仏ルノーグループが、自動車業界初のサーキュラーエコノミーに特化した子会社The Future is NEUTRALを2022年に創設し早くも3年が経とうとしている。以来The Future is NEUTRALは、ルノーグループの下で創設されたモビリティ専用のサーキュラーエコノミー工場 「ReFactory」を引き継ぎ、その管理と拡大を担ってきた。
ルノーグループは、傘下におく子会社(一部所有も含め)やそのパートナーに、解体業者、プラスチック・金属リサイクル業者、電池リサイクル業者を抱えている。The Future is NEUTRALは、親会社が長年にわたり形成したネットワークを通じて自動車下流部門の事業拡張を図り、自動車および部品の長寿命化と新車への再生材使用を大幅に引き上げることを目指している。そのThe Future is NEUTRALが先月、新たな事業拡張を発表した。今回は、パートナーシップによるアルミ部門への参入と、ReFactory における解体センターの設立だ。
Novelis・The Future Is NEUTRALがELV由来のアルミリサイクルで協力
アルミ・ソリューションの世界大手Novelis Inc.と、The Future Is NEUTRALは、使用済み自動車(ELV)のリサイクルにおける画期的な協力関係を発表した。この提携により、自動車用アルミニウムシートのリサイクル含有率を最低95%まで押し上げ、そのうち使用済自動車由来のスクラップを最低50%含有することを目指している。
革新的なリサイクル技術の工業化推進
Novelisは、自動車メーカー向けに、車両の外板パネルや成形を重要とするアプリケーション向けに約85%の再生アルミを含む製品を提供している。これを基盤として、両社の提携はさらに高いリサイクル含有率の達成を目指し、The Future Is NEUTRALの使用済自動車の調達・分別における専門知識を活用する。
Novelisは、再生材含有率の高いアルミの限界を押し上げると共に、生産時の炭素排出量削減にも取り組んでいる。2030年までに製品の平均再生材含有率75%を目指し、平板圧延製品(FRP)アルミ供給業者として最低排出量を実現、FRP1トン当たり3トン未満のCO2排出量の達成を目指す。また同社は、The Future Is NEUTRALとのパートナーシップにより、使用済自動車由来の高品質なアルミの回収が可能となる。
アルミは車両と電池の重量削減に優れた材料だ。アルミ再生材は、一次アルミの生産に必要なエネルギーのわずか5%しか使用せず、CO2排出量を90%以上削減する。EUの自動車業界における炭素排出削減は重要課題の一つであり、業界は低炭素アルミを調達できる業者を必要としている。またELV規則案では、将来的なアルミの再生材含有目標値の設定が検討されており、そうなればアルミ再生材の需要は大きく上昇することになる。
包括的な循環型エコシステムの構築
またThe Future Is NEUTRALは、フランス・Flinsに位置するReFactoryに年間7,000台の処理能力を持つ解体センターを2025年末までに開設し、特に事故・破損車の回収・処理・再生能力を強化する。この解体センターは、ReFactoryで構築された循環型エコシステムを補完するもので、損傷車両の処理に必要なすべての専門知識を集約した欧州唯一のプラットフォームとなる予定である。
同解体センターは車両1台当たり25個以上の部品を抽出し、14種類以上の異なる材料をリサイクル処理することが可能だ。センターは、安全性、人間工学、環境要件の最高基準を満たす処理技術を使用し、年間7,000台のELVを解体できるライン7台を備えた解体の「工業化」を実現する。
加えて、24時間365日の車両受入れ、現場での車両保管管理、ELVの管理的破壊と抽出部品・材料のトレーサビリティ確保も行う。
特に注目したいのは、金属・プラスチックリサイクルのパートナーであるGAIAがFlinsで運営するバッテリー修理エキスパートセンターの先進的診断能力を活用したあらゆる種類の車両(EVも含む)の処理能力だ。また、部品の再利用管理では、仕分け、保護、保管、撮影、オンライン出品を行い、特にパートナープラットフォームOpisto上での取り扱い(50,000部品を保管)を実施する。
ReFactoryでは、損傷車両の処理に必要なすべての活動を単一の施設に集約する。このエコシステムの中核として、解体センターは施設の様々な活動との相乗効果で運営されることになっている。技術的または経済的に修理不可能な車両の現場解体を車両修理活動(「ボディワーク工場」)と連携して行い、再利用部品を損傷車両修理活動と中古車再生(「RenewFactory」)に供給するという仕組みだ。
さらに、修理可能な部品を部品修理部門に、再製造用部品を「The Remakers(自動車部品再生事業部門)」に、クローズドループ用のリサイクル材料をGAIAに供給し、Flinsの電池修理エキスパートセンター(GAIA)の専門知識を活用したバッテリーの診断・リサイクルも行うことになっている。
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SCHANZ, Yukari
オーストリア、ウィーン在住フリーライター。現在、ウィーンとパリを拠点に、欧州におけるフランス語、英語圏の文化、経済、産業、政治、環境リサイクル分野での執筆活動および政策調査に携わっている。専門は国際政治、軍事、語学。
趣味は、書道、絵画、旅行、フランスワインの飲酒、カラオケ、犬の飼育。
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