25/3期設備投資足踏みで0.7%減収20.0%営利減、26/3期半導体回復で3.1%増収
株価2916円(5/23) 時価総額545億円 発行済株18,689千株
PER(26/3DO予:10.7X)PBR(1.02X) 配当(26/3予)150円 配当利回り:5.1%
要約
・25/3期設備投資足踏みで0.7%減収20.0%営利減も受注は3.0%増とQ2底に増加
・26/3期半導体回復で3.1%増収23.5%営利増予想は再生ウエハ事業売却で実質8%増収
・中計予想変更なく27/3期に売上高800億円、営利120億円目指すが未達成リスク高い
25/3期設備投資足踏みで0.7%減収20.0%営利減も受注は3.0%増とQ2底に増加
配管、パッキンなどシール材大手。 25/3期決算が5/14公表され、同日説明会が実施された。25/3期は売上高601.13億円(期初予想比23.87億円未達、2.6%減)、営業利益56.69億円(同8.31億円未達、20.2%減)と期初計画を下回って着地した。なお受注は603.54億円(3.0%増)とQ2をボトムに拡大、受注残高も110.31億円(2.2%増)に。
事業別にシール事業は売上高406.16億円(期初計画比4.16億円上振れ、11/14修正計画比10.84億円未達、9.3%増)、営利52.74億円億円(同1.74億円上振れ、同2.26億円未達、68.0%増)に。市場別売上では先端産業向けが155億円(期初計画比5.50億円上振れ、31%増)と高シェアのエラストマー製品でフッ素樹脂ガスケット、Oリング等の高機能製品が内外半導体産業向けに下期急回復。機器市場向けは142.億円(同7.5億円未達、5%減)と産業機械の不振で低調、プラント向けは108.5億円(同5.5億円上振れ、5%増)と定期修理増が寄与した。利益面では先端産業向けの大幅回復で利益率が向上。落ち込みが影響、MIX悪化で大幅な利益減額に。また受注は417.16億円(15.5%増)となり、過去最高の受注額、受注残高も過去最高となった。
機能性樹脂製品事業は売上高163.34億円(期初計画比28.66億円未達、11/14修正予想比13.66億円未達、24.3%減)、営利5.67億円(同8.33億円未達、同5.33億円未達、85.8%減)に。先端産業向けフッ素樹脂加工品は堅調に推移も、特殊フッ素樹脂タンクが顧客の設備投資端境期で大幅減となり、売上高83.5億円(期初計画比12.5億円未達、30%減)と大幅減に。プラントも41.5億円(同19.5億円未達、31%減)と同様に大幅減。機器向けは37.5億円(同2.5億円上振れ、7%増)となった。利益面では特殊タンク不振で減収影響が大きく、稼働率低下で大幅減益に。受注も158.83億円(17.4%減)と、フッ素樹脂タンクの反動減が影響、Q2にボトムを打つものの、回復が鈍い状況が続いている。
その他事業は売上高31.61億円(期初計画比0.61億円上振れ、11/14修正計画比0.61億円上振れ、5.3%増)、営業損失1.72億円(同1.72億円未達、同0.721.38億円悪化し赤字拡大)となった。ウエハ再生が28億円(同0.5億円上振れ、1.9%増)と堅調に推移も、サービス事業は徐々に成果が出つつあるもまだ横這い。利益面では再生ウエハ設備トラブル影響がなくなったものの、新規事業が伸びず開発投資先行で赤字拡大に。なお3月に再生ウエハ事業を行うバルカーFFTを売却、同事業から撤退した。これに伴い、特別利益として5.07億円を計上している(売上高は25/3期28億円、営業利益は推定3億円前後)。
市場別では先端産業向けが267億円(期初計画比6億円未達、11/14修正予想比20億円未達、0%増)、中身はシール製品が31%増、逆に機能性樹脂は特殊タンク減で30%減と、極端な動きに。機器市場は売上高180億円(同5億円未達、同2億円上振れ、3%減)と、こちらも特殊タンク減が影響した模様。プラント市場は150億円(同14億円未達、同7億円未達、8%減)。
仕向先では国内410.22億円(同35.78億円増額未達、同20.78億円未達、2.1%減)、海外190.90億円(同11.90億円上振れ、同3.10億円未達、3.7%減)で、北米が49.52億円(0.2%増)と円安が寄与、アジア向けは140.40億円(5.1%減)特殊タンクの減少が影響した模様。
営業利益の増減分析では売上減少、MIX悪化に加え、原材料の評価損及び減損が8.16億円あり、為替円安で売上が8億円嵩上げとなったものの、売上総利益で14.62億円の減益要因に。販管費では経費削減効果で1.55億円があったものの、人件費や減価償却費などのコスト高があり、為替差益は営利段階で2億円あったもの、全体で大幅営利減に。また特別利益ではVFFTの売却益5.07億円、出資金売却益1.79億円に加え、投資有価証券売却益4.06億円も計上、一方で構造改善費用5.27億円、減損1.41億円などの特損計上もあり、税引利益では減益率が縮小している。さらに配当については減額修正ながら150円を維持した。
26/3期半導体回復で3.1%増収23.5%営利増予想は再生ウエハ事業売却で実質8%増収
26/3期会社予想は売上高620億円(3.1%増)、営業利益70億円(23.5%増)、経常利益70億円(16.7%増)税引利益48億円(2.6%増)予想と、下期に半導体の回復を見込み、増収増益予想とした。なおVEET売却により、従来の事業区分変更を行っている。またVEETの分を除く(25/3期売上高28億円、営利3億円推定)と、8%増収、30%営利増予想となる。
新事業別では製品別ではシール製品が売上高440億円(8.2%増)、営利56億円(19.1%増)予想。下期にかけて半導体設備投資が本格拡大し、シェアの高い高機能エラストマー製品(オーリング、ボンデッドゲートシール)などで真空機密が重要とされるエッチング装置やCVD装置などの先端市場向けに拡大予想で、過去最高収益の更新が見込まれる。他方、機能性樹脂製品も売上高180億円(10.2%増)、営利14億円(65%減)予想と、特に利益の大幅回復を見込む。世界シェア3割を持つ好採算の半導体製造用高純度薬液保続特殊タンクが緩やかに受注回復、下期には本格拡大を見込む。またベローズやライニングバルブなどの加工製品も半導体製造装置向け、半導体工場向けに回復が見込まれる。利益面では特殊タンクの回復、高機能樹脂製品も拡大見通しで、減損影響も軽減されることから営利では大幅回復を見込む。
市場別では先端市場向けが283億円(6.0%増)と上期は低調も、下期に特殊タンクの回復、半導体製造装置向けの高機能製品の拡大などで同期比16.9%増を見込む。機器市場は180億円(0%増)と産業向けの低調継続を見込む。プラントは153億円(2.0%増)予想と、大型案件がなく定修などで緩やかな伸びを見込む。
利益面では増収効果に加え、MIX良化が期待される他、前期のような減損(8.16億円)を見込まず、総利益で15.6億円の増益効果を見込む。また固定費増を経費削減などで補い、大幅営利増益を見込む。
全体として先端産業向けが下期加速して拡大すると見られ、特殊タンクも改めて受注回復で機能性樹脂製品の先端産業向けの回復も本格化する見通し。既に能力増強投資もほぼ実現されており、受注拡大に応じて順調に生産対応できるとみられる。さらに構造改革で再生ウエハ事業の売却なども進めており、26/3期は下期多少上振れが期待される。
中計予想変更なく27/3期に売上高800億円、営利120億円目指すが未達成リスク高い
同社は新中計としてNF2026を策定、27/3.期に売上高800億円、営利120億円の実現を目指す予想とした。事業別では戦略製品の拡大等で先端産業向け売上高を420億円、売上高比率で50%超を目指し、機器分野は横ばい基調、プラント事業は課題解決に向けたソリューション事業拡大などで190億円を目指すとしていた。また新規分野についてAI/ITソリューション事業を30億円まで拡大する方針としていた。しかし現状、25/3期収益が低迷、26/3期も再生ウエハ事業売却などもあり、売上面での達成はかなり難しい。利益においても生産能力増に対し稼働率が悪く、先端産業向けも26/3期会社予想283億円に対し48%増が必要で収益性アップも限定的で、23/3期88.77億円を若干上回り最高営業利益を期待するものの、営利120億円目標の達成はさらにハードルが高いとみられ、
株価は25/3期減益予想としたことで4630円から急落、8/5に3000円まで下落、その後も11/14に減額修正しさえない動きで終始、4/3には3000円大台割れとなり4/7には2493円安値を付けた後多少戻した状況にあるが、26/3期増益予想を出したもののさえない動きに終始している。現在、会社予想EPS272.8円に対しPER10.7倍と、ピラーの12.0倍、イーグル工業の9.8倍、ニチアス12.0倍と似通った水準にあり、プライム市場機械平均PER14.6倍、化学平均16.8倍に対し割安である。26/3期は半導体関連の本格回復で収益の回復が見込まれるものの、27/3期中計達成は難度が高くニュートラル継続としたい。
*図表、写真は会社説明会資料、HPから添付
(H.Mirai)