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中国ガリウム輸出規制2周年、価格3倍高 アンチモン伸び悩み、鉱物により影響まちまち

2025/08/01 10:17
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中国ガリウム輸出規制2周年、価格3倍高 アンチモン伸び悩み、鉱物により影響まちまち

 中国が2023年8月1日にガリウムとゲルマニウムの輸出規制に踏み切ってから丸2年が経った。その後、西側諸国への対抗手段として相次ぎ打ち出された輸出規制の先陣となった。規制後の市況は対象鉱物によってまちまちで、ゲルマニウムやアンチモンのように過去最高値圏に高騰したものもあれば、グラファイトのように反応が薄いものもある。

 

■金属ゲルマニウムは過去最高値圏

輸出規制発表後のガリウム価格の推移(EU Spot market)($/kg)

 ガリウム価格は7月31日時点で高値$900/kgで、発表直前の2023年7月2日($265)に比べ3.4倍に値上がりした。規制実施直前の7月31日($390)比では2.4倍高となった。2011年夏以来の高値水準となる。

 

輸出規制発表後の金属ゲルマニウム価格の推移(99.99% China)($/kg)

 一方、金属ゲルマニウムは7月31日に高値$4300/kgと、2023年7月2日($1400)に比べ3.1倍に上げた。同年7月31日($1555)比では2.8倍に上昇した。こちらは過去20年間での最高値圏にある。

 

■アンチマンとタングステンも最高値で推移

 米国との対立が深刻化する中、中国はガリウム・ゲルマニウムに続き、アンチモンやタングステン、黒鉛(グラファイト)、レアアースと次々にレアメタル関連の輸出規制に踏み切った。このうち供給ひっ迫で過去最高値に価格が高騰しているのは、アンチモンとタングステンだ。いずれも中国の輸出規制以前に資源枯渇懸念がくすぶっており、中国としては自国内産業を守る意味もあって輸出規制に踏み切った面がある。

 

過去3年間のアンチモン価格の推移(99.65% China)($/ton)

 

 アンチモン価格は7月31日に$5万9500/ton。中国は2024年9月に輸出規制の対象とし、同年12月には対米輸出を禁止した。ただ、アンチモンは2024年初めの時点ですでに中国で鉱石の希少性が意識され、もともと資源枯渇懸念が強かった。

 ただ、足元の価格は伸び悩んでいる。7月上旬に$6万1000の過去最高値を付けてからは、調整局面となっている。市場では、「先回り輸入を増やしたインドなどで在庫のだぶつきが出ている」(関連トレーダー)との噂もあり、在庫が偏在している可能性もある。また、輸出規制後に、中国からタイなど東南アジア向けのアンチモン輸出が増えているとの報道も聞かれた。迂回輸出を含めて別ルートが構築された可能性もある。

 

過去20年間のタングステンAPT価格の推移(EU Free market)($/MTU)

 一方、タングステンはベンチマークであるAPT価格が7月31日に高値$490/MTUと、過去最高値を更新中だ。タングステンは2025年2月、テルル、モリブデン、ビスマス、インジウムなどとともに中国の輸出規制の対象となった。もともと中国国内でも鉱山の老朽化が進み資源が枯渇気味であるとされていた。現在は二次利用のスクラップを巡っても中国を含めて世界で取り合いの様相が強まっているとも伝わる。

 

■グラファイトは過去最安値圏

 半面、2023年末に輸出規制の対象となった黒鉛(グラファイト)は価格が低迷している。ベンチマークである球状黒鉛価格は7月31日に仲値RMB9250/tonと、過去最安値圏にある。規制は価格に影響していない。

 

輸出規制後の球状黒鉛価格の推移(99.95%min 17 um max in China)(RMB/ton)

 

 輸出規制を機に価格が高騰している鉱物は、規制以外にも供給面で不利な条件を備えているケースが多い。対象金属それぞれで事情は異なり、注意深く見ていく必要がある。

 

(IR Universe Kure)

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