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PILLAR(6490) 25/3期決算説明会メモ ややポジティブ継続

2025/05/21 09:25

25/3期1.1%減収20.2%営利減、26/3期0.8%減収、9.1%営利減予想も受注拡大期待

株価3735円(5/16) 時価総額 935億円   発行済株25042千株 

PER(26/3DO予:11.5X)PBR(1.17X) 配当(26/3会予)105円 配当性向2.8%

 

要約

・25/3期1.1%減収20.2%営利減で2/6減額予想比上振れもスマホ、PC、車載不振響く

・26/3期半導体の需要回復遅れ、コスト増、円安一巡で0.8%減収、9.1%営利減予想

・27/3期は先端半導体製造装置向け拡大と新製品群寄与で再度最高収益更新期待

 

25/3期1.1%減収20.2%営利減で2/6減額予想比上振れもスマホ、PC、車載不振響く

 

 流体制御関連の総合シールメーカー。半導体製造装置向けフッ素樹脂製品に強味を保ち、特にフィッティング等で90%シェア。5/14に25/3期決算が開示され、同日WEB決算説明会がなされた。25/3期は売上高579.88億円(2/6減額修正予想比9.88億円増額、1.1%減)、営業利益113.35億円(同3.35億円上振れ、20.2%減)、経常利益114.74億円(同1.74億円上振れ、24.0%減)、税引利益82.99億円(同2.99億円上振れ、23.0%減)となった。受注額は551.89億円(9.2%増)、受注残高123.17億円(18.3%減)と半導体関連の回復と能力増強効果で受注の消化が進んだ。

 

 セグメント別ではフッ素樹脂製品を中心とする電子機器関連が売上高390.34億円(同3.34億円増額、4.2%減)、営利8810億円(同1.90億円未達、21.7%減)、受注355.02億円(7.4%増)、受注残高78.35億円(28.6%減)に。売上ではスマホやPC及び車載向け半導体の需要回復が見られず生成AI向けなど特定用途は伸びたものの、半導体向けでは24億円の減収、また免振装置も一服し4億円の減収など、全体で30億円が影響。これに対し、価格値上げや円安効果で16億円の増収効果があり、全体では14億円減収に。利益面では円安も積極的な投資による固定費負担増などで減益に。ちなみに最大手ユーザーであるスクリーン向けは96.54億円(26.3%増)と、半導体製造装置各社が収益一服の中でスクリーンの寄与は大きいものの、スクリーン向け以外で10%程度の減収となったことが影響している。

 

 シール事業を中心とする産業機器関連は売上高189.17億円(同6.17億円増額、4.6%増)と過去最高額更新となったが、営利では25.01億円(同5.01億円上振れ、14.6%減)にとどまった。なお受注が196.86億円(12.6%増)、受注残48.82億円(18.7%増)となった。産業機器向けはメカニカルシールが半導体製造装置向け、エネルギー、ケミカル向け低調も、石化プラント向けに増加。またタンケンシールセーコウが2期連続最高売上60億円推定(6.5億円増、11%増)と増収となったが、タンケンシール分を除くと全体で2%減と推定される。利益面ではタンケンシールは利益増に貢献も、好採算のCMP向けロータリージョイントの減少(3.3億円減)や償却費、一時費用増などでMIX悪化から全体では減益に。

 

 仕向先別では国内407.62億円(1.9%減)も、タンケンシール向けが60億円(11%増)含まれ、これを除くと348億円推定(4%減)となる。前期好調だった免振装置向けなどの減少などが影響している。海外は172.25億円(0.9%増)で、米国向け38.73億円(15.7%減)と製造装置向けが一服、アジア向けは108.69億円(6.6%増)も、中味は台湾、韓国向けなどその他アジア19億円推定(61%減)を中国向け90億円推定(69%増)の大幅増で補い増収を確保した格好に。

 

 市場別売上(単独ベース)では、半導体・液晶向けが343.33億円(4.1%現)とスクリーン、中国向けが好調、一方でCMP向けのロータリージョイントは荏原やアプライドマテリアルズ向けが減少。土木・建築向けは17.02億円(25.3%減)と、半導体工場向け免震装置、都市再開発向け等が一服。石油・鉄鋼・輸送は46.16億円(17.8%増)と石油市場の予備品、プラント好調。電力・エネルギーは定期修理減で減少した。

 

 営業利益の増減では操業度効果が得られず、MIX悪化もあり販売減影響が2.8億円。また原材料価格、加工費等の影響でコストアップ14億円、減価償却費増などの製造経費増10億円、人件費、R&D費増など11億円増の減益要因に対し、為替影響9.2億円、タンケン好調などでカバー、減額修正比では上振れたものの減益は避けられなかった。

 

26/3期も半導体市場の回復遅れ、円安一服で0.8%減収9.1%営利減予想は下期増額期待

 

 26/3期は売上高575億円(0.8%減)、営利103億円(9.1%減)、経常利益103億円(10.2%減)、税引利益72億円(13.2%減)予想と、半導体市場の回復遅れ、円安一服、設備投資増による償却負担増、R&D増などで2期連続減益予想に。このため、中計計画「One2025」(2023年度~2025年度)の売上高660億円、営利170億円計画に対し、大幅未達予想となっている。

 

 セグメント別では電子機器関連が売上高368億円(前期比5.7%減、中計予想比111億円減額、中計計画比23.3%未達予想)、営利73億円(同17.1%減、中計計画比72億円減額、中計計画比49.7%未達予想)と、半導体市場の回復遅れが影響し、既存で約30億円(値上げ分4億円を含む)の減収を見込む。一方、中国向けでは中国の強化で上海現法の売上増17億円を見込むが、半導体向けでは13億円減予想。加えて免振装置向けも9億円減を見込み、全体で22億円(5.7%減)予想とし、中計に対し大幅減額計画となった。利益面では業容拡大に向けた人件費増、減価償却費増、R&D費増が継続、下期回復型となり操業度効果なども得られにくく、フッ素樹脂のコスト高も影響、さらに円安一巡も影響する見通し。一方、産業機器事業は売上高207億円(同9.4%増、中計予想比27億円増額、15%アップ予想)、営利30億円(同20.0%増、中計計画比.5億円増額、20%アップ)予想と4期連続増収で最高売上更新、利益も24/3期の29.28億円を抜いて過去最高営利更新予想としている。タンケンシールが好調持続見通しの他、CMP向けのロータリージョイントの需要回復、海外の大口案件獲得が見込まれる。利益面ではMIX良化、増収効果で営利最高更新を見込む。

 

 現状、半導体製造装置業界では洗浄装置が堅調、同社最大ユーザーのスクリーンの26/3期収益予想は0.7%減収、営利15.4%減予想ながら、多少増額含みであり、既存ユーザーででは会社想定ほどの減収にはならないと判断、中国向けは依然として好調持続、台湾、韓国向けもボトムを付けるとみられ、同部門の増額が見込まれる。産業機器事業もタンケンシールセーコウの好調持続、CMP向けロータリージョイントは(荏原製作所は25/12期CMP売上を31%増の1870億円と予想)大幅回復見通しのため、会社計画を上回ってこよう。全体として既に受注面ではボトムをうった状況から、下期は本格的に売上が加速し、収益の上振れが期待される。

 

27/3期は先端半導体製造装置向け拡大と新製品群寄与で再度最高収益更新期待

 

 同社は2期前に新中期経営計画を策定、26/3期に売上高660億円、営業利益170億円を目標として掲げたが、半導体生産の回復遅れから中計大幅未達を想定している。しかし27/3期は半導体生産の本格拡大、また先端半導体工程における洗浄工程の頻度拡大が期待される。加えて先端パッケージ、ハイブリッドボンディング、化合物半導体などではCMP工程の拡大が見込まれる。このため改めて洗浄工程やCMP工程の伸びで収益拡大が見込まれる。


 事業別では電子機器事業においてピラフロン製品は耐薬品・耐熱・低摩擦・絶縁性など多くの特性を高次元で備え、半導体装置向け継手は独自のシール構造が盛り込まれ世界的に独占的地位を築いているが、半導体の微細化とともに洗浄工程の頻度増大で市場平均を上回る需要が見込まれる。これはFinFET/GAAトランジスタや3D NAND、集積化・ヘテロインテグレーション(ファンアウト、チップレット実装など)といった高度化に伴い、従来の単純な液浸洗浄では除去困難な汚染が増加するなどで、より高度の洗浄、洗浄回数の増大が見込まれているため。また車載関連ではADAS向けのフッ素樹脂基板なども次世代ミリ波対応で再拡大が見込まれ、27/3期は再度過去最高収益の更新が期待される。産業機器においては半導体の微細化でCMP装置向けロータリージョイントの拡大が見込まれる。これは配線・トランジスタ構造の複雑化、積層化による平坦度の要求がさらに高まりCMPが多用されるためで、3Dデバイスの拡大で27/3期には大きな成長が見込める。

 

 さらに次世代電池、水素のシーリング向けなどに新製品の拡大が期待される。また世界で唯一カーボンを自社生産するメカニカルシールメーカーとして独自技術を有するタンケンシールセーコウ(TSS)が画期的なポーラスカーボンパッドを開発。これは均一な細孔径分布と高い比表面積を実現したパッドで、吸着・触媒反応・イオン伝導の効率を向上でき、エネルギー貯蔵(リチウムイオン電池の電極)や水処理での分離性能向上に役立ち、さらに耐薬品性・耐熱性に優れ、過酷な工業環境(化学プラントや高温プロセス)での応用が可能。今後、同社において半導体搬送用や2次電池電極など応用製品の投入が期待され、産業機器の成長製品に育つ可能性がある。

 

 このように、27/3期は半導体生産の拡大と新製品群の拡大により、再度最高収益更新が期待される。

 

 株価は期初に25/3期会社予想を減益予想としたため6700円から急落、全体相場が下落した8/5には3905円まで下落、その後もさえない動きで2/6減額修正もあり4/7には3775円の安値を付けた。その後多少戻ったものの、26/3期会社予想が微減収減益予想で、2/6の減額修正時の株価に戻った程度にとどまっている。現在26/3期会社予想EPS308.68円に対しPER10.8倍はプライム市場機械平均PER14.6倍に対し割安感がある。なお類似事業を行うニチアス12.0倍、バルカー10.8倍とほぼ同じ水準、イーグル工業9.7倍に対し割高感がある。同業界の代表企業であり、主力ユーザーにスクリーン、またこれからAI半導体向けで急拡大が見込めるCMPの荏原などがあり、受注拡大から26/3期は収益上振れが期待され、悪材料を織り込み。ややポジティブ継続と考える。

(図表、カタログは会社説明会資料、HPから添付)

 

*バルカー(7995)、ニチアス(5393)、イーグル工業(6486)との相対比較

 

 

(H.Mirai)
 
 
 
 

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