10月21~23日にわたり開催された『オートモーティブワールド2020』名古屋展。
展示紹介の続編でホットアルミ大手の豊栄商会について。
豊栄商会
創立50周年を迎えた同社が現在主として手掛けているのは、アルミニウム合金の溶湯。1万トン/月の生産量をトヨタ中心に供給している。
同社のブースには、独自に技術開発し30以上の特許を保有するという「ALサーブシステム」の内、取鍋の実物大が展示されていた。
この取鍋は溶解したアルミ溶湯を受湯しそのままトラックで輸送できる他、鋳造マシンへの配湯に際しても従来の物と比較して省エネルギー化・省スペース化・作業工程の簡素化を実現した独自開発物となっている。
※取鍋
※「ALサーブシステム」全体模型
同社開発研究室の佐藤勇一氏によれば、溶解原料(アルミスクラップ、ベースメタル)は自社で回収する他に輸入品の割合も多い。
また、現在コロナの影響は落ち着いてきており受注は戻ってきている状況だという。
一方で同社は、これからは製造の比重をアルミ溶湯からインゴットへ移していく方針だという。
インゴットの製造販売自体は以前から取り組んでおり、メインのADC12を、手軽に使用できる200gの単位から提供している。
※アルミインゴット200g


アルミインゴット吊り下げマシンは同社開発装置
アルミ合金相場に関しては、近頃は中国が高品質低価格なものを出すようになってきている影響から全体価格が低下する傾向にあるという。*但し、足元は中国塊の高値に国内が牽引されている状況。中国産ADC12の輸入価格はトン当たり1950~1980ドル(CIFjapan)で、日本国内工場持ち込み価格はキロ当たり220~225円となっている。
中国産ADC12相場の推移(USD/ton CIFjapan)3か月

また、同社はこのようにアルミスクラップを原料とした溶湯、インゴットを手掛ける傍らで亜鉛のリサイクル事業も手掛けており、この分野でも独自開発技術が生かされているという。「真空脱亜鉛システム」というもので、真空脱亜鉛装置を使って亜鉛めっき鋼板から亜鉛と鉄を回収するリサイクル技術だ。
佐藤氏によると、同社の同業者にはアルミスクラップ回収リサイクルを手掛けているトヨタ系列の株式会社スズムラなどがあるが、愛知県内で独立系では豊栄商会だけだということだ。
愛知県が誇る技術会社
ブースの出口には、県や経産省から授与されたという「地域未来牽引企業」「豊田ものづくりブランド」「愛知ブランド企業」の3つの認定証が置かれていた。
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宇佐見聖果
個人投資家向けリサーチ会社の客員アナリストとして上場企業へ訪問取材及び執筆を行う他、複数の受託先において主に株関連ライターとしても活動。私生活では2人の小学生の母として奮闘中。
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