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米中間選挙と環境エネルギー政策の行方

 

 8日投開票が行われた米中間選挙は当初の予想された共和党の圧勝はなく、上院選、下院選ともバイデン大統領率いる与党・民主党と野党・共和党の接戦が続いている。米国の複数のメディアは上院での接戦と下院で共和党が僅差で過半数を制して勝利するとの予想を伝える。

 

 

 トランプ前大統領が選挙前に主張していた共和党カラーの「赤い波」(レッド・ウェーブ)は起きなかった。TIME誌電子版は、共和党が失速した今回の選挙結果を「ピンクの飛沫」(ピンク・スプラッシュ)程度で終わったと皮肉った。

バイデン氏も一息つけることになったばかりでなく、肝煎りの政策で8月に成立したばかりの気候変動対策に焦点を当てたインフレ抑制法(IRA)も当面の間は維持される見通しとなった。

 

8月に成立した気候変動対策に重きを置くインフレ抑制法

 バイデン政権は中間選挙を数か月後に控える今年8月16日に「2022年インフレ抑制法案(歳出・歳入法)」を成立させた。大苦戦が予想された中間選挙を前に上下両院の過半数を維持している現議会で駆け込み的タイミングで法案を成立させた。

 気候変動対策などに今後10年で4370億ドル(約62兆円)を拠出するIRA。歳出のうち、3690億ドル(約52兆円)が気候変動対策に当てられ、家庭へのソーラーパネルの導入やエネルギー効率が高い家電製品に電気自動車(EV)を購入した際の消費税が控除されるなど、個人消費者、家庭レベルでの気候変動対策が一気に加速すると期待されている。

 11月8日配信のMarket Watch の記事によると、IRAはEVに乗り換えようとする人を対象に、一部の新型車に対し7,500米ドル(約106万円)、中古車にも4,000米ドル(約57万円)の減税を実施する。

 しかし、有権者はこの恩恵はまだ受けていない。税額控除が2022年12月31日以降に製造された車両から適用されるからだ。また控除の対象はあくまで北米で組み立てられた車両で、搭載されるバッテリーにも厳しい条件が設けられている。

 7,500米ドルの税額控除の仕組みも複雑で、9月15日付の「日経ビジネス」のオンライン記事によると、北米あるいは米国と自由貿易協定を結んでいる国のいずれかで調達されたリチウムなどの重要鉱物を40%(2023年、コストベース)以上含んでいれば7500ドルの半額の3750米ドルの控除が受けられる。残りの3750ドルの税額控除は、バッテリー用部品のうち、50%以上が北米で製造されている場合にのみ適用されるという。

 

困難なリチウムの調達

 EV購入の際の税額控除を受けるには、リチウムは北米もしくは米国と自由貿易協定を結んでいる国から調達しなければならない。その中に中国は含まれていない。

 脱炭素社会を目指すNPO「RMI(ロッキーマウンテン研究所)」(本部;米コロラド州バサルト)が10月12日付で配信した報告書によれば、世界のリチウムのほとんどが南米とオーストラリアで採掘されるものの、中国が世界最大のリチウム製造国で2020年には米国を上回るリチウム生産国にランク付けされた。米国が追いつくには今後3年間でバッテリー生産に1750億ドル(約25兆円)投資する必要があるという。

 また、エネルギーや公益事業の経営者向けのニュースサイト「Utility Dive」が配信した8月30日付けの記事によると、EV用電池のほぼ3分の2は材料費で占められる。更に同記事はバンク・オブ・アメリカ(BOA)グローバル・リサーチのアナリストの「電池原料獲得のための競争は厳しく、現在の鉱山からの供給とEV生産では2025年以降、事実上すべての原材料が供給不足に陥ると予想される」とする警告を紹介している。

 

気候変動対策に批判的な共和党 

 伝統的に石油業界寄りの共和党は気候変動問題には批判的だ。民主党が推し進める「グリーン・ディール」(脱炭素政策)は国の安全保障や経済に悪影響を及ぼすと考える。特にロシアによるウクライナ侵攻後は、共和党の重鎮らから米国内の石油を量産するよう声が上がった。

 トランプ政権で国務長官を務めたマイク・ポンペオ氏は10月12日のツイートで「ガソリンは1ガロン4ドル近くまで値上がりした。しかし、バイデンはここ(アメリカ)で石油を掘らないでベネズエラにねだるつもりだ」と痛烈に批判した。

 バイデン大統領は2030年までに米国で販売される乗用車の新車販売台数の半分をEVにすることを目標に掲げる。税額控除を受けるためのリチウムなど原材料の調達方法に課せられた厳しい条件に、共和党の反対があるとはいえ、EV車は米国内に普及していくだろう。

 今回の中間選挙で「赤い大津波」(レッド・ツナミ)が起き共和党が、大統領の拒否権すらも覆すことができる上下両院での3分の2の議席を占める大勝利を収めていれば、インフレ抑制法を撤回することも可能となったが今回はそうはならなかった。

 今後、米国内でEV用のバッテリー工場の建設を計画する日系企業は、製造に使用するリチウムなどが、米政府が懸念を示す中国やロシアからのものでないことに細心の注意を払わなければならない。バイデン政権のインフレ抑制法(IRA)の恩恵を享受するハードルは高い。

 

 

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本田路晴
ニューヨーク市生まれ、東京都武蔵野市育ち。読売新聞特派員として1997年8月から
2002年7月までカンボジア・プノンペンとインドネシア・ジャカルタに駐在。その後も
ラオス、シンガポール、ベトナムで暮らす。東南アジア滞在歴は足掛け10年。趣味は
史跡巡り。2022年9月より、沖縄平和協力センターの上席研究員(非常勤)。

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