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エンプラス(6961)26/3Q1WEB決算会メモ ニュートラル継続

2025/08/05 15:14
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26/3期半導体増額、デジタルコミュニケーション減額で0.2%減収52.7%営利減予想維持


株価5070円(8/4) 時価総額493億円 発行済株9732千株
PER(26/3DO予:19.9X)PBR(0.84X) 配当80.00円  配当利回り:1.6%


要約

・26/3Q1デジタルコミュニケーション、エナジーサポート不振で15.1%減収58.0%営利減

・26/3期半導体増額、デジタルコミュニケーション減額で0.2%減収52.7%営利減予想維持

・28/3期に売上高500億円、営利80億円目標もハードル高い

 

26/3Q1デジタルコミュニケーション、エナジーサポート不振で15.1%減収58.0%営利減


 26/3Q1期決算が7/28に開示され、同日WEB説明会説明会が実施された。26/3Q1は売上高89.99億円(15.1%減)、営利9.05億円(58.0%減)、経常利益8.25億円(64.6%減)となった。デジタルコミュニケーション、エナジーソリューション事業の不振で大幅収益低迷となったが、会社社内目標に対しては上振れたとのこと。

 ライフサイエンスは売上高5.16億円(32.6%減)、総利益1.98億円(39.3%減)、営業損失0.1億円(同期比1.25億円悪化し赤字転落)となった。遺伝子検査用製品において25/3Q1に新規量産品立ち上げに向けた関連製品の一時的な販売増があり、反動減に、同市場の低迷もあり低調に推移した。利益は減収影響で固定費を賄えず営業損失に。


 エナジーセービング事業は売上高31.73億円(10.8%減)、総利益10.76億円(11.8%減)、営利0.92億円(63.6%減)となった。新規製品の量産遅れによる自動車用部品の販売減および前期好調だったプリンター用部品の需要減少し、売上高が低調に推移した。利益面では減収効果、為替円高影響もあり総利益率が0.4ポイント悪化し33.9%となり、減収影響で販管費比率が3.8ポイント悪化し大幅営利減に。



 デジタルソリューション事業は売上高4.20億円(75.4%減)、総利益1.99億円(85.4%減)、営業損失0.43億円(同期比11.08億円減少し赤字転落)となった。光通信関連の光学デバイスがAI用途等のハイエンド領域での顧客の次世代製品への移行を踏まえた在庫調整等が継続し800G対応品の出荷がなかった。さらに1.6T対応の次世代製品の量産遅延も影響した。

 またトランシーバー向け以外の新製品でも販売遅延が影響した。このため売上高は1.78億円(同期比11.55億円減、同期比86.7%減)まで落ち込んだ。LED用拡散レンズも液晶テレビ市場の需要減少が継続し、売上高は2.42億円(34.9%減)と低調に推移した。利益面では減収影響で円円高もあり売上総利益率が32.8ポイントも低下し47.3%となり、販管費の減少が19.6%減にとどまったことで販管費比率が39.9ポイント上昇し営業赤字転落となった。


全体として半導体分野でAI関連の拡大から収益の上振れ、デジタルソリューションは開発案件の遅延と在庫調整で収益性が高かった分の反落で大幅減額となり上振れ分をした格好に。ただし想定比で円高に推移している中では会社社内計画に対し多少上振れての着地となった様子。

 

 

26/3期半導体増額、デジタルコミュニケーション減額で0.2%減収52.7%営利減予想維持
 

 26/3期期初予想に変更なく、売上高380億円(0.2%減)、営業利益25億円(52.7%減)、経常利益30億円(44.9%減)、税引利益21億円(46.8%減)を据え置いた。ただしQ1の収益状況、受注状況を踏まえ、部門別収益については大きく見直しを行い、全体として変更なしとしている。
部門別に半導体事業を売上高190億円(期初計画比24億円増額17.8%増)、営業利益30億円(同2億円減額、1.7%減)、デジタルソリューション23億円(同9億円減額、53.0%減)、エナジーセービング137億円(同13億円減額、2.1%減)予想としている。

 半導体事業は前期同様にAIサーバー向けなどが増加、特に上期は大手GPUメーカーに加えハイパースケーラ向けのASIC関連案件も増加見通し。上期は計画比14億円増額し90億円予想(同期比9.0%増)、下期もAIサーバー向けソケットの続く見通しで下期100億円(計画比10億円増額、同期比27.1%増)を見込む。なおAIサーバー向け以外は回復が遅れ低調に推移するとみている。
ライフサイエンスは一部量産品の生産終了で上期はQ2偏重で上期2億円減額、下期は計画通り予想。


 デジタルソリューションは光通信デバイス向けが既存ユーザー向けの1.6T光トランシーバー向け新製品が量産の遅延が影響し上期9億円(計画比4億円減額、同期比69.8%減)となる見通しで、下期についても14億円(計画比5億円減額、同期比26.9%減)となる予想。LED拡散レンズは底ばい継続と見られることから光通信デバイス向けが全額減額となっていると見られ、年度で21億円(計画比9億円減額、前期比67.4%減)とした模様。
エナジーセービングは昨年好調だったプリンター部品が不調、加えて自動車の電装化に伴う低騒音・高効率ギアの新規製品の量産遅れが影響し上期65億円(計画比8億円減額、同期比7.1%減)、下期も72億円(同5億円減額、同2.8%増)予想とした。

 経常利益の見通しも変更しておらず、増減見通しの開示がなく期初計画を踏襲している様子。期初計画では円高による為替影響が12円円高想定で18.71億円、トランプ関税の影響額7億円、マーケティング強化やベースアップによるコスト増6億円の減益要因に対し、為替除く増収効果、収益性改善効果で7億円の増益効果を見込でいた。現状、Q1で社内目標を多少上振れたとのことから、大きな変更はないと見られる。
現状、自動車関税については15%への実施が不確定ではあるものの、Q1での関税影響はほぼなかったとのことで、27.5%想定に対しては今後下期に影響が軽減される可能性がある。また為替前提に対しても多少円安に推移する見通し。一部デジタルコミュニケーションでの1.6T対応品の出荷遅れが懸念されるものの、半導体部門の増額で補い、会社計画に並の収益が確保されよう。

 

 

28/3期に売上高500億円、営利80億円目標もハードル高い

 同社は中計計画として28/3期に売上高500億円(決算発表資料では足し合わすと530億円となるが為替の関係で大枠500億円とのこと)、営利80億円を目指すとした。基本的にAIインフラ投資が加速、GAFAMの設備投資による支出が23年の1510億ドルが24年に2460億ドル(63%増)、25年には3200~4000億ドル(30%~63%増)が見込まれる。その後もAmazonやMicrosoftは年間1,000億ドルをはるかに超える支出を計画、AlphabetとMetaも800億ドルから1,000億ドル規模の投資を行う予定など高水準の投資が続くと見られる。このため同社の半導体、光通信事業の拡大が続く見通し。また車載関連でも電動化で全部門の増収寄与が見込まれるとしている。収益性についてもニッチな分野でイノベーションセンターの設置で顧客ニーズを的確にとらえ、事業別に高付加価値製品群の構成比をアップし収益性も回復を目指すとしている。


 

 

 具体的には半導体事業では250億円(25/3期比55%増)と一番の増収率を見込む。すでに26/3期は期初計画を24億円上回る190億円に増額、AIサーバーではGPUのさらなる拡大が期待されるほか、GAFAMのようなハイパースケーラ向けのASIC関連の伸びが加わる見通し。また学習型AIデータセンターから推論型AIデータセンターへの拡大も見込める。さらに回復の遅れている汎用サーバー、モバイル、車載SoCなどのテスト需要も27/3期には本格的な回復が見込まれる。なお光を含む次世代半導体のテスト市場への参画を図る計画。同社は独自の微細加工技術と高機能樹脂の応用技術で、0.25mmピッチ、3,000ピンを超えるような微細化・多ピン化が進む先端半導体の開発・生産に対応可能なICテストソケットおよびバーンインソケットを提供している。

 現在、半導体の熱対策が焦点となっているが、ヒートシンク付きソケットの放熱性最適化や、高周波測定を可能にする「カプセルコンタクト」のような低インダクタンス設計、高温環境下での耐久性を高める「ESめっき」や「カーボンコーティング」といったコンタクトソリューションなどを提供している。今後、複雑化する先端パッケージに対応したソケット設計で受注拡大を目指す。なおユーザーとしてAMDなどAI向けのGPU半導体ユーザーとのつながりに加え、ハイパースケーラ向けASIC半導体や汎用データセンター向けASIC半導体メーカーなどの案件も増えると見られ、半導体事業では計画上振れ達成も視野に入ってこよう。


 デジタルコミュニケーションでは70億円(25/3期比43%増)を見込む。LED拡散レンズは成熟製品で横ばい、中心は光通信デバイスで60%程度の伸びを見込んでいるとみられる。足元は1.6T対応のパラレル通信向けレンズアレイの量産遅れや800G対応の在庫調整の影響で26/3期は大幅な減収を余儀なくされた。しかしこの分野は設備投資の遅延や技術的な認定などの要素で需要の谷間となっており、26/3下期以降に本格的な拡大が見込める。ところで同社の主力製品のレンズアレイは光トランシーバー(Optical Transceiver:高速データ通信を実現するためのコンパクトな光モジュールで、主にデータセンターや通信機器で使用される)における光信号の効率的な入出力と多チャネル化を可能にする、極めて重要な役割を果たす光学部品である。非球面レンズを採用し高速通信向けのVCSEL/PDに最適化、レーザー光の強度調整用に光減衰材料も使われる。具体的にVCSELやLDなどの発光素子から出た発散光を行光(コリメート光)に変換し、受信側では平行光をPDに効率よく集光する。また多芯ファイバアレイ(例:MPO/MTP)との正確なアライメントを行い、単一ファイバと比べ、マルチチャンネル(例:4チャネルx25Gbps=100G)を効率的に伝送が可能で、光ファイバとの結合効率向上により損失を低減させる。


 さらに非常に小型のレンズを1つの基板に多数配置し、多チャネル光信号の同時入出力をコンパクトに実現でき、QSFP-DDなどでは8チャネル送受信にも対応しスペースの有効利用が活用できる。しかも樹脂モールド製は、ガラスレンズと比べてコスト低減でき、同社のような高精度の金型技術があれば再現性が良く、量産により低コストでユーザーに提供できることから高いシェアを獲得している。現在、AIデータセンターでは800G対応の設備が中心となっているが、すでにマルチチャネル化の加速(8→16チャネル)や、波長多重(WDM)技術との融合でさらに高密度化が要求され、1.6T対応での設備投資が始まろうとしている。現在、次世代のAIデータセンターでは4つの異なる電圧レベルで情報を伝送する変調方式で、1秒間に112ギガシンボル(112Gbaud)を伝送するPAM4(Pulse Amplitude Modulation 4-level)の採用が計画されている。ただし高速伝送に伴う信号の歪みや減衰による信号の劣化が課題となっている他、周囲のノイズの影響を受けやすく、誤り率が増加する可能性があるなどの課題が指摘されるなどで採用遅延が生じている模様。

 今後、課題解決が進めばPAM4は高速データ伝送において特にデータセンターやネットワーク機器で利用が加速するとみられ、同社の1.6T対応のレンズアレイの需要が27/3期以降に拡大が見込める。なお同社は2024年7月にAI・クラウド向け次世代MMF(マルチモードファイバー)光伝送技術でも新たな開発を進めた。VI Systems GmbH(以下、VI Systems社)と提携しマルチアパーチャ・シングルモードVCSEL(MA SM VCSEL)と最適化されたプラスチック光学部品を組み合わせ、AIおよびクラウドコンピューティングが要求する高速(100G/200G/レーン)データセンター相互接続でMMF伝送距離を大幅に拡張するもの。この技術はMMFの従来の制限要因であった色分散とモード分散に直接対処し、106Gbpsデータレートにおいて、従来のMM VCSELと比較し2~4倍長いOM4 MMF上で200mを超える伝送距離を達成している。現在、AIによるデータセンター帯域幅への需要が急増、短距離シングルモードファイバー(SR-SMF)、シリコンフォトニクス(SiP)、Co-PackagedOptics(CPO)との競争で、MMFが本来持つコスト優位性を維持しつつ性能を向上ができる。このほか、電磁波を効率よく集束・放射するために誘電体レンズを用いたレンズアンテナなどは60~300GHzのミリ波レーダー、6G用途に使える小型レンズアンテナとしても注目される他、医療用機器、IoTなどでも利用が見込まれる。このようにデジタルコミュニケーション事業は新製品の投入が相次ぐが、本格回復が27/3期になると見られ、中計予想の70億円には届かないと見られる。

 全体として27/3期はAI半導体について新技術利用の先端デバイスの量産が本格化し、同社半導体向け需要が23/3期の234億円に肉薄が見込める。また光通信部品も1.6T対応の次世代製品群がAIデータセンターなどで需要が高まり、改めて需要回復から売上の回復が期待される。エナジーセービングについてはトランプ完全問題やEV投資への見直し影響から、伸び率が緩やかにとどまろう。このような状況で、27/3期は半導体事業の売上更新、デジタルコミュニケーション事業の回復が見込まれ23/3期売上を上回ると思われるが、28/3期は期ズレや自動車関連の電装化の見直しもあり、中計予想の達成はハードルが高いとみられる。
株価は生成AI向けに光通信デバイスの伸長を囃し、2024年1/22には15040円まで駆け上り、その後収益悪化で値を下げ続け、25/3期予想が増益予想となったものの割高感が拭えず下げを続け、2025年4/7には3240円と2年前水準まで落ち込んだあと、多少反発していた。今回、26/3Q1で半導体向けが増額修正となったことで株価が反応、7/28の4190円から7/30には5610円まで急騰し、一服した状況にある。現状、会社26/3期予想EPS237.69円に対しPER21.3倍はプライム電機平均PER17.9倍比で若干割高、同業の山一電機9.9倍に対し割高となっている。業績的には本格拡大が27/3期になること、トランプ関税問題や電動化の遅延等不透明な要素が多く、当面ニュートラル継続としたい。
*図・写真は同社決算説明会資料、HP製品パンフレットから添付

 

 

 

*山一電機(6941)、ヨコオ(6800)、日本マイクロニクス(6871)との比較

 

 

 

(H.Mirai)

 

 

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