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日揮(1963):スマート物流エキスポにてペロブスカイト太陽電池パネルを展示

スマート物流エキスポにてシート工法を活かしたペロブスカイト太陽電池パネルを展示

 

 1/22から東京ビッグサイトで開催されたスマート物流エキスポにおいて、日揮HDがシート工法を活かしたペロブスカイト太陽電池(Perovskite Solar Cell、以下PSC)パネルを展示していた。

 

 同社はLNGなどエネルギープラントを主力とする国内最大の総合エンジニアリング企業。1928年の創業以来掲げていた「エネルギーと環境の調和」をさらに発展させ、自らのパーパスを「人と地球の健やかな未来づくりに貢献する―Enhancing planetary health」と再定義し、エネルギートランジション、ヘルスケア・ライフサイエンス、高機能材、資源循環、産業・インフラの5事業領域でビジネスを展開している。

 

 

2012年FITスターでメガソーラーを展開、2022年ペロブスカイト開発製造ベンチャーに出資

 

 太陽光発電に関する取り組みは、2000年初頭の建築系プロジェクトにおける省エネ・創エネ提案から始まっている。そして2012年7月に再生可能エネルギーの固定価格買取制度(FIT)が導入されてから1か月後の同年8月にはメガソーラー太陽光発電分野(出力1MW以上の産業用太陽光発電)に参入している。場所は日産自動車が大分市の臨海工業地帯に所有する約350,000平方メートルの土地に、発電容量26.5MW(一般家庭約9,000戸分の年間消費量相当)、当時としては最大級の発電所を建設、2013年5月に稼働している。それ以降も数多くのメガソーラー太陽光発電施設建設を手がけ、2020年には日本最大発電量を誇るパシフィコ・エナジー作東メガソーラー発電所(出力約257.7MW、一般家庭約81,000戸分の年間消費量相当、410haに75万枚の太陽電池を設置)も手掛けるなど、1MW以上のメガソーラーを20件以上手掛けてきた。

 

 

 しかし、FIT制度の実施により多くの発電所が設置されたことで、国内においてはメガソーラー設置可能な平地が既になくなった状況にある(平地面積当たりの導入量が主要国で最大級)。しかも2019年11月にはFITが終了、メガソーラーでは2024年度以降FIP制度(市場での売電価格に一定幅のプレミアムを上乗せした基準価格(FIP価格)で売電ができる制度)適応となるが、適地の不足に変わりはなく、しかも地域との共生上の課題も生じており、海外展開や太陽電池の水上設置、平地以外での設置技術などで活路を見出す動きとなっていた。

 

 

 このような中で、全く別の方向からアプローチを始めたのが次世代対応電池であるPSCの活用である。PSCは2009年に色素増感太陽電池の一種として、従来の色素の代わりに3種類のイオン(代表的にはA:有機アンモニウム、B:鉛、X:ヨウ素)がABX3のペロブスカイト結晶構造で配列する材料を発電層に用いたハロゲン化鉛系ペロブスカイトを利用し、桐蔭横浜大学の桐蔭横浜大学の宮坂教授のグループによって発明された太陽電池。当初PSCの変換効率は3~4%程度に過ぎなかったが、技術進歩が加速、2012年には効率が10%超まで高まり、2014年には1年で4%も向上し20%を超え、現在実用化されているシリコン製の太陽電池の変換効率である20%超に並び、2019年には25%を超えるまでになった(最高効率を競っているPSCセルは実際には0.01㎠程度の非常に小さなもの)。なおPSCは面積が大きくなるほど変換効率が下がることが知られ、実際に1.0㎠を超えると急激に変換効率が低下、20㎠程度のモジュールでは変換効率は20%に到達していない。PSCの特徴として、薄く柔軟、軽量で設置場所の幅が広がり、低照度での発電効率が高いことが挙げられる。一方、シリコン太陽電池に比べ耐久性に劣ることなどが実用化の課題となっているが、現在、長寿命化の研究も進みつつあり、実用化の期待が格段に膨らんでいる。

 

 

 このようなPSCの開発状況で、同社は2020年ころから本格的にアプローチを始めた。但し同社はPSCを製造する部署がなかったことから、2022年に同社などが運営するコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)ファンドを通じ、PSCの開発・製造を行う京大初スタートアップ「エネコートテクノロジーズ社」へ出資(24年7月に追加出資)、同電池の開発支援を行うこととなった。エネコートテクノロジーズ社が製造するPSCを同社が設置し、そこで得られたデータをエネコートテクノロジーズ社にフィードバックする協業体制を構築することとなった。このエネコートテクノロジーズは2018年1月設立の企業で、京都大学化学研究所若宮研究室で数年来取り組んできた研究シーズを基に、京都大学の全面的なバックアップを受けて起業に至った会社である。開発するPSCは、晴天時だけでなく、曇り空や室内光下のような暗い光でも高い発電能力を発揮、更に、フィルムを基材にした柔軟性の高い軽量PVが実現可能となっている。しかもPSCの弱点と言われる耐久性についてスズ-鉛混合系のペロブスカイトの表面を保護する手法を開発、窒素ガス雰囲気中で2000時間、空気中で450時間以上最初の出力の90%を維持し、変換効率22.7%と高い結果を得ている。2021年12月にはNEDO が公募した「グリーンイノベーション基金事業/次世代型太陽電池の開発」にスタートアップとして唯一採択され、屋外向けの大型モジュールの試作ラインを立ち上げてサンプル供給を開始するなどの実績を持つ。2023年10月には同社とエネコートテクノロジーズで北海道苫小牧の物流施設でPSCの実証実験を行うことを発表し、2024年4月に稼働を始めた。さらに同年12月から神奈川県、同社、エネコートテクノロジーズの3社で脱酸素に向けたPSC活用の連携協定を結び、江の島のシーキャンドルに近いサムエル・コッキング苑、温室遺構 展示体験棟で実証試験を1年間かけて実施することを決定し7月より実証を開始している。

 

 

PSCの特長を生かし「張る」太陽電池というシート工法でPSC普及加速を目指す

 

 ところで同社はこのPSCについて、新たな設置場所の開拓を考えている。具体的には同社がこれまで施工してきた多くのプラント、工場、倉庫などの屋根への設置である。従来、工場などの屋根はアルミや亜鉛メッキ金属板を波型に折った0.6mm~1.2mm厚の折板屋根が多く、耐過量が低いために従来のシリコン系太陽電池パネルでは重すぎて設置が困難であった。実際、1枚当たり重量が約15kgあり、工場では100枚設置しただけでも1.5tにもなる計算で、しかも暴風対策でフレーム固定が必要なため、さらに重量が増すこともあり、普及が進んでいなかった。これに対しPSCは厚みが僅か0.03mmとシリコン系の30~40mmに対し1/100に過ぎず、電池自体の重量では同一発電出力で1/25、暴風対策などのフレーム対策を施しても1/10で済む計算となり、折板屋根でも十分設置に耐えられることが明らかとなった。なお、現在のシリコン系パネル設置においては導入総コストの4割がパネル設置作業の工事費で示されているため、PSCがいくら軽量で設置作業が軽減されても総コストで大きく削減できないと判断、PSCの簡易な設置方法の開発を進めた。具体的には日本ワイドクロスの協力を得て折板屋根向け「遮熱工法」を利用し、夏の暑さ対策用遮熱シートの上に直接PSCを張り付け、これを屋根上に留め具で固定する「張る」太陽電池(特許出願中のシート工法)を採用し、設置を促進することとした。この方式によれば、4人で1日当たり約500㎡のPSC設置が可能となり、シリコン系に対し10倍以上の作業効率が得られ、設備設置コストも大幅に低減できるとしている。取り換えコストも安価でできるため、リサイクルなどの対応でも有利であるとのこと。現在、日本各地でPSCの実証や導入計画が実行されているが、このうち苫小牧、神奈川県の2案件で同社の実証実験が行われることとなる。同社としては実証実験を経て2年後には量産化を目指す予定とのこと。国内需要については経済性の観点で屋根から導入が開始されると見込まれている。特に工場や倉庫の折板屋根の面積は非常に広く、日本金属屋根協会調べでは金属屋根材の年間出荷量が約5万k㎡とのこと。仮に全てにPSCを装着すると、これだけで毎年の日本のPV設置されるPV発電量に匹敵する規模となる。

 

 

 政府は2024年11月、次世代の太陽電池であるPSCを2040年に原発20基分に相当する発電規模まで普及させるとする目標を正式に発表、今後の同社事業拡大が大いに期待される。

 

 

 

(H.Mirai)

 

 

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