日本製鉄のUSスチール買収を巡り、安全保障上の問題の有無を審査する対米外国投資委員会(CFIUS)の審査期限が12月下旬に期限を迎える。買収を巡っては、日本製鉄側の幹部が買収に自信を見せる一方、1月就任予定のトランプ次期米大統領は断固反対の姿勢を改めて表明。思惑が交錯し、不透明感が強まっている。
■安全保障審査は今月下旬に期限、独禁法の審査も控える
Minng.comの12月5日の報道によると、CFIUSは国家安全保障上の懸念に対処するための条項を含む可能性のある取引を承認したり、大統領が買収を阻止したりするよう勧告することができる。また、審査期間を延長することもできるという。
日本製鉄がUSスチールを買収するためにはCFIUSによる認可に加え、米国司法省(DOJ)による独占禁止法関連の審査通過も必要になる。
■トランプ氏強硬姿勢で株価は両社とも下落
日米の姿勢は変わらず平行線だ。共同通信は12月5日、同社が2日に行ったインタビューで、日本製鉄の森高弘副会長が「年内にクロージング(完了)できるとの確信を強めている」と語ったと報じた。森氏は11月後半に訪米し、USスチールの製鉄所の組合リーダーや政治家らと面会。「買収をサポートしようという機運が非常に強くなっている」と感じたという。同氏はまた、石破茂首相がバイデン米大統領に対し、買収計画を承認するよう要求する書簡を出していたと11月に伝わったことについて、日本製鉄側から要求はしなかったが、重要性は認めたと述べたと伝わった。
一方、トランプ氏は12月2日、SNSに「税制優遇措置と関税を通じ、USスチールを再び強く偉大にする。大統領として、私はこの取引を阻止する」と投稿し、日本製鉄による買収に反対する姿勢を改めて強調した。SNSでは「買い手は気をつけろ」と日本製鉄に忠告もした。
発言を受け、翌12月3日の東京市場で日本製鉄株は一時下落し、米国市場ではUSスチール株は一時10%超と急落。買収の先行きに対する不安が広がった。
(IR Universe Kure)