屋根設置型太陽光発電に導入支援策検討、国民負担増に懸念もー経産省小委員会

経済産業省は28日、2040年に向けた太陽光発電の導入の方向性案を再生可能エネルギー大量導入・次世代電力ネットワーク小委員会で発表した。建築物の屋根や壁面の有効活用を追求するほか、ペロブスカイト太陽電池など次世代型太陽電池の早期の社会実装を目指す方針が示された。
太陽光発電の2024年3月末時点の導入量は73.8GWで、足下では概ね5GW/年のペースで導入が進んでいる状況だ。2030年目標(103.5~117.6GW)の実現には、今後、5~7.5GW/年のペースで導入を継続していくことが必要となる。一方、日本の国土面積当たりの太陽光導入容量は、既に主要国の中で最大級となっており、特に地上設置型で、今後の導入余地となり得る適地が残り少ないという課題を抱えている。
この状況を受け、経産省が提示した方向性案では屋根や壁面の有効活用を推奨しており、公共建築における屋根設置型太陽光発電については、「2030年に設置可能な建築物等の約50%、40年に設置可能な建築物等の100%に太陽光発電設備を設置する」ことを目標値として設定している。工場・オフィスなどの民間部門では、FIT/FIP制度の調達期間や交付期間、調達価格、基準価格の見直しを検討することで、投資回収の早期化や設置者の与信補完を推進する方針を掲げた。
投資回収の早期化を図るためのFIT/FIP制度の見直しについては、小野透委員(日本経済団体連合会資源・エネルギー対策委員会企画部会長代行)から、「電気料金の高騰や再生可能エネルギー発電促進賦課金(再エネ賦課金)の増加につながる懸念がある」とした意見が寄せられており、国民生活への影響が心配されるところだ。さらに、国産太陽光パネルのシェアが落ち込んでいることから、「導入量の拡大のみが目的化してしまうことは日本の産業力強化の観点からも望ましくない」という声もあがった。
なお、軽量性や柔軟性などの特徴を兼ね備えるペロブスカイト太陽電池の早期の社会実装も重要な施策の一つとして位置づけており、2025年までに20円/kWh、2030年までに14円/kWhが可能となる技術を確立させることを具体的な目標値として定めている。GXサプライチェーン構築支援補助金を活用し、2030年までの早期に“GW級”の生産体制構築を図ることで、2040年での導入量約20GWの達成を目指す。
次世代型太陽電池官民協議会事務局作成資料より引用
ペロブスカイト太陽電池の開発は実証段階ではあるものの、耐久性など性能面の課題克服や量産化を進めることで、将来的にはシリコン太陽電池に比肩する発電コストを実現していくことが期待されている。加えて、主要な材料であるヨウ素の生産量で、日本が世界シェア30%(世界2位)を占めていることからも国内の産業力強化の一手となりそうだ。
(IRuniverse K.Kuribara)
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