AI需要で増大するデータセンターに向け、商船三井、日立製作所、日立システムズは、“中古船を改造した浮体式データセンター(Floating Data Center: FDC)”の開発・運用・商用化に向けた基本合意書(MOU」)を3月10日に締結した。
2027年以降の稼働開始
本合意に基づき、3社は、日立グループにて既に陸上データセンターの運用実績を有する日本、陸上データセンター関連サービス提供の実績をもつマレーシアや米国を中心に、2027年以降の稼働開始を見据え、FDCの需要検証、基本仕様、運用手順の検討や事業化に向けた検証を行う。
近年、生成AIの急速な普及に伴いデータセンター需要は拡大を続けており、立地や電力・冷却に使用する水資源の確保、周辺インフラ、災害リスク等を踏まえた多様な供給形態が求められている。
3社は、大規模な用地確保が不要で、短工期かつ移設可能、さらに既存船体の再利用により環境負荷とコストを抑えられる“中古船を改造したFDC”という選択肢について、各社の実績や知見、ノウハウを活かして商用化に向け検証する。
都市圏周辺での大規模な土地の確保および土地の取得費用が不要
大都市近郊ではデータセンター向けの大規模用地を確保することが難しくなっている。また、インフラ(電力・冷却用水・環境規制・住民合意等)が追いつかずデータセンター新規建設の停止が提案されている都市もある。港湾や河川を利用するFDCは、こうした地域でも展開できる可能性がある新しいソリューションだ。
建設期間の短縮
FDCの改造工事は1年程度で、従来の陸上建屋型データセンター開発と比較して開発期間を最大3年短縮できる見込み。
海水・河川を活用した水冷式の冷却システムの導入
データセンターは大量の電力を消費し発熱量も大きいことから冷却システムを要する。データセンター市場においては、従来の空冷式ではAI向けの高性能サーバを冷却しきれず水冷式へとシフトしつつあるが、水冷式の場合は大量の水が必要となるため、米国では「生活用水が不足するのでは」といった懸念から住民との対立が起きている地域もある。FDCは、浮体式であることから効率よく海水や河川の水を冷却システムに活用でき、それにより、サーバの冷却にかかる電力消費と運用コストも削減できる。
移設可能と初期投資の削減
FDCは浮体式のため、需要の変化に応じて稼働場所を変更することが可能。既存船体を活用することによって、建設にかかるコストを削減できるほか、既存の船内システム(空調、取水、発電機など)を活用することで、初期投資のコスト削減が見込まれる。
世界の趨勢:コロケーション
現代のデータセンターの運用には、サーバー、ストレージ、ネットワークシステム、信頼性の高い電源供給、高度な冷却技術、そして高度な管理ソフトウェアを組み合わせた複雑なインフラが必要になる。
ロブ・ロイ(Rob Roy) によって2000年に始まった米国Switch社 https://www.switch.com/ は、現在全米5か所で大規模データセンター「Citadel Campus」を建設中、またインドのナビムンバイ(Navi Mumbai))に位置するYotta NM1 https://colocation.yotta.com/data-center/nm1-datacenter-mumbai-region-maharashtra/
など、世界最大規模のデータセンターは数十万平方メートルに及び、運用には膨大なリソースを必要とし、冷却のために年間数百メガワットの電力と数千万リットルの水を消費する。そのため、将来のデータセンターを構築・維持するための戦略的な計画と継続的なイノベーションが強く求められており、そのサービスを彼らは業界を問わず選ばれる「コロケーション:colocation」データセンターと呼んでいる。
コロケーションとは、自社所有のサーバーや通信機器を、設備の整った第三者運営のデータセンターに設置するサービスを指す。これにより、自社内にサーバールームを設置する必要がなく、電力供給、空調、セキュリティなどのインフラを共有できるため、運用コストや設備投資を削減できるということだ。
(IRuniverse H.Nagai)
世界の港湾管理者(ポートオーソリティ)の団体で38年間勤務し、世界の海運、港湾を含む物流の事例を長年研究する。仕事で訪れた世界の港湾都市は数知れず、ほぼ主だった大陸と国々をカバー。現在はフリーな立場で世界の海運・港湾を新たな視点から学び直している。