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不足する人材育成目指すグリーン人材開発協議会 その狙いと背景を聞く――井口和宏氏

 再生可能エネルギーなどに精通し、国内の2050年カーボンニュートラルの実現に向けて、事業を担える「グリーン人材」の育成を目的に、民間のベンチャー企業などがグリーン人材開発協議会を今月、設立した。人材不足が叫ばれる一方で、国などは具体的なギャップや数値目標などを示すには至っていないという。設立の中心的な発起人の一人で、協議会が一般社団法人化した後にも、協議会運営を担うことが見込まれる井口和宏氏(グリーンタレントハブ社長)に、設立の背景や今後の活動展開などについて聞いた。

 

 

取材に応じるグリーン人材開発協議会の井口和宏氏

 

――このタイミングで協議会設立となった背景は。

 

井口和宏氏:

 日本がカーボンニュートラルを明確に目指すと宣言したのが2022年。徐々にカーボンニュートラルに取り組む企業は増えつつあり、また政策サイドも、150兆円のGX基金などを掲げるなどして具体化してきている。この脱炭素の領域に資金が流れ込んでいる状況だが、実際に目標の実現を担う人材がまだ足りないという問題意識を抱えていた発起人らが、縁があってつながることができた。

 

 そこで、人材育成や人材採用については、国としての課題であり、企業個社だけでなく、産官学が連携して様々な立場から一緒に取り組んでいく組織が必要だという認識に至った。一部の発起人となった有志らや、資源エネルギー庁の人材関連の責任者らが、23年5月ごろから議論を重ねてきた。

 

 市場が成長しているビジネス領域であり、危機でもあるがチャンスでもある。待ったなしで一刻も早くという認識から、立ち上げた。

 

――どれだけのグリーン人材が足りないとされているのか。

 

井口和宏氏:

 まさに、そこが問題で、まとまった資料がないのが現状だ。局所、局所には人材が足りていないという話はあるが、総合的にどの分野にどれだけ不足しているかや、今後不足がどれくらい見込まれているかといったデータがまだ整理されていない。ギャップを把握できなければ、どうやって埋めるべきかもわからない。そういった現状を調査して整理することから始めようと、エネ庁などとプロジェクトの検討を議論している最中だ。

 

 ただ、脱炭素領域の企業からは「人が足りない」という声は大きく聞こえてきており、不足している現実の根拠にはなっている。全世界的には、IEA(国際エネルギー機関)が30年までにクリーンエネルギー関連で1400万人の雇用が必要になるとし、一方で、オイルとガス分野は500万人雇用が減るという試算を示している。

 

――実際に、どういった影響が懸念されるのか。

 

井口和宏氏:

 具体的な影響もすでに出ている。脱炭素に関連する大企業からベンチャーまでヒアリングを続けているが、幾つかの企業は人材を採用できないために自社の事業計画を達成できないと嘆く声があった。例えば、ある風力発電関連の事業者は、設計のプロジェクトマネジャーがいないために、今後、新製品の販売予定時期が遅れてしまうことになったという。マクロの目標である50年カーボンニュートラルの達成は、具体的に実行するのは各個社であり、大きな影響が出る懸念があるともいえる。

 

――今後、エネルギー業界では著名な橘川武郎・国際大学学長が、代表理事に就く予定です。

 

井口和宏氏:

 発起人が中心となって立ち上げた組織だが、代表はどちらかといえば全体を俯瞰して物事を発信できる人物に就いてもらいたいと思った。裏話的だが、学識経験者を中心に一部産業界の人物も含む100人くらいのリストを作って、幾つかの観点からふさわしい人物を選定した。決め手は、政策提言を活動の方針に掲げているため、政策サイドとのつながりを重視したことだ。橘川氏は、その点、経済産業省などでの経験も豊富で、政策サイドと大変つながりが深い。橘川氏には、理念に共感し快諾してもらった。「どんな人材が足りなくて、課題を抱えているか」といった現場の事業者の声を、ぜひ聴きたいという願望を持っていた。

 

――当面の具体的な活動の展開は。

 

井口和宏氏:

 会員の募集を続けていくが、イメージとしては、個人と法人の会員を合わせて、今年12月末に100社くらいの参加を目指したい。すでに入会などの問い合わせも多く寄せられている。

 

 お題目だけ唱えるのではなく、実行の部分まで関与し、現実を変えていく。そのため、民間だけでなく政策サイドの支援もキーポイントになってくる。まさに産官学連携で取り組んでいく方針だ。

 

 グリーン人材の質と量を定義して確保していく。これが活動の起点になる。人材がどういうキャリアで、今に至るのかを、いろんな事例を示していく。そうすれば、自分でもこの領域で活躍できるイメージが持てるはずだ。

 また、脱炭素の領域により多くの人が参入してもらうように情報の発信をしていく。四半期に一度は公開のイベントを開催する予定だ。さらに、もっとフランクに話せる座談会を月に一度くらい開いていきたい。

 

 実行フェーズとして、グリーン領域に飛び込む人向けに、リスキリングサービスの選択肢も提供する機能を持ちたい。イギリスの民間団体「Future Energy Skills PROGRAMME」を参考にして協議会を発足させた。各産業界のリーダー企業が加盟している団体で、誰も取り残さない「ジャスト・トランジション」(公正な移行)を実現しなければいけない。そのためには、既存の人たちをリスキリングして移行させていく必要がある。日本でも業界をまたいで機能するハブ的な組織に成長させたい。

 

 

(IRuniverse Kogure)

 

 

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