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不正ヤード対策やグリーンスチール政策の最前線―環境省や経産省が第6回CEシンポ登壇

2025/11/26 21:30
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不正ヤード対策やグリーンスチール政策の最前線―環境省や経産省が第6回CEシンポ登壇

杉本課長

 

IRuniverse主催で25日に名古屋市で開催された「第6回サーキュラーエコノミーシンポジウム」には企業だけでなく、行政関係者も登壇した。環境省は不適正ヤード問題と使用済みリチウム蓄電池、経済産業省はグリーンスチールをテーマに最新の政策動向を発信した。

 

環境省からは環境再生・資源循環局廃棄物適正処理推進課の杉本留三課長が登壇し、全国で問題化している不適正ヤードへの対策や、使用済みリチウムイオン電池による火災事故の増加を踏まえた制度見直しの方向性を示した。

 

環境省が実施した調査によれば、不適切ヤードに対する現行制度について、約84%の自治体が「不⼗分な点があると感じている」と回答。条例を設ける自治体もある一方、規制のない地域へ事業者が移転する「規制逃れ」が続き、全国的な制度整備が求められている。

 

2017年には有害使⽤済機器保管等届出制度が創設され、対象機器の保管⼜は処分を⾏う場合に届出が義務付けられたが、家電リサイクル法や小型家電リサイクル法の対象に限られるため網羅性に欠けると杉本氏は指摘していた。

 

そのような中で、環境省は現在、規制対象物品の拡大・包括のほか、ヤードへの許可制導入や罰則強化、物品特性に応じた処理基準の設定などの対策を審議会で検討しているという。杉本課長は条例に依存せず、全国一律の仕組みが必要だとする意見が多いと報告したうえで、その方向性でも議論を重ねていることを明かした。

 

講演後半では、使用済みリチウムイオン電池による火災事故の増加に触れた。ごみ収集車や破砕施設での発火事例は年々増えており、モバイルバッテリーや加熱式タバコ、コードレス掃除機など日常製品の誤廃棄が一因だという。一方、自治体の回収体制は広がりつつあるようだ。2023年度には市区町村の75%が回収を実施しており、環境省としてもJリーグや民間企業と連携した広報キャンペーンも開始している。

 

さらには、資源循環体制の整備として、使用済み電池のリサイクル事業を支援。自動車リサイクル法や小型家電リサイクル法の見直しも進め、EV車載電池や電池入り小型家電の扱いを整理していく考えを示した。

 

杉本課長は最後に、政府がサーキュラーエコノミーを国家戦略として推進する中で、「不適正処理が一部でも残れば、健全な循環経済の構築を阻害しかねない」と述べた。

 

 

経産省、環境価値をどう訴求するかが鍵

 

経済産業省製造産業局金属課の大下慶総括補佐氏金は、鉄鋼業の脱炭素化を進める「グリーンスチール(グリーン鉄)」の普及に向けた政府の施策と課題について講演した。

 

大下氏

 

同氏は、鉄鋼業がCO₂大規模排出産業であり、カーボンニュートラル達成に向けては「排出削減は喫緊の課題」と指摘。2030年度までに鉄鋼業界として13年度比で30%減を目指していると説明した。

 

政府は今年、「GX2040ビジョン」を策定しており、水素還元製鉄や直接還元製鉄など革新的技術の研究開発・実装を加速する方針を示し、設備投資や研究開発への支援を拡充している。昨年からは大規模電炉(革新電炉)への転換支援を推進。日本製鉄やJFEスチールなどのプロジェクトが採択された。

 

一方、グリーンスチールは従来品と機能が変わらないにもかかわらず、生産コストが上昇することが大きな課題とされる。大下氏は「環境価値を需要家にどう訴求するかが市場形成の鍵」と強調。CO₂削減量を製品に割り当てるマスバランス方式やCFP(カーボンフットプリント)活用による価値の可視化を進めていると説明した。

 

政府は今年度から、自動車分野でのグリーン鉄活用への補助、グリーン購入法での評価基準追加など需要側支援を開始。併せて、スクラップの高品質化や成分管理の取り組みを強化し、供給側の競争力維持にも取り組む方針だ。

 

講演の質疑では、電炉製品の自動車用鋼材への適用可能性が問われた。大下氏は「現在、自動車部品に使用されている電磁鋼板は高炉で製造されたものだが、革新電炉によって同等のクオリティのものが製造可能になる」と回答した。

 

(IRuniverse K.Kuribara)

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