脱炭素の切り札とされる電気自動車(EV)ですが、まだ日本市場では本格的な展開が始まったと言える段階にはないようです。それでも自動車メーカー各社は大胆なEV化を推し進めようとしています。国内では最も実績の多い日産、そしてホンダなど他社も次々とEVへの転換を発表しています。
ごく最近になって、北米市場などで若干陰りを見せているとの報道もありますが、大局的に見ればEV化が進むという世界市場の流れは否定できないように思われます。
さて自動車がEV化すると、何がどのように変化するのか、燃料そしてCO2排出に関するもの、あるいはそうでないものも含めて、予想される変化について少し詳しく見てみたいと思います。
まず、至極当たり前の話ですが「ガソリンスタンドへ行かなくなる」という変化が大きいのではないでしょうか。窓ガラスを拭いてもらったり、ゴミ箱を空にしてもらったりというサービスがなくなる代わりに、「給油のために」時間を取られることはもうなくなります。
家で充電する、という行為と裏表ですが、非常用電源になる(Vehicle to Home: VtoH)という利点も広く謳われています。災害時の電源としては確かに心強いかもしれません。
次に、バッテリーについては長期的に「入替え型」が普及するものと思われます。現状では技術的な困難性がまだ残っているようですが、中国などの先進的地域での普及がきっかけとなり、「入替え型」が普及するのではないかという気がします。どんなに急速充電でも30分は軽く経過する、だったらバッテリーごと入れ替えたほうが速い、という展開にならない方がウソだと思うのです。
実際に、スタートアップベンチャーなどが既存のガソリン車をバッテリー入替え方式のEVに改造するビジネスを始めているのだとか。将来的にEV市場をけん引するのは、もしかして新車ではなく、既存のガソリン車を如何に改造するか、という話になる可能性も小さくないように見ています。
あとは、あまりCO2に関する話ではないのですが、EVの車内は静かなので、カーオーディオが流行るのではないかと思っています。その他、静けさを付加価値として訴求できるプレーヤーが市場からの信頼を勝ち得るものと思います。またEVは、良く「冷暖房という弱点を抱えている」と言われていますが、この弱点を回避するような技術開発は有望と見做される可能性が高いと言えます。その意味で、ロードサービスやメンテナンスビジネスにも変化が生じることでしょう。
いずれにしても、昨年くらいまでは定説化していた「バッテリーの寿命がEVの趨勢を決める」という話以外にも様々な論点が出てきており、はたしてEVが現状をそのまま拡大した形で市場に定着するのか、あるいは全く新しいビジネスモデルを前面に打ち出した形になってゆくのか、その展開は予断を許しません。
製造に関わる環境負荷問題はまさにこの部分が大きく、レアメタルを大量に消費するEVは、実はガソリン車よりも環境に悪いのではないか?といった議論もあちこちで目にするようになりました。
そう考えると、入替えバッテリー方式に一日の長がありそうな気がしてきます。カセット式にしてしまえば、技術革新による長時間運転という要件をブラックボックスに押し込めてしまえるからです。やがて、レアメタルをさほど使わず、容量の大きなバッテリーが実現したなら、それを搭載した新型カセットに入れ替えれば良いというのは大きな利点になるでしょう。
入替えバッテリー方式は、使っただけ支払うという決済方法の電子化とも相性が良さそうです。共通インフラの整備が進めば、もしかするとその技術によって裨益するのは自家用車分野だけではないかもしれません。輸送ビジネス全般にも、コスト削減的な魅力を伴って積極的に評価されるような流れが出てくる可能性があるのではないかと見ます。
このように、来るべきEV時代の変化について考えてみることはビジネスの明日を考えることにもつながります。この先少しずつ明らかになって来る新しい時代の新しいビジネスを、あなたも考えてみませんか?
* * *
西田 純(オルタナティブ経営コンサルタント)
国連工業開発機関(UNIDO)に16年勤務の後、コンサルタントとして独立。SDGsやサーキュラーエコノミーをテーマに企業の事例を研究している。国立大学法人秋田大学非常勤講師、武蔵野大学環境大学院非常勤講師。サーキュラーエコノミー・広域マルチバリュー循環研究会幹事、循環経済協会会員
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