リチウム価格、底入れ期待は空振りか CATL減産観測も価格は動かず
長く低迷しているリチウム価格を巡り最近、底入れ期待が盛り上がった。9月11日に、車載電池で世界最大手の中国の寧徳時代新能源科技(CATL)が南部の江西省でのリチウム生産を縮小するとの観測が浮上したためだ。しかし、実際の価格は1週間たっても横ばいで、期待は空振りに終わった可能性もある。
■炭酸リチウム価格、5日から横ばい
ベンチマークとなる炭酸リチウム価格(99.5% China)は9月18日にRMB7万2500/mtを付けた。9月5から横ばいで、2021年2月以来の安値圏にある。中国は9月15-17日が中秋節の祝日で連休だったが、それを考慮しても結局は9月11日のCATLの報道前後を通じて動きがなかったことになる。
過去3か月間の炭酸リチウム価格の推移(99.5% china)(RMB/mt)
欧州の炭酸リチウム価格や日本のバッテリーグレードのリチウム価格なども足元は横ばい。金属リチウム、水酸化リチウムも動きは鈍い。
■広州取引所で価格高騰、世界のリチウム企業も株高に
米ブルームバーグ通信は9月11日、スイス金融大手UBSのメモとして、「CATLが中国南部・江西省のリチウム事業で生産調整を計画している」と伝えた。同日のロイター通信は、CATL側も同社の取材に「炭酸リチウムは最近の市況を踏まえて、宜春での生産について調整を行う予定だ」と認めたと伝えた。これを受け、中国の広州取引所ではリチウムの取引価格が一次急騰し、米資源のアルベマールをはじめ中国内外のリチウム企業株が大幅に上げた。
ただ、前述したように勢いは続いていない。広州での取引価格は中国全体の炭酸リチウム価格には及ばなかった。9月11日に一時92ドル近くまで急騰したアルベマールの株価は、9月16日には89ドル台で取引を終えた。。
■「そろそろ底入れしてもいい頃」
突然高まった底打ち期待の背景は何か。
長い低迷の中で、業界関係者の間に潜在的な彦入れ期待が高まっていたことが理由の1つに挙げられる。さらに、CATLは増産を続ける中国EVのバッテリーの直接的な生産者で、ある意味エンドユーザーに近い位置にいるため、減産は鉱山会社のそれに比べて構造的な意味を持つとの見方も多かった。
例えば、ブルームバーグによると、CATLの減産観測について、UBSのアナリストは「中国の月間炭酸リチウム生産量が8%削減される」と予測。オーストラリアの鉱業サービス会社ミネラル・リソーシズ(ミンレス)も、CATLの減産でリチウム価格は底を打った可能性があるとの見方を示したと伝わった。
確かに、減産や鉱山閉鎖に踏み切っているリチウム企業はCATLだけではなく、オーストラリアなどでも閉鎖や生産縮小が相次ぐ。このため、UBSは「2024年の残りの期間にリチウム価格が11-23%上昇する」とも予想したという。
ただ、EV失速を背景とした需要減速が大きく改善したわけではない。中国では政府主導のリチウム増産の流れも続く。期待と悲観が渦巻く中、実際に取引する関係者らは、やはり当面は様子見姿勢を取らざるをえなさそうだ。
関連記事: 中国五鉱集団、青海省でリチウム生産へ 価格低迷の中で白羽の矢 | MIRU (iru-miru.com)
(IR Universe Kure)
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