LME亜鉛相場が約4年ぶりの高値圏へ上昇している。足元では3カ月物価格が1トン当たり3,630ドル前後まで上昇し、2022年以来の高値水準に接近した。世界的な鉱石供給不足が続く中、中国や欧米の製造業景況感改善が需要期待を支え、需給両面から相場を押し上げている。
亜鉛相場動向LMEvs国内 5年
市場では、短期的な供給逼迫への警戒感が一段と強まっている。カザフスタンでは、Glencoreが出資するKazzinc製錬所が爆発事故の影響で減産操業を継続しているほか、ペルーではNexa ResourcesのCajamarquilla製錬所が火災による停止から段階的な操業再開を進めているものの、完全復旧には時間を要する見通しだ。また、スウェーデンのBolidenが操業するGarpenberg鉱山では今年発生した地震の影響から、生産が想定より長期にわたり低水準となる可能性が意識されている。
原料市場でも逼迫感は強い。SMMによると、中国国内の亜鉛精鉱処理費(TC)は6月にマイナス50元/MT、輸入精鉱TCはマイナス71.2ドル/DMTまで低下し、ともに過去最低を更新した。通常は鉱山会社が製錬所へ支払う処理費がマイナスとなっていることは、製錬所側が原料確保のため逆に鉱山へプレミアムを支払うほど精鉱不足が深刻化していることを示している。
SMMの分析では、中国国内では火焼雲(Huoshaoyun)鉱山の増産により生産量は前年を上回っているものの、多くの鉱山で鉱石品位の低下や突発的な操業停止が発生し、市場に流通する精鉱はほとんど増えていない。一方、海外でもAntamina鉱山の減産、GlencoreのMount Isa鉱区閉鎖、TeckのRed Dog鉱山の生産計画引き下げなどが重なり、2026年の世界供給は前年比で減少するとの見方が優勢となっている。
需給統計でも引き締まりが確認されている。国際鉛亜鉛研究会(ILZSG)は2026年の世界亜鉛市場について1万9,000トンの供給不足を予測しており、ほぼ均衡ながら不足局面へ転じるとの見通しを示した。供給不足幅は大きくないものの、市場では在庫水準の低さが価格形成に与える影響の方が大きいとの見方が広がっている。
実際、上海先物取引所(SHFE)の指定倉庫在庫は前週比2.2%減少し、現物市場の逼迫感を改めて裏付けた。LME在庫も歴史的には低水準で推移しており、現物プレミアムの上昇やショートカバーが価格を押し上げる構図が続いている。
一方、需要面にも明るさが見え始めた。中国、欧州、米国で公表された製造業関連指標はいずれも市場予想を上回る内容となり、高コスト環境下でも工業生産が底堅く推移していることが確認された。亜鉛需要の約半分を占める亜鉛めっき鋼板向け需要の改善期待が、投資家心理を支えている。
もっとも、中長期的には供給改善要因も控える。中国では新規鉱山の稼働が下半期に本格化するほか、海外でもGamsberg鉱山やRomina鉱山などの増産が予定されている。ただ、SMMはこうした供給増加を織り込んでも需給改善は限定的とみており、処理費(TC)は年内を通じて歴史的低水準が続くと予想している。
当面の亜鉛相場は、製造業需要の底堅さに加え、精鉱不足と低在庫という二つの強気材料が支える展開となりそうだ。一方で、新規鉱山の立ち上がりが計画通り進むかどうかが、年後半の相場の方向性を左右する最大の焦点となる。
(IRuniverse/MIRU S. Aoyama)
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