くWeLion(Beijing WeLion New Energy Technology)は、半固体電池や全固体電池の研究開発を強みとしている。同社は電気自動車や蓄電用途、軽量ビークル向けの高性能セルを開発・量産しており、中国科学院との関係を背景に、材料からセル、システムまで一貫した研究開発体制を構築している。
また、中国・上海に本社を置く電気自動車メーカーであるNIOとの協業では、エネルギー密度360Wh/kgを実現する150kWhの半固体電池パックを供給した実績を持つ。現在は北京や浙江省湖州、江蘇省などに生産拠点を展開し、セル製造からモジュール化、材料調達に至るまでサプライチェーンを拡充しつつ、次世代の全固体電池実用化に向けた取り組みを進めている。

gf.Z株式会社はWeLion製の電池を日本国内で販売する商社であり、2025年より日本市場へ本格展開している。EV向けだけでなくeバイクやドローン、系統用蓄電池といった幅広い用途で日本国内の認証を取得し、販路を拡大している。現在は新たに重機メーカー向けの実機実証実験も進めており、さらなる販路拡大を計画しているとのことだ。
gf.Z株式会社の担当者は「現在、電池産業は中国が圧倒的なシェアを誇っており、日本は世界的に見て遅れをとっている」と述べるとともに、現在は中華製電池を国内で販売しているものの、将来的には電池のセルから国内で製造・販売できる体制を整え、日本の電池産業を盛り上げていきたいと語った。
同社の代表取締役社長である長岡祐樹氏は、弊社MIRUが9月25日(木)に主催する「第12回 Battery Summit in TOKYO」で講演予定である。MIRUは今後とも、こうした展示会やセミナーを通じて国内外の関係構築や情報発信を進める方針だ。
TMEIC、インバータ技術を武器に蓄電池市場へ本格参入

産業用の電気機器やシステムを中心に事業を展開する株式会社TMEICは、大型モーターや発電機、インバータ技術に強みを持つ企業である。近年は再生可能エネルギーの普及に伴い、安定した電力供給を支える蓄電池市場が急速に拡大していることから、同社はインバータ技術を応用し、再エネ由来の余剰電力を効率的に貯蔵・活用できる蓄電池事業を推進している。
かつては野立てなど広大な土地に建設するメガソーラーが主流であったが、環境負荷や地域合意形成の難しさなどの課題が浮上しており、現在は工場屋根への太陽光パネル設置システムの納入が増加している。また、災害など非常用電源や需給調整用として、太陽光パネルを併設しない蓄電池単体システムの導入も増加している。
同社は蓄電池システムに関して、企画提案から設計・製造、立ち上げ・調整、さらには保守サービスまでを一貫して担う。既存のインバータパッケージを基盤に追加回路を組み込み、電池そのものは中国メーカーをはじめとする外部調達に依存している。ただし、担当者は「中華製品は蓄電池(メーカー)によって性能面は評価できるものの、安全基準や保証が不十分な場合もある。TMEICの名で提供する以上、一定基準を満たしたもののみを採用している」と語る。
一方で、急速な需要拡大により業界全体が逼迫しており、電力会社との「連系日」の調整が困難になっているという。コンテナ型設備は早期納入が可能だが、電池は自然放電による過放電や劣化があるため連系日に合わせて納入が求められ、納期管理は一層厳格化している。担当者は「一人で10件のプロジェクトを抱える状況であり、従来8カ月程度だった納期が現在では1年近くに延びている。それだけ市場が加熱している証拠だ」と現場の実情を明かした。

BATTERY JAPANでは系統用蓄電池向けシステムの展示が目立ち、業界の勢いを強く感じる場となった。先日マレーシア・コタキナバルで開催された「第9回鉛バッテリーリサイクル会議(9th International Secondary Lead & Battery Recycling Conference)」や「第21回アジアバッテリー会議・展示会(21st Asian Battery Conference and Exhibition)」においても、系統用蓄電池に対する世界的な需要の高まりが繰り返し強調されていた。こうした潮流の中で、日本企業は本事業において自社の技術力を武器にいかに競争優位を確立するかが問われている。
特に、再生可能エネルギーの導入拡大と電力需給の安定化は各国共通の課題であり、蓄電池はその解決に不可欠な存在である。日本企業にとっては、安全性や信頼性を強みに海外勢との差別化を図ることが可能であり、TMEICのように既存技術を応用しながら蓄電池市場に参入する動きはその一例といえる。今後は国内外で進む大規模案件や新興市場での展開を視野に、サプライチェーンの強化、人材育成、規制対応など総合的な戦略が不可欠となるだろう。
(IRUNIVERSE MidoriFushimi)