東洋エンジニアリング 高性能鉄触媒を活用、低コスト省エネなアンモニア合成商業化に向け覚書締結
東洋エンジニアリング株式会社(取締役社長 永松治夫、以下TOYO)は、国立大学法人東京工業大学(学長 益一哉、以下東工大)、Ammon Fields株式会社(取締役社 足立健太、以下Ammon Fields)、株式会社エフ・シー・シー(取締役社長 斎藤善敬、以下FCC)と6月14日付で、東工大原亨和教授らが開発した鉄-ヒドリド触媒*1を、燃料用アンモニア製造システムに適用することを目指し、実証に向けた触媒商業化の開発に共同で取り組むMOU(覚書:Memorandum of Understanding)を締結した。
アンモニアは100年以上にわたり、窒素と水素を400–600 ℃、 15 – 20 MPaという高温・高圧下で合成されてきたが、今回原教授が開発した、革新的な鉄-ヒドリド触媒を使用することにより低温・低圧(100 ℃ 、1 MPa)の条件でも優れた性能を発揮し、アンモニア合成時における省エネルギー化、CO2削減など多くのメリットを享受することができる。
また鉄-ヒドリド触媒は希少性の高い貴金属(レアメタル)を使用しない鉄触媒であり、経済性や安定供給という点でも優位性を有している。
アンモニアは従来の肥料用途の他に、発電、船舶燃料、素材セクターのエネルギー源、そして水素キャリアとして社会実装に向けたロードマップが制定*2されている。将来的に、大きな需要が見込まれる燃料アンモニア製造を念頭において、中・大型設備に適した運転条件と本触媒を組み合わせることで、燃料アンモニアの製造コストの低減が期待される。
各社は、鉄-ヒドリド触媒の実証に向けて、以下を実施する。
TOYO: 開発プロジェクト統括、エンジニアリング検証、事業化検討
東工大: 触媒研究・開発
Ammon Fields: 知財管理
FCC: 触媒開発・製造
TOYOと、東工大、Ammon Fields、FCCは鉄-ヒドリド触媒の開発を推進し、低コストで省エネルギーな燃料用アンモニアの製造技術の社会実装に取り組んでいく。
*1 東工大/原教授らの開発した電子供与性に優れた新たな鉄系触媒。
アンモニアは、窒素と水素の反応で得られるが、反応メカニズム上、もっとも速度が遅く全体の反応速度に影響を与えているのが、窒素分子を窒素原子に分解する過程だ。
この過程を促進するためには、鉄などの遷移金属から窒素分子へ電子を一時的に供与する方法が知られている。この電子供与性を高めるために過去、様々な工夫が行われてきたが、原教授らは、資源量が豊富で経済性に優れた鉄に金属ヒドリドを複合することで、低温でも金属カリウムと同等の電子供与性を発揮する新たな鉄触媒の開発に成功した(a)。金属ヒドリドとは金属原子に負の電荷を持った水素(ヒドリド, H-)が結合したものであり、鉄の電子供与性を促進する働きがある。
本共同開発では、同コンセプト触媒の実証に向けた触媒商業化の開発に共同で取り組むことを目的としている。
(a) 東工大発表 https://www.titech.ac.jp/news/2023/066470
*2燃料用アンモニアに関して、2021年2月に燃料アンモニア導入官民協議会によってロードマップが策定されており、2030年までに燃料アンモニアの生産を拡大する必要がある。さらに、2050年までには、国内含む世界全体で1億トン規模の日本企業による調達サプライチェーンを構築することを目指している。
(IR universe rr)
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