26/3期は上期不振影響大きく1.3%増収29.0%営利減、円高で45.2%軽常減予想と低迷に
株価1388円(8/12) 時価総額398億円 発行済株23850千株
PER(DO26/3期予20.5X)PBR(0.63X) 配当(26/3予)48円 配当利回り:3.5%
要約
・26/3Q1は0.6%増収ながら30.5%営利源と構造改善費用、mix悪化、円高影響で利益低迷
・26/3期予想を開示、上期不振から1.3%増収29.0%営利減、円高で45.2%軽常減予想
・中期経営目標で27/3期にコア事業で売上高1000億円、営利100億円目指すもハードル高い
26/3Q1は0.6%増収ながら30.5%営利源と構造改善費用、mix悪化、円高影響で利益低迷
26/3Q1決算が8/6に開示され、同日漸く26/3期予想が開示された。26/3Q1は売上高210.04億円(0.6%増)、営利7.34億円(30.5%減)、経常利益3.11億円(84.6%減)、税引利益3.20億円(81.5%減)と構造改善費用、mix悪化、円高影響で利益低迷となった。
セグメント別ではVCCS(車載通信機器)が米国関税の駆け込み需要と6月の反動減から販売環境が激変した。このような中で主力のシャークフィンアンテナ/GPSアンテナが円高もあり減少、売上高は136.15億円(5.7%減)となった。利益面では生産効率向上や円高に伴う海外生産拠点における費用低減が見られた。一方、減収影響や労務費増加、中国拠点での事業構造費用計上などがあり、結果として営業利益は6.15億円(5.9%減)と低迷した。地域別では欧米が68.21億円(7.9%減)、アジア20.96億円(19.9%減)、日本は自動車生産の正常化で46.98億円(6.5%増)と増加した。
回路検査コネクタ(前期よりCTC)は売上高43.72億円(21.2%増)ながら営業利益は2.19億円(42.1%減)と低迷した。セグメント別売上では、主力の後工程のテストソケットがインテル向けの不振が継続した。一方でNVIDIA向けを手掛けるOSAT向けなど生成AI関連の取り込みで増加し、増収を確保した。またクアルコムを中心とする前工程向けはターンキービジネスが増加した。SAWフィルタなど高周波対抗電子部品向けのYPXもハイエンドAIスマホ向けなどでスカイワークス向けが増加した。一方、利益面では原材料高に加え労務費造によるコストアップがあり、さらに円高影響が加わり、MIX悪化もあり大幅減益となった。
無線通信機器(前期よりFC・MD)も売上高26.67億円(3.0%減)、営利0.88億円(61.0%減)となった。高収益のスプリングコネクタが米国関税影響からPOS向けで再度在庫調整を余儀なくされ低迷した。またサムソンワイヤレスイヤフォン向けも一部販売の後ろ倒しとなり低調に終わった。MD(医療)用はベンチャー向けが伸び悩むも大手向けのカテーテル用部品やユニット製品が増加し、全体では増収を確保した。利益面では収益性の高いPOS向けの減少から減収影響に加えMIX悪化、円高影響もありも大幅利益減に。
インキュベーター事業は売上高3.47億円(4.0倍)、営業損失2.00億円(0.05億円良化)と、6月から光波事業が加わり大幅増収に。
全体を通じ、米国関税影響がVCCS、FC事業に影響、CTCはAI関連好調もMIX悪化で悪化、円高影響もあり利益低迷、収益低迷を余儀なくされた。
26/3期予想を開示、上期不振から1.3%増収29.0%営利減、円高で45.2%軽常減予想
今回、26/3Q1実績を踏まえ、26/3期収益予想を正式に開示、売上高840億円(期初イメージ予想比20億円減額、前期比1.3%増)、営業利益30億円(同18.70億円減額、前期比29.0%減)、経常利益21.50億円(45.2%減)、税引利益16億円(28.2%減)予想と大幅減額予想とした。
事業別ではVCCSが売上高527.5億円(イメージ図比6.50億円減額、5.7%減)、営利20.5億円(同6.5億円減額、27.8%減)、CTCが売上高180億円(同4.0億円増額、15.3%増)、営利14億円(同6.0億円減額、5.4%減)、FC・MDが売上高120億円(同13.5億円減額、3.5%減)、営利3.5億円(同5.2億円減額、55.7%減)、インキュベーション売上高26億円(同4億円減額、9.6倍)営業損失8億円(同1.0億円悪化、0.86億円改善し赤字縮小)予想(期初イメージは推定)とした。
現状、VCCS事業については米国向けで関税15%を織り込み、5%程度は想定より厳しい数字を見込んだ模様。具体的に米国向けは同社米国販社向けに関税分を上乗せて計上、米国販社は関税分を顧客に負担してもらう形で関税分を吸収するとしているが、自動車関税の実行見通しが不確定で、6月には駆け込みの反動減が現れているとのことで、さらなる減額もあり得る。
CTC事業は主力の後工程でエヌビディアGPU向けの検査用ピンの供給が更に拡大すると見られる。不具合の解消もできているとのことで、AIGPU向けの需要拡大が見込まれる。またGAFAが独自のAI半導体チップ投入を行っているが、同社はそれらの企業の開発するAI半導体向けではテストソケットの供給も始める計画。一方、自動車の安全、自動運転のための車載半導体についてはNPXやクアルコムなどへの車載SoCテストソケットの拡大も見込まれるが、多少投入が遅れると見られ、加えてインテルの不振も継続しており、これらが伸び率を押し下げている模様。
前工程ではクアルコムがAIスマホ、AI搭載ハイエンドPC向けに新製品の投入が期待され、RF対応が必要不可欠となるため、高周波対応で技術を有する同社の前工程向け需要が継続的に拡大しよう。YPXについては従来のSAWフィルタ、BAWフィルタともにハイエンドスマホ、PC向けで新モデル等から今期も伸びが期待される。全体を通じ、先端半導体向けの拡大が見込まれ、売上については会社予想をさらに上回る可能性がある。一方で利益面ではピンなどで原価高が著しく、加えてMIX悪化も悪化、円高も影響する。また一部製品の不具合影響がコスト高となった可能性があり、上期は特に利益の落ち込みがあり(26/3H1が営利5億円に対し26/3H2は10億円予想)、下期挽回するものの、通期利益は売上増額でも利益減額見通しとなったと判断される。
スプリングコネクタ事業については世界景気のスローダウンが懸念される中で、トランプ関税の影響から、利益低迷が懸念される。またタブレット向けなどの新規需要があとずれしているようで、これも減額要因。メディカル向けは開発品の投入が始まり、増収増益が期待される。
インキュベーション事業については、タムラ製作所より光波事業を6/1付けで吸収分割を受け、事業継承分が26/3Q2以降計上されることから、26/3H1が売上高9.5億円、営業損失4億円に対し下期は売上高16.5億円、営業損失4億円予想となっている。
全体を通じ、売上面ではCTC事業の収益上振れが見込まれるが、その他が減額懸念から、利益面でも会社想定に対し減額懸念がある。
中期経営目標で28/3期に売上高1000億円、営利100億円目指すもハードル高い
同社は昨年、中期経営計画として27/3期に売上高965.5億円、営利109.5億円、29/3期に売上高1087.5億円、営利137.5億円を目指す経営目標を公表した。しかし25/3期決算発表時に26/3期は不透明要素が多いものの、27/3期以降は正常化する前提で、目標の修正を行い、28/3期に売上高1000億円、営業利益100億円、29/3期売上高1080億円、営利129.6億円との新たな目標値を開示した。
事業別に全体の柱となるのがCTC事業で、28/3期売上高240億円、営利30.8億円を目指す。AI半導体を中心に先端半導体での、新たなテストニーズ、新規顧客の拡大で事業拡大を図る。特にAI半導体向けはNVIDIA向けの台湾OSATへのプローブピン供給拡大に加えテストソケット投入がカギを握るが、すでに GAFAの一角から受注を獲得、検査ソリューション分野などで協業して事業拡大を目指す。また微細化の進展で、再配線前ウエハテストについてMEMSプローブを利用した全く新しいテストに対応する計画。全体として高周波、微細対応で高い技術を持つだけに、26/3期計画を上回る拡大が期待される。
VCCS事業では車両進化に伴う高付加価値品の投入、ADAS製品への参入を見込み、28/3期240億円を目指す。ただし昨今の自動車関税の問題、さらにはEV伸び悩みなどもあり、足元の事業環境が悪化、この動きは27/3期にも影響を及ぼすと見られ、中計計画の達成のハードルは高いと見られる。
FC分野で民生コネクタではスプリングコネクタのコスト削減を実行し、Highボリューム市場に対応した低コストスプリングコネクタも開発している。ただし足元はトランプ関税の影響もあり26/3期は収益の下振れが顕著となった。この動きは27/3期にも継続すると見られ、この間に中国勢の価格攻勢の激化も懸念され、中計予想未達懸念がある。医療向けではベンチャー等と協業し、新規需要を取り込む計画も、多少製品投入が遅れがちで、同事業も中計未達懸念がある。インキュベーションでは26/3期に光波の寄与が9ヶ月分程度寄与すると見られ、27/3期からはフル寄与、中計想定40億円は達成可能と見られる。
このように、同社の4事業において、特にCTC事業が成長の柱となり上振れが期待される一方、その他事業においては不確実要素が生じており、中計未達の懸念がある。
株価は25/3期決算が計画比若干上振れで着地、26/3期について計画未発表も半導体事業拡大は続くとの見通しで、緩やかな上昇となっていた。しかし8/6の26/3Q1決算開示でQ1が大幅減益であったこと、26/3期予想も45.2%経常減益予想としたことで8/7株価は急落し安値1356円25/3期決算発表時の株価に逆戻りした。現在、26/3期会社予想EPS68.64円に対し PER19.2倍はプライム電機平均PER18.2倍に対し平均水準。但し、山一電機10.9倍比較で割高、エンプラスの21.8倍に対しては多少割安感がある。NVIDIAのGPU検査用ピンの高シェア納入、クアルコム向けの高周波デバイス向けの拡大などが期待されるが、思いのほか収益性が改善されておらず、車載アンテナ事業やPOS用スプリングコネクタなどがトランプ関税影響を受けるなどで収益改善を阻む要素となっている。このためのAI半導体関連として評価が高まると見られるものの、構造改革半ばということで、ポジティブからニュートラルへ評価を引き下げたい。
(出所:図は25/3期、26/3Q1決算説明資料より添付、もしくはIRユニバースで加工)
*山一電機(6941)、エンプラス(6961)、日本マイクロニクス(6871)との比較
(H.Mirai)