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ベトナム南部のロックダウンで鉄鋼はじめ日系企業の生産にも直撃 北部も厳戒態勢

2021/07/15 10:40

 以前に、5月末にMIRUcomでもアジアに広がるコロナ変異型によるサプライチェーンへの影響を説いていたが、現下、まさにその予想通りに東南アジア全域にコロナ変異型(デルタ株、デルタ@株)が猛威をふるっており、マレーシア、インドネシア、そしてベトナム、タイ、ミャンマーへと広がり実際に現地の日系企業へ人的な影響も出ている。

 

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 日本政府もチャーター便を出して日本への帰国を促しているほどだが、インドネシアでは日本の大手鉄鋼商社の方が亡くなられたようだ。

 

 このコロナ変異型が今、ベトナムを苦しめている。ベトナムでも南部、ホーチミンを中心として2週間のロックダウンが公布されており、基本的に全産業は停止。散歩でも罰金150万ドンが徴収されるという。

 

 JETROの情報によれば

 ベトナム保健省は7月12日、公文書(5533/BYT-MT)を出し、新型コロナウイルス感染拡大が続くホーチミン市からの訪問者に対する感染防止措置を強化するよう、全国の省・市に要請した。ホーチミン市から各省・市を訪れる人(注1)は、各省・市に到着後14日間、自宅での医療隔離をしなければならない。また、対象者は到着日、7日目、13日目に新型コロナウイルス検査を受ける。検査で陰性の場合も、医療隔離終了後の14日間は、健康観察期間として周囲との接触を控える必要がある。

 

 これに先立ち、保健省は7月7日にホーチミン市からの訪問者に対して、7日間の自宅隔離と7日間の健康観察を求めていた。このたび、その期間をそれぞれ7日間ずつ延長し、厳格化したかたちだ。

 

 ハノイ市は7月12日、公文書(14/CD-CTUBND)を出し、新たな感染防止措置を発表した。これによると、ホーチミン市および他の感染地域からハノイ市を訪れる人は医療申告の上、14日間の自宅隔離などを実施しなければならない。ハノイ市内に入る際には、到着日の3日前までに発行された陰性証明書を携帯する必要がある。

 

 また、ハノイ市は7月13日から、飲食店の店内飲食サービスやカフェ、理美容院の営業を休止した。公園や公共の場での運動、職場・病院・学校以外の場所で10人を超えて集まることも禁止となった。同市は感染者の減少を受けて、6月22日から感染防止措置を一部緩和し、飲食店の店内飲食や理美容院の営業が再開していたが、再度規制の対象とした。

 

 省・市によっては、独自に厳格な規制を設けており、北部ハイフォン市などでは、同市内に入る際には新型コロナウイルスの陰性証明書が要求される。今後も、各省・市をまたぐ移動の規制強化が続くことで、物流の遅延などの問題が危惧される。

 

 ベトナム国内の市中感染者は、7月13日の朝時点で累計3万724人。直近の7月12日の1日当たりの市中感染者は2,367人で、5日連続で過去最多を更新した。ホーチミン市では6月下旬以降、感染が右肩上がりに拡大しており、国内で最も感染者が多い都市となっている。

 

 

鉄スクラップにも影響必至

 ベトナム南部には鉄鋼メーカーが集中していることから、今後の生産動向が気になるところであるが、かなりな制限を受けることは間違いない。その鉄鋼メーカーが原料のスクラップなどを荷揚げする港はフーミー港(バリア・ブンタウ省タンタイン郡)である。ここの埠頭は長さ385mで5万トンまでの船舶、3万トンまでのコンテナ船の受け入れを行っている。ここフーミー港もロックダウンの影響を受けることは避けられないだろう。また、南部には大手の鉄鋼メーカー、アルミメーカー、石膏会社(吉野石膏)、モータで有名な日本電産の大型工場もある。現地筋によると、工場内に社宅があるところ(工場内で生活できる環境が整っているところ、ただし工場からは一歩も外に出られない。北部も同じ)は操業は可能、とされている。

 

 そのベトナム南部の鉄鋼メーカーでは以下の企業がある。日本でもおなじみの鉄鋼メーカーが多く並ぶ。

 

 

表

 

 

 しかしながら南部の鉄鋼メーカーが作った鉄筋などを北部に運ぶ際には移動制限があるため容易ではない。従って鉄鋼の自然減産となる可能性があり、それは輸入スクラップの需要減にもつながると考えられる。いまやベトナムは日本の最大の鉄スクラップ輸出先である。実際、ベトナムの鉄筋棒鋼の価格下落により、日本のH2湾岸価格は下落してきた。ベトナム鉄鋼情勢と日本の鉄スクラップマーケット(上級品種以外の)はリンクしているといっても過言ではない。

 

 なにゆえにここまでベトナムでコロナ感染が広がったのか?これはマレーシアなどと同じだが、出稼ぎ労働者が多く、東南アジアをバスで移動するかのように人々が往来していたことが原因といわれている。密入国や不法滞在。マレーシアではその不法滞在者を厳しく取り締まっている。ベトナムも今その災禍の真っ只中にある。いまは南部だが、北部もロックダウンが発令されるのは時間の問題とされている。

 

 ベトナムには数多くの日系企業が進出しており事業を展開している。ベトナムのロックダウンは日本のモノづくりにも幅広いマイナス影響が及ぶ可能性がある。

 

 

(IRUNIVERSE/MIRUcom)

 

 

 

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