「プリゴジンの乱」1週間 資源相場への影響は?「ロシアは何でもあり」の冷静な声も
創設者エフゲニー・プリゴジン氏が率いるロシアの民間軍事会社「ワグネル」の反乱が6月23日夜に起きてから、早や1週間。反乱自体は24時間以内に終息したが、週明け6月26日はロシアの通貨ルーブルやロシアニッケル大手のノリリスク・ニッケル(ノリニッケル)の株価が下げるなど、反応もあった。その後の推移を見つつ、現場の声を拾ってみた。
■「トップ逃亡」の報でノリニッケル株に売り
一連の騒ぎの直後の6月26日の外国為替市場では、ルーブルが一時1ドル=87ルーブルに下げ、ロシアのウクライナ侵攻後の2022年3月下旬以来の安値を付けた。その後はやや買い戻しが入ったもののルーブルは2023年に入ってからの下落率が1割を超え、低空飛行が続いている。
また、同日のモスクワ株式市場では、ノリニッケル株が前週末比0.84%安の1万4862ルーブルに下げた。ノリニッケルの大株主で新興財閥(オリガルヒ)の1人であるウラジーミル・ポターニン氏が、反乱を受けて24日午後にモスクワからトルコのイスタンブールに向かったと伝わったためだ。ノリニッケル株はその後6月28日に一時反発したものの勢いが続かず、結局6月29日までの4日間では0.8%安と売り優勢となった。
市場の反応以外の動きもみられた。6月27日には、米財務省がワグネルの資金調達減になっているとして中央アフリカの金やダイヤモンドの採掘企業への制裁を発表した。制裁自体はかねて準備されていたもので反乱とは無関係だったようだが、結果的にワグネルを巡る動きがあわただしさを増した週となった。
■短期は影響限定、中長期では?
もっとも、これらの動きがすぐに資源相場に影響する可能性は低そうだ。現場の関係者らは肝が据わっており、ロシアとの取引も手掛ける資源商社の幹部はIR Universeの取材に対し、「ロシアだけに何でもありですねえ」と苦笑した。レアアース業界のベテラン関係者も取材を受けて「今回の騒乱は資源相場には特に影響ないと思います」と話した。
では、中長期的な影響はどうか。米経済紙フォーブス日本版は6月25日、「プリゴジンの乱が原油価格に長期的な影響を及ぼす」との識者の話を伝えた。「プーチン政権が騒乱でさらけ出された弱点を補おうと原油生産を増やし、価格下落を引き起こす」という。国内威信の低下と景気悪化を防ぐために貿易を活発化しようとする、との見立てだ。
ロシアにはワグネルのほかにも民間の傭兵部隊は複数あり、その中には天然ガス大手のガスプロムが所有するなどエネルギー産業が関わっているものもある。また、米国が制裁したようにワグネルはアフリカの採掘事業にも関与しており、ロシアが混乱すれば他の資源国に飛び火する恐れもある。
香港株式市場に上場するロシアのアルミ大手UCルサール株は、今週に入り6月28日までに6%下げた(6月29日は売買を停止)。ルサールはノリニッケルと同じくオリガルヒのオレグ・デリパスカ氏がトップを務める。香港市場はモスクワ市場に比べ海外投資家の参加が多く、世界の投資家がロシア企業の先行きを不安視している様子もうかがえる。
■国情安定につながれば…
結局のところ、現地で事業を営む関係者としては、政治情勢は安定が一番。資源商社の幹部は、騒乱は「ロシアの不安定化につながるので、短期的には悪材料になるかもしれない」としつつも、「中長期的にウクライナ戦争の早期終結につながれば好材料になりますね」と話していた。
(IR Universe Kure)
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