日本工作機械工業会が発表した2026年3月の受注速報によると、受注総額は1935億円(同月比28.1%増)と単月での過去最高額を更新した 。外需が1430億円と過去最大を記録し全体を牽引し、内需も回復傾向にある。20205年度は12.9%増の1兆7047億円で史上3位の額、2026年度は内外の半導体・AI向けの拡大に加え、予算規模3000億円の「省力化補助金」による中小企業の設備更新特需が、内需拡大の強力な追い風に。2017年度の1兆7803億円の過去最高額更新も視野に 入る。
3月受注28.1%増1935億円と、2018年3月の1826.8億円を抜き単月で過去最高額更新
4/9の15時に日本工作機械工業会の2026年3月受注速報が開示された。3月受注は1935.06億円(同月比28.1%増、前月比31.9%増)と9カ月連続同月比増加、また3か月連続で20%超の伸びとなった。2018年3月の1826.80億円を抜き、単月として過去最高額更新となった。

内訳は外需が1430.01億円(同月比40.4%増、前月比30.5%増)と18カ月連続同月比増加となった。6ヶ月連続で1000億円を突破、2025年12月の1187.39億円を大きく上回り月間過去最大額更新となった。中国でのNC工作機械振興策の継続、半導体やデータセンタ関連投資が牽引している模様。欧米では航空宇宙、エネルギー関連、防衛関連などが牽引しているとみられる。なお欧米、アジアでは為替の円安により高性能の日本の工作機械に対する割安感も寄与しているとみられる。
内需は505.05億円(同月比2.5%増、前月比35.9%増)と3ヶ月連続同月比増となった。年度末でもあり前月比大幅増で、25年度中では9月の436.45億円を抜いて年度内の月間最高額となった。また500億円超えは22年9月の524.19億円以来の数字となっているが、ピーク時の18年3月755.27億円と比較すると未だ2/3水準でしかなく、外需が過去最高額更新となったのとは対照的である。
2025年度受注額は前年度比12.9%増1兆7047億円、年度として過去3番目の受注金額に
2025年度の工作機械受注額は1兆7047億円(前年度比12.9%増)となった。金額としては2017年度の1兆7803億円、2022年度の1兆7056億円に次ぐ、過去3番目の受注総額となっている。

内訳は外需が1兆2586億円(前年度比12.9%増)となり、2022年度の1兆1240億円を抜き過去最大の受注を記録、初めての1兆2000億円乗せとなった。また外需比率が73.8%と前年度比3.2ポイント高まり、円安寄与もあるとみられるが、過去最高の外需比率となっている。

内需は4461億円(前年度比0.4%増)と3年度ぶりに僅かではあるが増加に転じたが、増額として3年連続で4000億円台にとどまり、ピークである2018年度の7034億円に対しては63%水準でしかなく、直近の26年3月の18年3月対比66%とほとんど同じような数字となっている。この要因としては最大需要家の自動車産業が2025年度の国内自動車登録台数が284万台(3.5%減)、軽自動車販売を足しても453万台(0.9%減)と2021年度以来の減少を余儀なくされていることが挙げられる。また自動車生産においても前年度横ばいの840万台程度となったとみられ、一般機械向けを含め、関連業界を含めた影響が大きかったとみられる。

2026年度は外需不透明で伸び悩み、内需は省エネ補助金などの寄与などで拡大予想
26年度について、工業会では年度予想を公表していない。ただし2026年暦年予想では全体で1兆7000億円(前年比6.0%増)、この内で外需が1兆2400億円(6.6%増)で、内需4600億円(4.5%増)と予想としている。
現状、2026年3月受注が単月過去最高を更新したものの、外需については先端半導体、データセンタ設備増強に伴う大型設備投資、加えて防衛・宇宙産業への設備投資などが期待される一方で、自動車関連は中東問題、米中摩擦、EV見直しなどで設備投資の伸び悩みが懸念される。加えて中国のNC化向上の補助政策特需も一服するとみられる。また為替についても不透明であり、全体として工業会が想定している暦年絶対金額を多少上回り、年度としては横ばいの1兆2600億円程度に落ち着くとみられる。
一方、内需については、中小企業省力化投資補助事業」(省力化補助金)特需、高市政権の国内製造業強化策に伴い、半導体産業、造船業、データセンタを中心としたAI関連投資などが牽引するとみられ、年度として5200億円(17%増)程度まで拡大が期待される。
全体として2026年度の工作機械受注額は1兆7800億円(4.4%増)程度、2017年度の1兆7800億円に並ぶ受注金額が期待されよう。
総額3000億円規模の中小企業省力化投資補助事業」(省力化補助金)特需に期待高まる
中小企業省力化投資補助事業」(省力化補助金)は人手不足に悩む中小企業等の省力化投資を後押しし、付加価値額・生産性向上と賃上げにつなげることを目的としている。人手不足に悩む中小企業等がIOT・ロボット等のデジタル技術を活用した設備を導入するための経費の一部を補助し、省力化投資を促進する制度。制度は2類型に分かれている。カタログ注文型 — 事務局が公開する「製品カタログ」に登録された省力化製品を選んで導入する方式で、販売事業者と共同で申請する。申請手続きが簡便で、事業計画書もA4・1ページ程度の簡易なもので済み、「採択=交付決定」となるため迅速に事業を開始できる。一般型はカタログに登録されていない省力化設備やオーダーメイドの設備・システム等の導入に活用できる点が最大の特徴。業務プロセスの自動化・高度化やロボット生産プロセスの改善、DX等、個別の現場に合わせた多様な省力化投資を促進する事業として位置づけられる。
現行の中小企業省力化投資補助事業の事業規模は令和6年度補正予算で3,000億円が計上されており、中小企業向け補助金としては大規模な予算規模となっている。一般型の補助上限額(従業員数別)は5人以下:750万円(賃上げ特例で1,000万円)、6~20人:1,500万円(同2,000万円)、21~50人:3,000万円(同4,000万円)、51~100人:5,000万円(同6,500万円)、101人以上:8,000万円(同1億円)。補助率は、中小企業が1/2、小規模企業者・再生事業者が2/3。最低賃金引上げ特例として、一定の条件を満たす場合は中小企業でも補助率が2/3に引き上げられる。カタログ注文型 も補助率1/2で、従業員数に応じた上限額が設定されており、2026年3月19日以降の制度改定で小規模事業者の上限が大幅に拡充され、「1,500万円超は補助率1/3」という区分も撤廃された。
最新の申請期間は、一般型 第6回公募: 公募開始が2026年3月13日、申請受付開始は2026年4月中旬、申請締切2026年5月中旬。申請ポータルでの受付開始が2026年4月15日(水)10:00開始となっている。カタログ注文型は随時受付で、申請から1~2ヶ月で採択結果が通知される仕組み。製造業向けとして、3Dプリンタ、アーク溶接ロボット、ローダ付きNC旋盤、多軸自動旋盤、5軸制御マシニングセンタ、複合加工機、自動ワーク交換装置付きマシニングセンタ、プレスブレーキ用金型自動交換装置、協働ロボットシステム(研磨・溶接用)、無人フォークリフト(AGF)、物流用ドローン など、工作機械やFA機器のカテゴリが掲載されている。
実際、工作機械工業会では、審査担当工業会として、製品カテゴリの登録・審査を行っている。現在登録済みのカテゴリは、5軸制御マシニングセンタ、複合加工機、ツールプリセッタ、NC細穴放電加工機、ワイヤ自動供給付ワイヤ放電加工機、CNC複合研削盤、4軸制御マシニングセンタ、マルチタレット型複合加工機、機上計測装置付平面研削盤、全自動CNC工具研削盤、キー溝加工機、ローダ付きNC旋盤、鏡面仕上げ加工機、電極自動交換装置付き形彫放電加工機、多軸自動旋盤、カメラ位置決め機能付き板金レーザ加工機、自動ワーク交換装置付3軸マシニングセンタ、パレットチェンジャー付3軸マシニングセンタ、工作機械用自動ワーク交換装置を登録している。工作機械は省力化補助金のカタログ登録が最も充実しており、中小製造業の設備更新需要の「入口」として補助金制度を活用できるため、受注への波及が最も広範囲に及ぶ可能性がある。
ちなみに日本国内の工作機械総設置台数は現在70~80万台が設置されていると推計される。この内、30~40%が保有経過年数15年以上と仮定され、今回の省力化補助金対象として20~30万台が該当することになる。経済産業省の生産動態調査によると、2025年の工作機械総生産台数が53397台(前年比5.8%増)、この内、国内需要が年間で17000~18000台あるとみられる。今回、2台の15年以上のビンテージ工作機械を1台のNC工作機械で置き換える施策を想定した場合、10~15万台の潜在代替需要が発生する。これは内需の8年分に相当し、20%買換えが進むとすると、内需総台数の1.2から1.5年分の上振れ要因となる。そうした場合、年間で1000億円程度内需が膨らむが、今回スタートの内需で2026年度は3四半期分の750億円程度の上乗せがあると推計した。具体的にカタログ注文型では、補助上限が最大1,500万円(賃上げ特例)であるため、中小の切削加工業者が導入しやすい価格帯の機種、ローダ付きNC旋盤(単価1,000~3,000万円程度)や小型のマシニングセンタ(同1,000~2,500万円程度)が主な対象となろう。一方、一般型では最大1億円まで補助が出るため、5軸MC+パレットプール+ロボットの自動化システムのような大型案件も射程に入る。実際の採択事例では、NC複合加工機、CNC旋盤、CNCマシニングセンタ、CNC円筒研削盤、5軸制御マシニングセンタ、CNC自動旋盤など、工作機械関連の採択が製造業で最も多い分野となっている。このため、工作機械各社とも、内需の特需の恩恵を受けることとなろう。
なお、省エネ補助金は次年度にも継続募集されるため、27年度はフルに寄与が見込まれ、年間1000億円程度の内需を下支えすることとなろう。
(図は日本工作機械工業会からIRユニバース加工)
(IRuniverse Okamoto)