タングステン市場近況2024#8 下げ止まり、環境査察ムーブ終了、夏休みで動意乏しく
2024年8月のタングステン市場は下げ止まり。中国の環境査察に伴う価格上昇とその後の調整を7月までに終え、8月は横ばいまたは小反発となった。欧米の夏休みもあって金属取引全般がオフシーズン入りし、動意の乏しい静かな市況だった。
■APTと酸化タングステンは1か月横ばい
FerroAlloynetは8月23日付の週刊レポートで、「オフシーズンの終了に向け、鉱石企業の価格引き上げ意欲が強まっているが、川下の実需がそれほど強くないため、加工企業の調達意欲は高まっていない」として、膠着感が強いと指摘した。
ベンチマークであるタングステンAPTの国際価格は8月1日に仲値$330/MTUを付けてからほぼ1か月間に渡り横ばいが続いている。水準としては5月初旬以来の安値。6月初旬にかけて演じた上昇とその後の下落を完全に消化し、環境査察の話題が出る前の水準に戻った格好だ。
過去3か月間のタングステンAPT価格の推移(EU Free market)($/MTU)
同じ流れは酸化タングステンにもみられる。やはり8月1日に5月初旬以来の安値である$340/MTUを付けた。その後は値動きがない。
過去3か月間の酸化タングステン価格の推移(Wo3 99.99%min FOB China)($/MTU)
■中国関連は8月下旬に小反発
過去3か月間の中国内外のタングステン鉱石価格の推移(WO3 65%)(RMB/mt) ($/MTU)
タングステン相場全体のムードメーカーとなった鉱石価格は下げ止まり、小反発している。中国の鉱石価格は8月22日にRMB13万7500/mt、国際鉱石価格も同日に$257.5/MTUにそれぞれ上げた。中国価格が先行する形で5月から6月にかけてピークを付け、その後は調整が進んだが下げ止まった。
中国の影響が大きな他の形状も同じ流れをたどっている。タングステンバー、フェロタングステン、炭化タングステンはいずれも下げ止まり、小反発した。
過去3か月間のタングステンバー価格の推移(w-4 99.9% China)($/kg)
過去3か月間のフェロタングステン価格の推移($/kg)
過去3ヵ月間の炭化タングステン価格の推移(99.7%min 2.5-7.0um Fob China)($/kg)
<Topics>
8月23日
中国タングステン大手の厦門タングステンが8月23日に上場する上海証券取引所で発表した2024年1-6月期決算は、売上高が前年同期比9%減の171億6100万元、純利益が28.5%増の10億1600万元と減収増益だった。製品価格の下落で減収となったが、コスト削減や有利子負債の縮小に成功し、増益を確保した。
厦門タングステンの2024年1-6月期決算概要
(出所:上海証券取引所で発表の厦門タングステンの決算資料)
8月9日
オーストラリアのフェロタングステン大手であるタングステンメタルズグループは自社ホームページ上で、「8月9日に豪証券取引所(ASX)に向け、新規上場の目論見書を提出した」と発表した。9月下旬に上場し、最大1200万米ドル(約17億円)の資金を調達する。
関連記事:豪タングステンメタルズグループは9月に上場 ロシア、中国に次ぐ3番目のFeWサプライヤー | MIRU (iru-miru.com)
プレスリリース:IPO (tungstenmetalsgroup.com)
(IR Universe Kure)
関連記事
- 2025/07/01 バナジウム市場近況2025#7 さえない、最終需要弱く生産企業が元気喪失
- 2025/07/01 2025年6月LMEニッケル相場の推移一覧 反落、引き続いての供給過剰懸念と中国ステンレス不況で
- 2025/07/01 二次電池輸出入Report #184リチウムイオン電池輸出 車載用カナダ向け輸出減少続く
- 2025/07/01 炭酸リチウム輸入Report #77 2025年も輸入平均単価下落基調続く
- 2025/07/01 水酸化リチウム輸入Report #77 チリからの輸入頻度低下
- 2025/07/01 タングステン市場近況2025#6 上昇、APT最高値に接近、品薄と軍需観測で
- 2025/07/01 酸化コバルト輸入Report #74 フィンランドからの輸入増加続く
- 2025/07/01 硫酸ニッケル輸入Report#78 神戸の輸入量11年ぶりに月1千トンを割る
- 2025/07/01 世界最大級ハードロック・リチウム鉱床をめぐりコンゴと係争中の豪AVZ Minerals 訴訟手続き再開へ
- 2025/07/01 ERG カザフスタンでガリウム生産計画