MIRUが定期的に取材している仏解体大手INDRAは、ルノーの子会社で自動車のサーキュラーエコノミーに特化した業界初の企業The Future is Neutral傘下で、自動車リサイクル部門の中核を担う。 IARCでは、最近INDRAのCEO(最高経営責任社)に就任したXavier Kaufman氏が、The Futur is NeutralにおけるINDRAの役割とその事業戦略についてトークを行った。そのなかでKaufman氏は、欧州における使用済み自動車(ELV)のサーキュラーエコノミーの推進が進む中、自動車メーカーと解体業者の力関係が変化しつつあり、同時に相互依存性が高まっているという現実について触れた。
圧力にさらされる二つの「世界」
INDRA Automobile RecyclingのCEOであり、The Future Is Neutralにおける欧州の解体事業を統括するXavier Kaufman氏は、自らを自動車メーカー(OEM)の「世界」と解体業者の「世界」をつなぐ存在として位置付ける。現在欧州の 自動車OEM側では、規制が支配的な要素となり、ある大手メーカーではエンジニアの3分の1が主として規制対応に従事している。その結果、利幅への圧力が高まり、とりわけ新たなELV規則が複雑性を一段と押し上げている。 一方、多くが中小企業から成る解体業者側では、新規制に伴い、メーカーがリサイクルビジネスに近づくことで自らの領域が侵食され、独立性を失うのではないかという不安に加え、産業化や業界再編が進むことへの懸念が大きい。
連携を促す規制の役割
現行ELV指令のもとでは、市場が使用済み自動車車両をほぼ自律的に処理しており、同市場における自動車OEMの関与は非常に限定的であった。 使用済自動車の残存価値も十分で、部品と有価金属で利益が出ているとの認識から、OEMによる自動車リサイクルバリューチェーンにおける詳細な組織化は必須と見なされてこなかったのである。 そのため25年を経てもなお、多くの自動車メーカーは自社のELVを誰がどのような過程で処理し、そこから回収された部品や材料のトレーサビリティがどうなっているのかを十分に把握していない。
新ELV規則とその下で強化される拡大生産者責任(EPR)の枠組みは、このロジックを一変させるもので、自動車OEMに対し解体バリューチェーン全体について性能・再生材含有率・データを実証することが義務付けられる。
2024年からEPR強化のもと自動車の生産者責任組織(PRO)を設立したフランスの経験は、自動車業界全体の不安および現実の両方を反映するものとなっている。前述のように 多くの解体業者は、OEMが自動者リサイクルを全面的に支配し、部品や材料を独占し、さらには規制が現場の細部まで指示してくるのではないかと懸念していた。 しかし実際には、多くの自動車メーカーは解体オペレーションそのものを自ら運営する意欲も専門性も持たず、依然として高性能な認定処理施設(ATF)に引き続き依存している。部品と材料の所有権は解体業者側にとどまり、補修用部品の需要はむしろ急増しており、競争も維持されているという。
取り込みではなく「橋」をかける発想
Kaufman氏は、OEMと解体業者の隔たりを埋めるには、垂直統合ではなく、構造化された協働が必要だと主張し、その一具体例として、現在ポリーニ・グループとともにイタリアで進めているThe Future Is Neutralの戦略を挙げる。これは、すべてを一元化するのではなく、独立したATFをネットワークとして束ね、すべての自動車メーカーの規制上のニーズに応えられる体制を構築するというものである。 同氏は、標準化、データ基盤の共有、整合した工業プロセスを整えることで、中小の解体業者でも規模と可視性を獲得し、独立性を保ちつつ信頼できるパートナーとなることができると述べる。
OEMは、各国で数百に及ぶATFの性能とトレーサビリティをどう担保するか、コスト上昇を抑えつつ再生材使用義務をどう達成するか、長期的に部品・材料・バッテリーの処理能力をどう確保するかなど多数の取り組み課題に直面している。こうしたネットワークはOEMにとって、これらの取り組み課題への大きな解決策であるとKaufman氏は言う。 一方、解体業者にとっては、オペレーションを工業化し、リユース可能な部品を最大化し、材料回収を高度化することが収益性を高め、自らを単なる廃棄物処理業者ではなく、サプライチェーンに不可欠なプレーヤーとして位置付けることにつながると同氏は強調する。
情報とインフラ共有の重要性
またKaufman氏は、「情報共有」の重要性も主張する。 フランス国内のPRO設置をめぐっては、ステークホルダー間の対話が早期から始まっていなかったため、導入から2年以上が経過した現在でも多くの実務条件がまだ協議されている状態だという。 この反省からKaufman氏は、公的機関が細部まで定めるのを待つのではなく、民間プレーヤー同士が早い段階から調整を進めことも重要だと述べる。
新規制に伴いATFセクターの再編は不可避と見られているが、その形は選択の問題であると同氏は説明する。 各解体業者が新要件に個別に対応するという選択をすれば、コスト負担に耐えられない事業者は市場から退出せざる得なくなり、その一部は違法セクターに流入するという可能性もある。 もう一つは、Kaufman氏が主張するアプローチでもある解体業者が連携し、コスト・デジタルインフラ・標準化を共有しつつ、柔軟性と独立性を保ちながらOEMに必要な「性能」を提供するネットワークを構築するというものである。
アーカイブ/Archive:2026年国際自動車リサイクル会議/International Automotive Recycling Congress (IARC) 2026