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【貿易統計/日本】 2026年5月のニッケルくず輸出入統計
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(概況)
5月のニッケルくず輸出は、数量が1,033トンと前月比182%へ大幅増加し、前年同月比でも141%と高い伸びを示した。中国、米国、英国向けの大型案件に加え、「その他」向けも増加し、輸出先の多極化が一段と進展した。一方、FOB単価は5月の円高や低単価案件の増加を背景に1,040円/kgへやや低下したものの、LMEニッケルは底堅く推移しており、その後の6月以降は円安進行も加わって輸出価格の下支え要因となっている。総じて、市場は「数量回復、価格は高値圏維持、スポット案件主導」という構図が鮮明となった。
為替相場推移 TTS 3か月
■数量では、5月単月は1,033トンと、4月(569トン)から大幅増加し、前月比182%、前年同月比141%となった。中国向け197トン(前月比469%)、米国向け190トン(同183%)、タイ向け141トン(同83%)が主力となり、韓国向け98トン、英国向け78トンも堅調だった。「その他」317トンの内訳は、カンボジア202トン、ベトナム102トンを中心に、シンガポール12トン、インドネシア10トン、オランダ3トンで構成され、東南アジア向けを主体としたスポット輸出が大幅に増加した。
1~5月累計は3,665トンで前年同期比135%と前年を上回った。タイ向け946トン、米国向け932トンが引き続き主力で、中国向けも333トン(前年比422%)へ大きく伸長している。総じて5月は、中国・米国向けの回復に加え、カンボジアやベトナム向けを中心とするスポット案件が全体数量を押し上げ、多方面向けの分散型輸出構造が一段と鮮明となった。(表―1、グラフ―1)。


■数量構成比では、5月は「その他」が7%→31%へ大幅に拡大し、カンボジアやベトナム向けスポット案件の増加を背景に最大の構成比となった。中国向けも7%→19%へ上昇し、米国向けは18%でこれに続いた。一方、タイ向けは30%→14%へ低下し、韓国向けも19%→9%へ縮小した。英国向けは9%→8%とほぼ横ばいだった一方、マレーシア、台湾、ドイツ向けはゼロとなった。
総じて5月は、4月のタイ主導型から、中国向けと東南アジア向けスポット案件を軸とする分散型へ再び構成が変化した。依然として特定国への固定的な依存はみられず、月ごとに主力仕向け先が入れ替わる多極・スポット型の輸出構造が続いている。(グラフ―2)。

■金額では、5月は10億75百万円と前月比172%へ大幅増加し、前年同月比でも290%と高い伸びを示した。米国向け3億52百万円、中国向け2億95百万円、英国向け1億61百万円が全体を牽引し、「その他」も1億09百万円へ増加した。韓国は63百万円と減少したものの、欧米向け高額案件の回復が全体を押し上げた。1~5月累計は41億70百万円(前年同期比177%)と前年を大きく上回り、高単価案件を中心とした輸出拡大が続いている。(表―2、グラフ―3)。


■輸出FOB単価
5月の平均FOB単価は1,040円/kgと、4月の1,095円/kgから低下した。5月は為替がやや円高方向に推移したことに加え、低単価の韓国向け(646円/kg)やタイ向け(528円/kg)、その他向け案件の比率が高まったことが平均価格を押し下げた。一方、中国向けは1,496円/kg、米国向けは1,855円/kg、英国向けは2,069円/kgと高水準を維持し、高付加価値スクラップの需要は引き続き堅調だった。LMEニッケル価格も5月平均で約1万8,805ドル/トンと4月(約1万8,006ドル)を上回り、国際相場は底堅く推移している。総じて5月は、円高と輸出先構成(ミックス)の変化により平均FOBはやや調整したものの、高単価案件の水準は維持されており、その後の6月以降は再び円安進行が円建て輸出価格を下支えする展開となっている。(グラフ―4)。

主要税関数量・FOB(JPY/Kg)実績 ( )内は前月実績
主要国別税関別数量・FOB(JPY/Kg)実績 ( )内は前月実績
■今後の展望
数量面では、日本鉄鋼連盟統計でもステンレス鋼を含む特殊鋼生産は緩やかな回復にとどまる一方、高品位ニッケルスクラップに対する海外需要は底堅く、韓国、中国、米国、ASEAN向けを中心に一定の輸出水準が維持される見通しである。輸出先は引き続きスポット案件の影響を受けやすいものの、多極化した販売構造が下支え要因となろう。
価格面では、市場の焦点は需要拡大から供給管理へ移りつつある。インドネシア政府はRKABの追加承認を限定的に運用する方針を維持し、HPM制度の厳格運用やロイヤルティ引き上げも加わり、ニッケル鉱石供給は従来より引き締まった状態が続く見込みだ。INSGも2026年の需給見通しを供給過剰から小幅な供給不足へ修正しており、LMEニッケルは急騰局面こそ想定しにくいものの、16,000~17,000ドル台を中心とした底堅い推移が予想される。一方で、中国ステンレス需要やEV向け三元系電池需要の伸びは鈍く、LFP電池の普及やリサイクル利用率の上昇が一次ニッケル需要の拡大を抑制する構図に大きな変化はない。
総じて当面は、「数量は底堅く、価格は供給管理と円安に支えられて高止まりする一方、スポット案件とインドネシア政策への感応度が高い市場」という展開が基本シナリオとなりそうだ。RKAB運用の見直しや鉱石供給政策の変更があれば、LME相場だけでなくスクラップ輸出価格にも直接影響を及ぼす可能性が高く、引き続きインドネシアの政策動向が最大の注目材料となろう。
(IRUNIVERSE S. Aoyama)