経済産業省の特殊関税調査室によると、中国および台湾産のニッケル系ステンレス冷延鋼板に対する不当廉売(アンチダンピング=AD)調査について、間もなく仮決定を発表する見通しだという。具体的な税率については18日午前時点では明らかになっていない。ステンレス輸入鋼材のAD関税については調査開始から約1年かかったが、いよいよ大詰めを迎えている。
国内産業の損害訴え、25年5月に提訴
本件は、日本製鉄、日本冶金工業、ナス鋼帯、日本金属の国内主要ステンレスメーカー4社が、2025年5月に財務大臣宛てにAD関税の課税を申請したことに端を発する。
ステンレス鋼材国内市場近況2025#34 AD調査で増える中国以外からの輸入
輸入ステンレス鋼材へのAD関税は実施されるのか?かけるべきは鋼材なのか?加工品なのか?
国内におけるニッケル系ステンレス冷延鋼板の輸入量は、2015年の約9.3万トンから、2024年には20.5万トン超へと倍増。増えたのは主として中国品だが、多いのはいまも韓国品。今回の調査では韓国は対象外、となっていることへの違和感は上の関連記事中でも述べている。
ステンレス鋼材国内市場近況2025 #43 2025年暦年ステンレス鋼生産・輸入・輸出
申請段階における不当廉売差額(ダンピングマージン)は、中国材が20〜50%、台湾材が3〜20%とされている。
税率決定と発動へのタイムライン
仮決定でクロ判定が出た後の一般的な流れは以下の通り。
調査の継続と意見聴取: 利害関係者(海外の供給業者、国内の輸入業者・需要家など)からさらなる証拠提出や意見表明の機会を設ける。
暫定措置の決定: 仮決定から追って(過去の事例では約1ヶ月後など)、具体的な暫定税率が決定・発動される。
最終決定: 暫定措置発動後、さらに数ヶ月に及ぶ調査延長を経て、最終的なAD関税の成否および正式な税率が確定する。
抜け道への懸念:AD関税効果は「限定的」との見方も
しかしながら、これまでも述べてきたように、中国、台湾にAD関税が課されても、すでに二か国以外からの輸入(ベトナム、インドネシア、マレーシア、インドなど)が増えてきている現状であるため、そのAD関税効果は限定的と思われるとの見方もある。特定国への課税強化が、結果として他国からの代替輸入を加速させる「モグラ叩き」のような状態を招くリスクは否定できず、実効性のある国内産業保護につながるかは不透明な情勢。
鉄鋼業界における歴史的転換点
日本政府によるAD関税の発動は、2025年に中国製黒鉛電極に対して下された事例があるが、鉄鋼一次製品におけるAD関税の適用となれば日本の通商史上「初」となる。