2025年12月12日、東京大学本郷キャンパスにある山上会館大会議室において、「第4回 革新的なエネルギー変換を可能とするマテリアル領域シンポジウム」が開催された。本稿は「第4回 革新的なエネルギー変換を可能とするマテリアル領域シンポジウム前編」に引き続き、ARIMにおける東京大学の取り組みについて紹介する。
東京大学ARIM代表者:幾原雄一氏
東京大学ARIM代表者の幾原雄一氏は、浅野キャンパスを拠点に展開するナノテクノロジー分野の研究基盤整備について紹介した。東京大学は微細構造解析および微細加工を中核とする研究開発を長年にわたり推進し、国家プロジェクトを通じて世界トップレベルの成果を創出してきた。
こうした実績が評価され、2021年度から文部科学省のマテリアルリサーチインフラ事業に採択され、体系的な研究支援体制を構築している。電子顕微鏡を中心とした先端分析装置群は高い稼働率を維持しており、XRDやSIMSなども含め、多様な研究ニーズに対応している。加えて、東京大学が中心となって構築したARIM-mdxデータシステムにより、実験データとシミュレーションデータを統合的に扱う環境を整備している点も特徴である。
全国26法人が参画するARIMの中で、情報基盤センターと連携しながら研究基盤の高度化を進め、企業や研究機関との連携を通じて、微細構造解析や新材料開発の加速を目指している。
東京大学ARIM微細加工部門:三田吉郎氏
東京大学ARIM微細加工部門の三田吉郎氏は、ARIMを活用した微細加工分野の挑戦について語った。21世紀のイノベーションにおいては、半導体試作に伴う煩雑なプロセスを可能な限り排除し、誰もが高度な性能を備えた環境で実験できることが重要であるとの考えのもと、ARIMの取り組みが進められている。世界的にも前例のない試みであるARIMにおいて三田氏は、「Your Laboratory is here」という理念を掲げて研究者が成功の可能性を共有しながら新たな研究潮流を生み出す場を提供している。
微細加工チームでは、教育的な取り組みから半導体分野、国際的な研究活動まで幅広い活動を展開し、登録研究室数や利用者数は着実に拡大している。7年間で7回の受賞実績が示すように、連携を重視した取り組みが成果につながっている。現在は企業を巻き込んだ開発も進行しており、論文発表や国際会議での発信を通じて、ARIMの価値を広く共有しようとしている。
東京大学データ基盤部門:華井雅俊氏
東京大学データ基盤部門の華井雅俊氏は、材料研究におけるデータ基盤整備の取り組みを紹介した。近年、データの利活用を目的としたサービスが国内外で急速に整備される一方、研究現場で生まれる一次データや生データの扱いが新たな課題となっている。
研究過程で生成されるデータをどのように保存・活用するかが重要視されている中、それらを網羅的に保持し、ログとして管理する考え方が広がっている。さらに、材料研究の高度化に伴い、実験系と理論系の研究者が連携し、スーパーコンピューターを活用した解析やシミュレーションを組み合わせる研究スタイルが一般化しつつある。機械学習の活用や自動実験など、実験と計算を統合した研究基盤の構築が、今後の材料研究の競争力を左右すると位置づけている。
本シンポジウムの閉会の挨拶では、AIの急速な普及によってデータ活用のあり方は大きく変化しており、日本の産業力を一層高めていくためには、世界初の試みであるARIMにおけるデータ共用や設備共用の取り組みが極めて重要であると強調された。今後、世界の中で日本の産業の競争力を向上させるためには各大学や企業における材料研究における更なるスピード感が求められるだろう。今後もARIMの取り組みを注視し、その活動を追っていきたい。
(IRuniverse Midori Fushimi)