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イーグル工業(6486)25/3期決算説明会メモ 新規にニュートラル

2025/05/27 16:10

25/3期0.7%増収4.8%営利増、26/3期1.1%増収6.0%営利増予想

株価1874円(5/27) 時価総額 932億円   発行済株49757千株 

PER(26/3DO予:10.3X)PBR(0.74X) 配当(26/3会予)100円 配当性向5.4%

 

要約

・25/3期0.7%増収4.8%営利増と半導体、自動車低調も石化、船舶修繕等で補い増益確保

・26/3期半導体市場の下期から回復想定も自動車向け伸び悩み1.1%増収6.0%営利増予想

・27/3期は半導体向けの本格回復、新製品寄与も期待され、収益の本格拡大期待

 

25/3期0.7%増収4.8%営利増と半導体、自動車低調も石化、船舶修繕等で補い増益確保

 

 NOK系列のメカニカルシール、特殊バルブ大手。5/14に25/3期決算が開示され、同日WEB決算説明会がなされた。25/3期は売上高1681.72億円(2/5減額修正予想比1.72億円上振れ、0.7%増)、営業利益84.94億円(同0.94億円上振れ、4.8%増)、経常利益120.24億円(同1.24億円上振れ、12.9%減)、税引利益48.77億円(同12.23億円未達、34.9%減)となった。なお税引大幅減額は減損損失計上13.03億円や過去勤務費用償却5.15億円などの計上があったため。

 

 セグメント別では自動車・建機向けが売上高875.92億円(期初計画比29億円未達、11/7予想比3億円上振れ、3.2%減)、営業利益5.59億円(同16.4億円未達、同9.4億円未達、65.3%減)。電動化の流れで内燃機関向けのシール、制御弁の不振が影響、特に国内、東南アジア向けが不振だった。ただ、米国市場は回復、全体として減収幅は1ケタ減にとどまった。但し利益面では稼働率低下や採算悪化で大幅減益に。

 

 一般産機向けは売上高408.36億円(同7億円上振れ、同計画線、6.2%増)、営利53.84億円(同13.8億円上振れ、同計画並み、66.8%増)と好調に推移した。インド・アジアパシフィック向けが好調に推移、特に東南アジアの石油精製・石油化学プラント向け補修需要が伸長、収益性も良く、大幅増益に。

 

 半導体業界向けは売上高125.84億円(同31.2億円未達、同4.2億円未達、16.6%減)、営業損失37.66億円(同23.7億円赤字拡大、同1.7億円赤字拡大、30.13億円悪化し赤字拡大)と厳しい結果に。生成AI関連で業界は回復過程にあるが、レガシー向けが多いとみられ、在庫調整が遅れて売上が低迷、利益は売上減の中で大型設備投資を実行した影響で大幅赤字、EBITDAでも25.73億円の赤字で、設備投資による固定費増が重荷になっている。

 

 舶用向けは売上高180.47億円(同31.5億円上振れ、同12.5億円上振れ、12.9%増)、営利52.78億円(同25.8億円上振れ、同10.8億円上振れ、56.4%増)と、旺盛な新造船需要に加え、地政学的な影響から修繕需要が伸長、収益性の高い伸長で大幅増益に。

 

 航空・宇宙関連は売上高91.12億円(同3.1億円上振れ、同1.1億円上振れ、13.2%増)、営利10.27億円(同3.3億円上振れ、同1.3億円上振れ)と、防衛関連の予算の伸びと宇宙関連の売上増で売上増、利益は増収効果と調達価格改善などで大幅増益に。

 

 営業利益の増減要因分析では、減収影響が26億円、加えて人件費増23億円と原材料高12億円の減益要因があり、これをコストダウン24億円、製品値上げ21億円、修繕・補修など増でMIX良化13億円、為替円安効果10億円のプラス効果で増益を確保した。セグメント間で計画に対し大きく差が出たものの、減収影響を価格値上げ、経費削減などの努力で埋め、さらに修繕・補修の拡大で利益を稼ぎ、全体としてほぼ期初計画並みの営業利益で着地した形に。なお営業外では持分利益が33.17億円から28.58億円に減少している。これは持分42社あるが、イーグルブルグマンジャパン(メカニカルシール製造)、イーグルブルグマンアトランティック(ドイツ:欧州向けプラント・産機向けシール製造販売)、などがあるが、半導体業界向け関連会社のESMや欧州のエネルギー高騰により欧州向けアライアンス企業の収益悪化などが影響しているとみられる。また営業外では為替差益16.30億円から為替差損4.46億円への変化で20.76億円の為替益変動がある。これらにより営業外利益が22億円減少しているが、期初計画で営業外収益を39億円としており、結果として35.3億円であるため、想定内の差とみられる。

 

26/3期半導体市場の下期から回復想定も自動車向け伸び悩み1.1%増収6.0%営利増予想

 

 26/3期は売上高1700億円(1.1%増)、営利90億円(6.0%増)、経常利益131億円(8.9%増)、税引利益85億円(74.3%増)予想と、半導体市場の下期からの回復、但し自動車向けはトランプ関税影響を受けて減収を見込み、全体として微増収微増益予想に。なお中計計画「One2025」(2023年度~2025年度)の売上高2000億円、営利145億円計画に対し、半導体向けの外れ(300億円目標)、自動車向けの低迷などで大幅未達予想となっている。

 

 セグメント別では自動車・建機向けが4%減収、営利64%減予想と、引き続き内燃機関向けに不振継続、トランプ関税による売上、利益への悪影響を含んだ予想とのこと。同社はカーエアコン用コンプレッサ回転シール、エンジン冷却用ウォーターポンプ用シールなどで高シェアを誇っており、自動車生産全体の停滞による影響が懸念される。一般機械向けは売上高5%増、営利7%減予想。東南アジア向けに拡大を見込むも、利益面では前期ほどの補修を見込まず、利益減を見込む。半導体向けは25%増収、営業損失15億円(23億円改善)予想。在庫調整が漸く進展、主力製品の磁性流体シールや高機能Oリング、ロータリージョイントなどの下期回復、先行投資負担増が一段落し、営業赤字縮小見通し。舶用は1%減収、15%営利減予想と船尾管シールなどの修理修繕の伸び一巡で利益減予想。航空宇宙は5%増収、22%営利減予想。

 

 営業利益の増減想定では、引き続き人件費増17億円、設備投資増による減価償却費・経費増11億円、新規プロジェクト受注による先行負担10億円、その他経費10億円の減益影響に対し、増収効果12億円、コストダウン35億円、値上げ15億円の増益を見込む。

 

 現状、半導体についてはレガシー向けの低迷が長引いており、中国ローカルの台頭も懸念され、どちらかというと先端向けが少ないと思われる同社の半導体向けは25%の伸びは難しいとみられ、同分野の未達が懸念される。また自動車・建機向けはトランプ関税影響を織り込んだとしているが、基本的に内燃機関向け製品は成熟化で新製品効果が期待できないことから、収益性の悪化に歯止めがかからないとみられ、同事業も未達懸念がある。一方、航空宇宙は貿易・宇宙産業の予算拡大から緩やかな収益拡大が見込まれる。一般産機、舶用は会社計画並みとして、若干会社計画未達が懸念される。

 

27/3期は半導体向けの本格回復、新製品寄与も期待され、収益の本格拡大期待

 

 27/3期は半導体向けの製品群の本格回復、加えて自動車・建機向けではEV向けの製品群の拡大も寄与、収益の本格回復が見込まれえる。加えて持分利益も半導関連会社の収益回復、アジア地区でのメカニカルシールの拡販も進むとみられ収益の本格拡大が期待される。

 

 半導体向けでは同社が得意とする磁性流体シールとロータリージョイントを複合化し新たに電力伝達機能を持たせた「スリップリング一体化ハイブリッドシール」を投入する。同製品は半導体製造装置の真空環境下で電力・信号伝達と密封機能を同時に実現でき、装置のコンパクト化と信頼性向上に寄与する。特に300mmウェハー対応の次世代装置向けに開発が進んでおり2025年度中の量産開始、27/3期に収益寄与が期待される。また従来の磁性流体シールに金属ベローズとモータ駆動機構を組み合わせた新型ユニットも開発中で、エッチング工程で必要とされる高速回転環境(毎分10万回転級)への対応が可能となる。現在、主要顧客である国内外の半導体装置メーカー5社にサンプル提供を開始、認定を得て27/3期には搭載される期待がある。さらに半導体製造プロセスの多用化に対応し、高周波信号伝達可能な多層構造のスリップリングも開発しており、25年中の量産開始予定としている。なお同社グループの広島イーグルにおいて24年4月から半導体製造装置部品加工を始めた。この事業は磁性流体シールに使用される部品を製造するもので、外注工程の内製化でコスト競争力強化を目指す。このように先端半導体製造装置向けの新製品投入も見込まれ、内製化アップも加わり半導体向けの収益性も格段に高まってこよう。

 

 成熟化している自動車・建機向けではEV市場向けにヒートポンプと直結した「統合型マネジメントバルブ」の開発を終え、-40℃~150℃の広範囲な温度環境で作動でき、熱交換効率を従来比30%向上させることに成功、数社との共同開発案件として2025年モデルに採用される見通しにある。またEVが不調であるものの、23年度に量産を開始したEV駆動モータ用「表面テクスチャリング高速シール(低損失と高密封性を両立させた世界初のシール技術と使用)」は回転抵抗を15%低減するシールであり、EVの航続距離延伸に貢献する技術として今後の採用に期待がかかる。

 

 このように本来中計で収益に寄与するはずであった製品群が27/3期には実際に収益寄与するとみられ、改めて28/3期には現在中計目標の売上高2000億円、営利145億円の達成も視野に入ってこよう。

 

 株価は7/23に25/3期会社予想を増額修正したため8/5の暴落時安値1634円から急反発、10/7には2180円の高値をとったものの、その後一転して減額修正したことで株価が下落、2/5再減額から一段と株価下落が加速、4/7には8/5暴落時安値を割り込み1580円まで下落し、多少戻った状況にある。現在26/3期会社予想EPS187.52円に対しPER9.9倍はプライム市場機械平均PER14.6倍に対し割安感がある。なお類似事業を行うニチアス12.0倍、バルカー10.8倍、ピラー12.1倍と比較し多少割安となっている。同業界では半導体向け比率が低く地味な存在であり、26/3期は会社予想未達懸念がある。但し27/3期は収益上伸が期待され、現在PBR0.75倍、配当利回りが5.4%もあり、下値不安はないとみられ新規にニュートラルとして判断する。

(図表、写真はカタログ、会社説明会資料、HPから添付)

 

*バルカー(7995)、ニチアス(5393)、ピラー(6490)との相対比較

 

 

(H.Mirai)

 

 

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