中国五鉱集団、青海省でリチウム生産へ 価格低迷の中で白羽の矢
中国国有企業グループの中国五鉱集団は9月10日、自社ホームページ上で、「中国西部の青海省でリチウム塩湖開発に着手する」と発表した。炭酸リチウム価格は低迷し、中国のリチウム企業が業績悪化に苦しむ中、生産増加に乗り出す。
9月7日付で青海省の省政府高官らと会談・調印した。新企業「中国塩湖集団」を設立して開発する。新会社の資本金や具体的な開発スケジュールは未公表。
プレスリリース:中国五矿 (minmetals.com)
■リチウム価格は3年半ぶりの安値圏
足元の炭酸リチウム価格は相変わらず低迷している。9月11日には仲値RMB7万2500/mtを付け、2021年2月以来ほぼ3年半ぶりの安値圏にある。電気自動車(EV)需要の世界的な失速を背景に、車載電池の需要回復見通しは立っていない。
過去5年間の炭酸リチウム価格の推移(99.5%、China)(RMB/mt)
製品価格の下落を受けて、中国のリチウム企業も多くが2024年1-6月期は業績悪化を報告した。
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■中央企業、政府の方針に逆らえず 米ドル高で業績恩恵
こうした状況下、五鉱が増産に踏み切るのはなぜか。
五鉱集団は中央政府が直接管理する「中央企業」の1つである大型国有企業グループ。鉄鋼・非鉄の双方にわたる金属事業を主に手掛け、子会社の五鉱資源を通じ古くから海外事業も展開する。
関連記事:中国企業研究 中国五鉱集団 金属貿易出身の国有大手 近年はレアメタルに注力 | MIRU (iru-miru.com)
五鉱資源は香港株式市場に上場するが、決算を米ドル建てで計上していることもあり、2024年はリチウム事業を手掛ける企業としては唯一、業績が好転し、黒字転換を果たした。
五鉱資源の2024年1-6月期決算概要
(香港証券取引所で開示の五鉱資源の決算資料から)
五鉱集団は中央企業であるから、リチウム鉱山の新規開発は中央政府の意向である可能性が高い。中国でもEVはかつてほど伸びてはおらず、自動車メーカー間の競争も激化している。しかし、中国は国策としてEV、リチウムイオン電池、太陽光関連機器を「新・三種の神器」として新たな経済成長の車輪の1つと位置付けており、生産は引き続き増やさざるを得ない。
しかし多くのリチウム企業が苦境に立つ中、唯一、海外事業の好調が経営を下支えする五鉱に白羽の矢が立ったのではあるまいか。同社はかねて中国国内でのリチウム塩湖の開発を手掛けてもいる。また、中央企業である以上、政府の意向があればそれに逆らうことはできない。経験と、そして米ドル高が同社を荒波に押し出した面がありそうだ。しかし現実の高い波を眼前に、同社の本心は果たしてどうなのだろうか。
(IR Universe Kure)
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