4月中旬より、再生樹脂およびバージン原料の市場価格が劇的な跳ね上がりを見せている。この急騰の引き金となったのは、中東の地政学リスクに端を発する「ホルムズ・ショック」だ。現在、市場にはトレーダーの投機的な動きも入り乱れており、価格設定にはばらつきも見受けられる。とはいえ、市場の基本トレンドは明確に上を向いており、米国とイランの緊張状態が長期化する限り、プラスチック市場全体が強含みで推移することは避けられない情勢となっている。
■ 中国国内バージン樹脂市場:原油価格に翻弄される激しいボラティリティ
最近の中国国内プラスチック市場は、極めて激しいボラティリティに直面している。市場の方向性は原油価格に強く相関しており、中東における停戦交渉や紛争激化の報道に振らされ、1日で10%〜20%の乱高下を記録する場面も見られる。市場心理は「外交的解決への期待」と「ホルムズ海峡のサプライチェーン寸断リスク」の間で揺れ動いており、トレーダーはリスク非対称性を警戒し、極めて慎重な姿勢を崩していない。
■ 主要樹脂の個別市況インサイト(4/17終値ベース)
ABS(10,700 RMB/mt): スチレンのコストサポートはあるものの実需は平年並み。「上がれば買い、下がれば見送り」の弱気なセンチメントが支配的で、価格は下落傾向。
PS(9,120 RMB/mt): 弱含みの保ち合い。スチレン上昇の恩恵を受けきれず、売り手は在庫消化のために小幅値引きを実施。実需(剛需)主導の市場。
PE(8,850 RMB/mt): 地政学リスクへの過度な警戒感が後退したことで下落。上流メーカーの高在庫によるデストック(在庫調整)が、HDPE・LDPE全体の相場を押し下げている。
PP(9,500 RMB/mt): 原料高が下流メーカーの利益を圧迫し、購買意欲が減退。現物市場は軟調で、50〜100 RMB/mtの値引き交渉が散見される。
PMMA(17,650 RMB/mt): 自動車や光学セクターからの需要支援が乏しく軟化。原油相場の明確な方向性待ちによる薄商い。
PC(13,500 RMB/mt): 弱含みの保ち合い。主要プラントの定修効果は織り込み済みで、下流は大型成約を手控えている。
PA66(23,250 RMB/mt): 高値圏を維持するも成約は低調。産業向け需要は横ばいだが、供給面のタイト感が価格を下支え。
PA6(14,100 RMB/mt): 下流需要の低迷により逆ザヤが発生。在庫処分を急ぐ動きから相場観が混乱し、見通しは不安定。
POM(10,800 RMB/mt): 高値への抵抗感から下方修正。供給は安定しているが、現在は在庫消化のフェーズ。
PET(ボトル用・9,000 RMB/mt): イランの封鎖懸念や原料高で週初に急騰したものの、買い手の「高値追っかけ疲れ」が顕在化し、取引は減速。
PVC(5,020 RMB/mt): 華東などで底打ち反発(+約80 RMB/mt)。エチレン法の減産や輸入オファー高が下支え要因だが、国内供給は依然潤沢。
■ 今後の展望:波及するエネルギーコストとサプライチェーンの危機
直近の商船攻撃報道を受け、市場は再び原油価格の急軌道に連動する見通しです。大幅な価格上昇リスクが内包されているため、買い手の市場参入意欲は削がれています。エネルギーコストの高騰は物流費に直結し、さらにホルムズ海峡の封鎖リスクは、石油のみならず化学品サプライチェーン全体への脅威として世界的に懸念されています。
■ 再生樹脂(RPC)市場:バージン高騰によるマテリアル・ミックスの転換
バージン樹脂の急騰を受け、多くのメーカーが利益確保のために再生ペレット(特に生産柔軟性の高いナチュラル材)への回帰を進めています。
エンジニアリングプラスチック(PC, PMMA, PA66): ナチュラル再生ペレットの需要が急増。バージン材が30%以上急騰する中、RPCの上げ幅は限定的であり、ハイエンド製造業にとって強力なコスト削減手段となっている。
ABSおよびPS: 家電製品の需要期に突入し、大手ブランドからの発注が再開。しかし、物流・海上運賃の高騰がリサイクラーの利益を圧迫している。
PEおよびPP: 日用品・パッケージ用途のサプライチェーンに定着しており、原油乱高下の中でも安定した需要とパフォーマンスを維持。
PET: 欧米を中心としたサステナビリティ(PCR使用目標)の潮流が牽引し、底堅い需要が継続。
POMおよびPVC: バージン材との価格差が切り替えを正当化する水準に至っておらず、需要は低迷。
供給のタイムラグ(構造的課題):
再生ペレットの供給は極めてタイトです。回収・選別・加工という物理的プロセスに加え、米国等からの輸入には60日以上を要するため、急激なバージン高や需要増に即座に応えられない構造となっています。
■ プラスチックスクラップ市場:物流費高騰と激しい原料争奪戦
世界的なスクラップ市場は、物流費とエネルギーコストの急騰による強い圧力下にあります。米国内のトラック運賃はガソリン高を反映して40%上昇し、海上運賃も30〜40%上昇、これらがリサイクラーの調達コストを直撃しています。
農業用フィルム: 回収率50%超の高品質材は、輸出よりも高値をつける米国内リサイクラー向けに回帰。輸出先としては、規制の厳しいマレーシアを避け、最終市場が安定しているベトナムへの流入が継続。
工業用スクラップ: クリーンな工業系原料の供給は極度に逼迫。米国内バイヤーと、自国製造業を支えたいアジア勢(インド、マレーシア、ベトナム、台湾)との間で激しい争奪戦となっており、グローバル規模での調達コスト高止まりの要因となっている。
【現場ヒアリング】東南アジア・国内の再生プラスチック(RPC)最新動向
(※市場関係者へのインタビューに基づく実態レポート)
■ 全体概況:4月中旬より市況が急変、東南アジアで顕著なタマ不足
4月中旬の中東情勢(イラン情勢等)の緊迫化を契機として、樹脂市場全体が急激な上昇局面に入っている。特に東南アジア市場では深刻な供給不足(ショート)が発生している。中国メーカーが今後の値上がりを見越して売り惜しみ(出荷控え)を行っていることも拍車をかけており、「高い値段を出してもモノがない」状況に陥っている。
足元ではバージン材(新材)の価格急騰が目立っているが、この高値圏が継続すれば、今後はコスト削減を目的とした再生材へのシフトが本格化すると予想され、再生樹脂(RPC)全般にわたって強含みの展開が続いている。
■ 樹脂別・詳細動向
PC(ポリカーボネート):極度の品薄状態により価格急騰
価格動向: 先週までの2,200〜2,300ドル近辺から急激に上昇し、足元では2,800〜2,900ドル/トン(CDグレード含む)での取引・オファーが見られる。
市場背景: 価格上昇の要因は極端なペレット不足。売り手側が出し渋っていることもあり、東南アジアでは原料の確保自体が困難になりつつある。

PP(ポリプロピレン):バージン材との価格差拡大、今後の需要増に含み
価格動向: バージン材が1,300〜1,600ドル/トンまで上昇しているのに対し、再生PP(ライトグレーおよびブラック)は約760〜850ドル/トンと、比較的緩やかな上昇に留まっている。
市場背景: バージン材側にまだ一定の供給量があること、またユーザーが再生材へ切り替えるにはテスト等のリードタイムが必要なため、即座の需要急増には至っていない。しかし、日本国内でもメーカーのショートによる値上げの動きが出始めており、バージン高が継続すれば、コスト対応として再生材への移行が進み、遅行して価格が上昇する可能性が高い。
ABS:バージン材の暴騰により、再生材の割安感が際立つ
価格動向: バージン材が1,500ドルから2,200〜2,400ドル/トンへと暴騰している。一方、再生ABS(ライトグレー、ブラック共に)は1,400〜1,500ドル/トン(前回比+100ドル程度)で推移している。
市場背景: ライトグレーがやや高値で取引される傾向はあるものの、需要家の緊急度(今日すぐに欲しいか等)によって価格はまちまちとなっている。特筆すべきはバージン材との圧倒的な価格差(スプレッド)であり、この価格差がユーザーの再生ABSへの切り替え意欲を強く刺激し始めている。
■ インタビューからの結論:バージン材の高止まりが再生材シフトを牽引
足元では、国内大手化学メーカー(東ソーなど)のポリエチレン(バージン材)が180円/kgから一気に100円幅の大幅値上げを打ち出すなど、極めて強いコストプッシュが起きている。
バージン材の価格が一度上がれば簡単には下がらないとみられ、ユーザー企業は製品の製造コストを抑えるために、早晩、再生材のテストと採用を急ぐことになろう。現在はバージン材と再生材の間に大きな価格差が開いている「踊り場」の状況だが、タイムラグを経て再生材への実需が急増し、市況全体が一段高となる公算が大きい。当面は強含みの相場展開が続くと予想される。
(IRUNIVERSE YT)