近年議論が深まっている深海採掘に関連する研究報告として、最新の論文「Impacts of an industrial deep-sea mining trial on macrofaunal biodiversity(産業規模の深海採掘試験が大型動物相の生物多様性に与える影響)」が、ネイチャーの関連誌である『ネイチャー・エコロジー&エボリューション』誌(Nature Ecology & Evolution)の12月5日号に掲載された。
これは、2022年にThe Metals Company(TMC)の完全子会社であるNauru Ocean Resources(NORI)がAllSeas社と共同で実施し3,000トンの多金属団塊(polymetallic nodules)を回収した、東太平洋海淵平原の水深4,280メートル地点での商業用深海採掘機の大規模試験を、英ロンドン自然史博物館、スウェーデンのヨーテボリ大学、英国の国立海洋学センターの科学者らが追跡し、この試験採掘の2年前から採掘後2か月間の動物相の個体数と生物多様性の時空間的変動を調査したもので、これまでで最大規模の種レベル大型底生生物データセットを用いた調査となった。本記事は、ネイチャー誌の要旨および自然史博物館のWebサイトに掲載されている報告から、この研究を簡単に紹介するものである。
まず結論からいえば、同調査からは、“採掘軌跡内では大型動物相密度(生物の数)が37パーセント減少し、種多様性も32パーセント低下、さらにコミュニティ多変量分散は大幅に増加した”との結果が得られたという。ここでいう大型動物相とは、肉眼で確認可能な生物(0.3mm~2cm)を指すとのことで、例としては多毛類、甲殻類、巻貝、二枚貝などが挙げられている。ただし、採掘機による堆積物プルームが覆った区域では、動物の個体数に影響は認められなかったとのことで、さらに、生物多様性に関しては、プルームの影響を受けた区域では特定の動物の優占度が増加したという。
同研究を解説しているマイニング・ドット・コム紙の記事(12月11日)は、“(調査対象の)大半が堆積物に生息する大型動物であったことから、深海鉱業が他の海洋生物に与える影響は未知数だが、それでもなお、本研究の結果は、(深海鉱業が)生態系に甚大な撹乱が生じる可能性を示唆している”といった見解を示している。
なお、同論文の要旨によれば、団塊採掘は現在、いくつかある深海鉱物採掘の種類の中で新興の深海採掘産業から最も注目を集めており、その取り組みは中央太平洋のクラリオン・クリッパートン海域(CCZ)に集中しているとのこと。CCZには、ニッケル・コバルト・銅を豊富に含む多金属団塊が210億トン以上埋蔵されていると推定されている。
自然史博物館の深海科学者でこの論文の筆頭著者でもあるAdrian Glover博士は、「14名の著者および複数機関による大規模なチームとしての努力のおかげで、これらの新たなデータと解釈は、種レベルの影響に関する実際の定量データを提供し、深海採掘に関する現在の政策議論に活用されうるものです」と語っている。
~関連記事~
(IRUNIVERSE A.C.)