再利用と素材のニーズ
放電精密加工研究所のブースで最も大きな注目を集めていたのは、破砕機とそれに伴うリサイクルプログラムである。コーヒーの出涸らしなどから「炭酸塩」を生成し、これを様々な素材に混ぜ込む事によって擬似的に樹脂に近い性質を持たせているのだという。これにより通常では廃棄されるものに対し再利用価値を見出す事が可能となるとの事である。


更に驚くべき内容としては、廃プラスチックの循環リサイクルでゴミ袋を生産可能とした取り組みである。これは自治体の協力で行われる事業であるが、自治体で発生するプラスチックごみを回収し、これをプラスチック専用の小さめのゴミ袋として再生産。この袋はプラスチックごみのみを対象としているため、それ以外のものは回収対象とはできず、またこの袋はその回収に特化した仕様として生産されたものとなっている。実際のところゴミ袋のリサイクルと再生産に関するルールを見直す上で「プラスチック回収用途としては過剰な性能」である部分を見直し、プラスチックの循環処理に必要な要件を満たす性能とリサイクルのしやすさを備えた利便性の高い素材に落とし込んだのだという。とはいえ採算は度外視されており、いわゆる公共事業の一環として「それが当たり前になる価値観を定着させる」という点が現在最優先の目標となっているとのことだ。


そこから向かい合う様に展示されているのは木材を素材として使った自動車「ナノセルロース・ヴィークル(NCV)」を取り扱うブースだ。これはパーツの一部に一定割合のCNF(セルロースナノファイバー)を用いたパーツを搭載した車両であり、既に試験走行とデータ取りを行った後であるという。走行時に得られた様々なデータを活用しながら、頑丈なパーツから食べれる食品添加物として様々な利用法のあるセルロースナノファイバーの普及に務めていきたいと担当者は語っている。現状素材としての利用幅が非常に広いものであるため、提携先となる企業を探してより広く多様な製品にCNFを利用してもらう事が肝要であるという。実際に水上バイクのヒーターケースに軽量化素材としてCNFが用いられており、そういった方面で今後実装されるパーツが増える事が期待されている。

グローバリーテック株式会社では厚さ30μm(マイクロメートル)のガラスを展示。まるでフィルムの様な薄さでぐるぐるととぐろを巻く造形すら可能とするその柔軟性は流石の一言。聞けば折りたたみ式スマートフォン向けにこの製品がよく利用されているとの事で、いわば「先祖返り」が商機となっている珍しい製品だ。

素材メーカーとして名の通った三井化学が展開している材料は「エコニコール」という製品だ。これはひま(トウゴマ)を材料とした樹枝状材料であり、いわゆるポリウレタンの代わりとなる素材だ。石油由来の製品と比べ生産時にCO2を吸収することから、製品全体で見たCO2の消費量は石油製品と比べて50%の削減効果を持つ。またケミカルリサイクルで原料へと再加工する事も可能であり、リサイクル性も非常に良い。さらに非可食であるため、食料供給問題と競合しないというのも同製品の強みである。
こうしたいずれの素材についても、そのニーズを活かす先を探しているという点で共通項が生まれている。逆に言ってしまえば「コストの掛かるリサイクルや環境対応という要素を、誰がキャッチアップするのか」という問いに対する答えを社会が用意しなければならないのだ。いくら環境的に優れた製品であり経済性を度外視したとしても、使うための素地が無ければ何の意味もないのだと各ブースの担当者は嘆いていたのである。まずは利用するための経済基盤を整える事から、社会実装レベルで取り組まねばならない状況が待った無しで来ているといっても過言ではないだろう。
バッテリーのリサイクルに強力な援軍
現在リチウムイオンバッテリーのリサイクルについては遅々として進んでいない状況が続いている。メーカーごとに構造も材料もバラバラであるこれらバッテリーは、回収後に放電作業を行い分解し、分別を経て熱処理を行う事で処理が完了するようになっている。しかしバッテリーに残っているエネルギー量は千差万別、これに衝撃を加えて反応が促進してしまうと発火事故に繋がる。ゴミ回収車や処分場で発生するバッテリー発火の事故はだいたいが分別や放電の不徹底である。とはいえ消費者側からしても、一元的に処分できる方法があることが望ましいのは言うまでもない。


DOWAエコシステムはここに切り込んだシステムを構築している。まずどういったバッテリーでも熱処理を行う事で不活化させる事が出来るのである。これを可能にする専用の炉とバッテリーを加熱する容器を設計。小さなモバイルバッテリーから大型のBEV搭載のブレードバッテリーまで一括して処理出来、不活化した上で分別・分解に入る事で事故のリスクを大幅に低減する事が出来るのだという。処分の困難さ故に敬遠されているバッテリーのリサイクルに対して大きな一歩となるチャレンジといって良いだろう。担当者曰く、メインとしては車載のLiBをターゲットとしているとの事であり、今後2030年や2035年といったBEVの廃車発生の時期を見据えた技術である。今後の同社の取り組みに期待をしたいところだ。
(IRuniverse Ryuji Ichimura)