中国国家発展改革委員会と国家エネルギー局は2026年6月、「新型エネルギーシステム構築第15次五カ年計画」を正式に公布した。2030年までにクリーンで低炭素・安全・高効率な新型エネルギーシステムを構築することを目標に掲げ、風力・太陽光の発電設備容量比率を50%超、非化石エネルギーの発電量比率を50%に引き上げるとしている。総発電設備容量は現在の38.9億kWから54億kWへの拡大を目指す。
再生可能エネルギーの大規模拡張
供給面では、内モンゴルや新疆などの砂漠・荒野地帯に大規模な風力・太陽光基地を建設するほか、西南部での水力・風力・太陽光の一体化基地開発、沿海部での洋上風力拡大を推進する。西部から東部への送電能力は8000万kW以上増強する計画だ。電力の変動を吸収するため、2030年までに新型蓄電池の設備容量3億kW、揚水発電1.6億kWの整備を求めており、スマートグリッドや仮想発電所の構築も加速する。
EVと産業電化が新たな電力需要を牽引
交通分野では、電気自動車を電力系統の調整リソースと位置づけ、2030年にV2G(車両から電網への電力供給)による調整可能な充電容量を5000万kW、充電インフラを4000万基まで整備するとした。主要幹線貨物ルートに沿った大型電動トラック向け充電設備の整備も明記されている。産業分野では、鉄鋼・非鉄・石化・化学・建材などの重工業に対して、電気ボイラーや電気加熱炉への転換を義務づける。
「AI+エネルギー」:グリーン電力でデータセンターを支える
計画の特徴的な項目として、「人工知能+」エネルギー行動が打ち出された。大規模再生可能エネルギー基地と国家算力(コンピューティング)ハブを連携配置し、データセンターへの再生可能エネルギー直接接続を推進する。AIや大データ産業への高品質な電力供給を国家政策として保証する姿勢を明確にした。
水素:2030年に再エネ由来200万トン、パイプライン建設も始動
再生可能エネルギー由来の水素製造目標は2030年に200万トンと設定された。グリーン電力直結型と再エネ系統外独立型の2方式を並行推進する。インフラ面では内モンゴルから京津冀地区(北京・天津・河北省)への輸送水素パイプラインの建設に着手するほか、水素・アンモニア・メタノールの利用範囲を発電、輸送、化学・冶金、大規模蓄エネルギーへと拡大する方針だ。
重要鉱物の確保:探査から備蓄まで体系的に整備
大規模な再エネ拡張を支える資源基盤の強化として、計画はリチウム・コバルト・ニッケル・レアアースなどの重要鉱物確保を安全保障上の課題と位置づけた。具体策として、国内探鉱・開発の強化、および品種・規模・整備時期を品目ごとに設定した戦略的鉱物備蓄体制の構築を掲げる。ただし石炭備蓄が年産1億トン以上という具体的な数値目標を明記しているのに対し、重要鉱物の備蓄量については具体的な数値が示されておらず、詳細は引き続き策定中とみられる。
廃棄設備リサイクル:初の大規模退役ラッシュを前に政策整備
今回の計画で特筆すべきもう一つの柱が、使用済み再エネ設備の高付加価値リサイクルの推進だ。対象は退役した風力タービン、太陽光パネル、リチウムイオン電池で、回収可能な素材はブレードのガラス繊維、パネルの高純度シリコンと銀、構造部材の銅・アルミニウム、電池のリチウム・コバルト・ニッケルなど多岐にわたる。
政策の背景には明確な時間的要因がある。中国が風力・太陽光の大規模導入を本格化させたのは2010年代初頭で、主力設備の設計寿命は20〜25年、動力電池は8〜10年とされる。これを踏まえると、2025〜2030年は中国で初めて大規模な設備退役ラッシュが重なる時期にあたる。計画はこうした廃棄物を「有価素材の宝庫」と定義し、高付加価値化リサイクルを生態系安全と戦略資源供給保障の両面から推進するとしている。重要鉱物の備蓄政策と組み合わせることで、上流の探鉱・開発から末端の回収・再利用までを一貫してカバーする資源循環の枠組みを打ち出した形だ。
グリーン証書と国際標準:貿易障壁への対応も視野に
対外面では、風力・太陽光・水素・蓄電池の製品・技術・標準・サービスの一体的な海外展開を推進するとともに、グリーン電力証書(グリーン証書)の国際的な認知向上を図るとした。計画には「国際的なグリーン貿易障壁への積極的な対応」が明記されており、EU炭素国境調整措置(CBAM)などを念頭に置いた対策とみられる。
まとめ
今回の計画で注目すべきは、中国が初めてエネルギー転換計画に「資源安全保障」の論理を組み込んだ点だ。これまでの五カ年計画は設備容量と発電量の拡大を主軸としてきたが、今回はリチウム・コバルト・ニッケルなどの鉱物資源確保と退役設備のリサイクルをエネルギー安全保障の章に明記した。再生可能エネルギーの大規模化そのものが新たな資源依存リスクを生み出しうるという認識が、政策立案の中枢に共有されたことを示している。