2025年8月のタングステン市場は快進撃を続けている。ベンチマークであるタングステンAPTの国際価格は8月21日に高値$505/MTUを付け、過去20年間で初めて節目の$500を超えた。中国は足元でタングステン輸出を再開しているものの、先行きの供給ひっ迫懸念に高値継続を見込んだ投機買いなども加わり、すべての形状で過去最高値となっている。
■中国、7月のタングステン輸出は20%増 規制後初のプラスに
過去3か月間のタングステンAPT価格の推移(EU Free market)($/MTU)
過去20年間のタングステンAPT価格の推移(EU Free market)($/MTU)
タングステンAPTは7月3日に高値$485/MTUと2011年5月に付けたそれまでの過去最高値($483)を上回った。その後も上昇は続き、8月21日は仲値で$495。もちろん仲値でも過去最高値圏に急伸している。
中国税関総署が8月20日に発表した中国の7月の貿易統計月報によると、7月の中国から世界へのタングステン輸出量は前年同月比20.0%増の1531トンだった。増減率は6月の11.2%減から増加に転じ、2月の輸出規制の開始後初めての増加となった。1-7月では前年同期比22.1%減の7202トンで減少が続くものの、減少率は1-6月期の28.8%から縮小した。
プレスリリース: (13)2025年7月出口主要商品量值表(美元值)
輸出は小幅ながらも再開しているが、中国国内での供給ひっ迫感は強い。中国事業を手掛ける専門商社の中国人トップは「鉱山の老朽化に伴う品質低下や環境保護対応コストの上昇による減産、今後の高値継続を見込んだ採掘者側の売り惜しみや投機的な売買も横行している」と、複数の供給ひっ迫要因を挙げた。中国国内でタングステン鉱石やAPTの価格が急騰しているため、「今後は中国国内価格が波及する形で国際価格もさらに押し上げられる可能性がある」(別の中堅商社の日本人トップ)とのとの警戒が強まっている。
■すべて過去最高値、酸化タングステンは初の500ドル乗せ
過去3か月間の中国内外のタングステン鉱石価格の推移(WO3 65%) ($/MTU) (RMB/mt)
過去3か月間のタングステンバー価格の推移(w-4 99.9% China)($/kg)
過去3ヵ月間の炭化タングステン価格の推移(99.7%min 2.5-7.0um Fob China)($/kg)
過去3か月間のフェロタングステン価格の推移($/kg)
他の形状も値上がりを続けている。7月に過去最高値圏に上げた酸化タングステンや鉱石価格のほか、タングステンカーバイドやタングステンバー、フェロタングステンも8月に入って一段高となり、それぞれ過去20年間での最高値圏に上昇した。
過去3か月間の酸化タングステン価格の推移(Wo3 99.99%min FOB China)($/MTU)
このうち酸化タングステンは8月21日に仲値$505/MTUと初めて$500台に乗せた。
過去3か月間の純タングステンスクラップ価格の推移(99% of Japan)($/kg)
日本のスクラップも同調した値動き。8月21日仲値は$66.75/kg。タングステンのスクラップは多くが自動車由来だが、足りなくなったから急に廃車が増えるものでもなく、国際的な品薄感が強まっている。
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8月22日
中国タングステン大手の厦門タングステンが8月22日に上場する上海証券取引所で発表した2025年1-6月期決算は、売上高が前年同期比11.75%増の191億7800万元、純利益が7.53%増の9億2300万元と、増収増益を確保した。
厦門タングステンの2025年1-6月期決算概要
(出所:上海証券取引所での厦門タングステンの開示資料)
7月18日、23日
IR Universeは7月18日と23日、タングステンスクラップの横城商事と、住友電工住友電気工業常務取締役で日本機械工具工業会会長である佐橋稔之氏に、それぞれタングステン関連の取材を行った。
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(IR Universe Kure)